LRTKレフィクシア株式会社

3D CADで板金部品の展開ミスを防ぐ7つの設計ポイント

板金部品は、3D CAD上で完成形状を正しく作成できていても、そのまま正しい展開図が得られるとは限りません。曲げ位置、板厚、曲げ半径、曲げ補正、逃げ形状などの設定が実際の加工条件と一致していなければ、展開後の寸法にずれが生じます。画面上では問題なく組み付いていても、切断後に曲げ加工を行うと外形寸法が合わない、穴位置がずれる、角部が割れるといった不具合につながることがあります。 特に板金部品では、完成形状だけでなく、平板からどのような順序で加工されるかを考えることが重要です。3D CADは展開計算や干渉確認を効率化できますが、入力されている加工条件が適切でなければ、計算結果も実際の製品とは一致しません。そのため、設計者は3Dモデルの形状だけを見るのではなく、曲げ設備、工具、材料特性、加工順序、検査方法まで含めて確認する必要があります。 この記事では、3D CADを使って板金部品を設計する実務担当者に向けて、展開ミスを防ぐために押さえておきたい7つの設計ポイントを解説します。設計段階で確認すべき内容を整理し、試作後の修正や加工現場からの手戻りを減らすための考え方を紹介します。

板金部品の展開ミスが発生する主な理由

板金部品の展開とは、曲げられた完成形状を、切断前の平らな形状へ戻す計算です。完成後の外形寸法を単純に足し合わせるだけでは、正しい展開寸法にはなりません。板材を曲げると、曲げ部の外側は引き伸ばされ、内側は圧縮されます。その中間には、長さがほとんど変化しないと考える基準位置があり、一般に中立面として扱われます。 展開計算では、この中立面の位置や曲げ部の伸びを考慮する必要があります。しかし、中立面の位置は常に板厚の中央になるわけではありません。材料の種類、板厚、曲げ内側半径、使用する工具、加工方法などによって変わるため、3D CADに設定された標準値だけで正確な結果が得られるとは限りません。 展開ミスの代表的な原因として、板厚の入力違い、曲げ半径の不一致、曲げ補正値の流用、曲げ逃げの不足、穴位置の設定不良、加工順序の見落としなどがあります。また、設計変更によって板厚や曲げ角度を変更したにもかかわらず、展開条件が更新されていない場合にも注意が必要です。 3Dモデルでは、曲げ部が連続した滑らかな形状として表示されるため、加工上の問題が目立たないことがあります。ところが、実際の加工では、平板を切断し、工具で一箇所ずつ曲げて完成形状を作ります。工具が入らない、既に曲げた部分が設備に当たる、狭い立ち上がりを保持できないといった問題は、完成形状だけを確認していても見落とされやすいものです。 そのため、板金部品の設計では、完成モデル、展開モデル、加工工程の三つを関連付けて確認する必要があります。3D CADの板金機能を使用する場合も、自動展開の結果をそのまま正しいと判断せず、設定条件と製造方法の整合を確認することが重要です。

板厚と材料情報を正しく設定する

板金設計で最初に確認したいのが板厚です。板厚は、展開計算、曲げ半径、逃げ寸法、穴と曲げ線の距離、部品の強度などに影響します。3D CAD上で入力した板厚と、実際に使用する材料の板厚が異なっていれば、展開寸法だけでなく完成後の外形寸法にもずれが生じます。 板厚の間違いは、単純な入力ミスだけで起こるものではありません。既存部品を複製して新しい部品を作ったときに以前の板厚が残っている場合や、設計変更後に材料情報だけが更新されていない場合にも発生します。また、3Dモデルの外形寸法を優先して作成した結果、板金機能上の板厚設定と形状の実態が一致していないこともあります。 板金部品では、一定板厚でモデル化されているかを確認することが大切です。通常の押し出しや切削形状として作成されたモデルを板金部品へ変換すると、曲げ部や接続部の形状によっては、板厚が正しく認識されない場合があります。変換後は、各面の間隔が一定であることや、曲げ部が板金フィーチャとして認識されていることを確認します。 材料名だけを登録して板厚を判断する運用にも注意が必要です。同じ材質区分でも複数の板厚があり、設計上の呼び厚さと実際の板厚には一定の差が生じることがあります。展開精度を高めるには、材料区分、呼び板厚、使用する板材の管理方法を社内で統一し、3D CADの設定と加工指示を一致させる必要があります。 また、材料の機械的性質や表面処理の有無も、曲げ条件を決める際の参考になります。同じ板厚であっても、材料の硬さや調質状態が異なれば、曲げ時の戻り方や割れやすさが変わります。塗装やめっきを曲げ加工の前後どちらで行うかによっても、寸法や外観に対する配慮が必要です。 設計開始時には、部品番号や図面名称だけでなく、板厚と材料情報を明確にしておくことが重要です。設計変更を行った際には、完成モデルだけでなく、展開図、部品表、材料指示、加工条件が連動して更新されているかを確認します。板厚を設計の初期条件として固定し、変更時に影響範囲を確認する仕組みを作ることで、展開ミスを減らしやすくなります。

曲げ内側半径を実際の加工条件に合わせる

曲げ内側半径は、板金部品の展開寸法に直接影響する重要な条件です。3D CAD上で設定する曲げ半径が、実際の加工で形成される半径と大きく異なると、曲げ部の長さ計算に差が生じます。その結果、完成後のフランジ長さや穴位置が狙いどおりにならないことがあります。 曲げ半径は、図面に記載された値だけで決まるとは限りません。実際の加工では、板厚、材料、工具先端の形状、受け側工具の開き、押し込み量などの影響を受けます。そのため、設計上の曲げ半径と、加工後に得られる実際の内側半径が一致しているかを確認することが必要です。 3D CADの初期設定では、板厚と同程度の曲げ内側半径が設定されている場合がありますが、すべての加工条件に適用できる値ではありません。鋭い曲げが必要な部品、厚板を使用する部品、割れや表面損傷を避けたい部品などでは、より大きな曲げ半径が必要になることがあります。逆に、狭いスペースへ収めるために小さな曲げ半径を指定しても、実際の設備や工具では再現できない場合があります。 曲げ半径を決める際には、設計上必要な形状と加工可能な条件の両方を確認します。曲げ半径が小さすぎると、曲げ部の外側に割れが発生したり、内側に過度な変形が生じたりする可能性があります。曲げ半径が大きすぎると、周辺部品との干渉や、フランジ寸法の不足が生じることがあります。 複数の曲げがある部品では、曲げごとに異なる半径を安易に指定しないことも大切です。加工現場では、工具交換が増えるほど段取りが複雑になり、条件の取り違えも起こりやすくなります。機能上必要な箇所を除き、使用する曲げ半径を可能な範囲で共通化すると、設計条件と加工条件を管理しやすくなります。 3D CAD上では、板金部品全体の標準曲げ半径を設定したうえで、例外となる曲げだけを個別設定する方法が有効です。ただし、個別設定が増えると、設計変更時の確認箇所も増えます。曲げ半径を変更した場合は、展開形状だけでなく、隣接する穴、切り欠き、端部、他部品とのすき間への影響も再確認します。 図面へ曲げ半径を記載するときは、設計値なのか、加工後に必要な完成値なのかを分かりやすくします。測定方法によって評価結果が変わることもあるため、重要な曲げ半径については、加工担当者や検査担当者と確認方法を共有しておくことが望まれます。

曲げ補正値を加工実績に基づいて管理する

板金部品の展開精度を左右する中心的な要素が曲げ補正です。曲げ部では材料の外側が伸び、内側が縮むため、完成形状の寸法をそのまま平面へ戻しても正しい展開長さにはなりません。そこで3D CADでは、曲げ部に相当する長さを計算するために、曲げ控除、曲げ許容値、中立面の位置を表す係数などを使用します。 これらの値は互いに関係していますが、考え方や入力方法は3D CADの運用設定によって異なります。重要なのは、複数の補正方式を混在させず、社内でどの方式を基準にするかを明確にすることです。同じ部品に対して異なる補正方式を重ねて適用すると、過剰な補正や補正漏れが発生する可能性があります。 中立面の位置を表す係数を使用する方法は、板厚と曲げ内側半径から曲げ部の長さを算出しやすい一方、実際の加工結果と完全に一致するとは限りません。曲げ控除を使用する方法は、完成寸法から差し引く値を加工実績に基づいて設定できるため、対象となる設備や材料が限定されている場合には実用的です。 どの方法を採用する場合でも、一般的な参考値だけに頼らず、自社または加工委託先の実績を反映することが重要です。材料、板厚、曲げ角度、工具条件をそろえた試験片を加工し、完成寸法を測定すれば、実際の曲げ伸びを確認できます。この結果を基に補正値を調整すると、量産部品の展開精度を高めやすくなります。 曲げ補正値は、一つの値をすべての部品に共通適用するのではなく、材料と板厚の組み合わせごとに管理する方法が適しています。さらに加工設備や工具が異なる場合は、条件を分けておく必要があります。同じ材料と板厚でも、工具構成や曲げ方法が変われば、完成寸法に差が出ることがあるためです。 3D CADに曲げ条件表を登録できる場合は、材料、板厚、曲げ半径、曲げ角度などに応じて補正値を呼び出せるようにします。ただし、条件表を作成しただけでは不十分です。加工設備の更新、工具の変更、材料調達先の変更などがあった際には、補正値が引き続き妥当かを確認する必要があります。 曲げ補正値の管理では、値そのものだけでなく、その値を決めた条件と測定結果を残すことが大切です。どの材料を使い、どの工具で加工し、どこを測定して補正値を求めたのかが分からなければ、後から妥当性を判断できません。設計者が変更理由を追跡できるよう、条件表の改訂履歴も管理します。 試作時に寸法が合わなかった場合は、展開図全体を感覚的に伸縮させるのではなく、どの曲げで差が発生したかを切り分けます。複数の曲げがある部品では、一箇所ごとの誤差が積み重なって最終寸法に現れることがあります。基準面から各曲げ線までの寸法と、各フランジの完成寸法を測定し、補正値、曲げ角度、測定方法のどこに原因があるかを確認します。

曲げ逃げと角部の形状を適切に設計する

曲げ逃げは、曲げ部の端に生じる材料の引きつれ、重なり、割れ、盛り上がりを抑えるための形状です。3D CAD上では小さな切り欠きに見えますが、加工品質と展開形状の成立に大きく関係します。曲げ逃げが不足すると、曲げた際に端部の材料が互いに干渉し、角が変形することがあります。 板金部品の角部には、複数の曲げ線が交差する部分や、立ち上がりフランジが隣接する部分があります。このような箇所を閉じたままモデル化すると、完成形状ではきれいな角に見えても、展開時に材料が重なったり、切断できない細い形状が生成されたりする場合があります。 曲げ逃げの幅と深さは、板厚、曲げ半径、曲げ角度、加工方法を考慮して設定します。逃げが小さすぎると変形を十分に吸収できず、逃げが大きすぎると完成後に不要なすき間が目立ちます。外観が重要な製品では、溶接や仕上げの方法も含めて角部形状を検討する必要があります。 3D CADには、長方形、円形、長円形など複数の曲げ逃げ形状を設定できることがあります。どの形状を選ぶかは、切断方法や製品用途によって変わります。角が鋭い逃げ形状は応力が集中しやすいため、繰り返し荷重がかかる部品や割れを避けたい部品では、滑らかな端部形状を検討します。 コーナー部では、二つ以上のフランジが接近するため、曲げ後のすき間も確認します。すき間が小さすぎると曲げ時に接触し、狙った角度まで曲げられないことがあります。すき間が大きすぎる場合は、光や水、粉じんが通過しやすくなったり、外観品質が低下したりする可能性があります。 角部を溶接で閉じる設計では、溶接前のすき間、熱による変形、仕上げ代を考慮します。3D CAD上で完全に閉じた角を作るだけでは、実際にどこへ溶接材を入れるか、どの面を仕上げるかが分かりません。加工前の形状と完成後の理想形状を区別し、必要に応じて図面や加工指示で補足します。 曲げ逃げやコーナー形状は、小さな形状であるため設計変更時に見落とされやすい部分です。板厚や曲げ半径を変更した場合は、自動的に逃げ寸法が更新される設定になっているかを確認します。数値を固定している場合は、変更後の板厚に対して十分な逃げが残っているかを再評価する必要があります。 展開後には、曲げ逃げの周辺に極端に細い突起や狭い切り込みが生じていないかを確認します。このような形状は、切断時に熱変形しやすく、搬送中に曲がる可能性もあります。加工後に不要となる細い部分がある場合は、形状を単純化し、安定して切断できる展開形状へ修正します。

穴や切り欠きと曲げ線の距離を確保する

板金部品では、穴や切り欠きが曲げ線に近すぎると、曲げ加工時に形状が変形することがあります。展開図上では正円に見える穴でも、曲げ部の変形範囲に入っていると、完成後に楕円状になったり、位置がずれたりする可能性があります。 穴と曲げ線の必要距離は、板厚、曲げ半径、穴径、曲げ角度、加工方法などによって変わります。そのため、一律の数値だけで判断するのではなく、加工条件に応じて確認する必要があります。特に、ねじ締結や位置決めに使用する穴は、わずかな変形でも組立不良につながるため注意が必要です。 3D CADで穴を配置するときは、完成状態の面だけを基準にせず、展開状態でも位置を確認します。完成形状では曲げ部から離れて見えても、展開すると穴の縁が曲げ線や曲げ逃げに近づく場合があります。穴の中心だけでなく、穴の外周から曲げ影響範囲までの距離を見ることが重要です。 長穴や角穴では、穴の向きにも注意します。曲げ線に平行な長穴と直交する長穴では、変形の現れ方が異なることがあります。また、角穴の角部が曲げ線に近い場合は、応力が集中し、割れの起点になる可能性があります。必要に応じて角部へ丸みを付け、急激な形状変化を避けます。 曲げ線に近い穴をどうしても避けられない場合は、曲げ加工後に穴を追加する方法もあります。ただし、追加加工には位置決めや保持の手間がかかるため、品質、加工時間、検査方法を含めて判断します。設計段階で加工順序を明確にし、展開図だけで全加工が完了する前提にしないことが大切です。 端部の切り欠きも、曲げ線との位置関係を確認する必要があります。切り欠きが曲げ線へ近づきすぎると、フランジの根元が細くなり、曲げ時にねじれたり、完成後の剛性が不足したりする可能性があります。部品を軽量化するための大きな開口部についても、曲げ部を支える材料が十分に残っているかを確認します。 穴位置を設計する際には、基準の取り方も重要です。完成後に重要となる穴は、可能な限り完成状態の機能基準から寸法を設定します。一方で、加工現場では展開材の端から穴位置を確認することもあります。設計基準と加工基準が異なる場合は、曲げ補正の影響によって解釈が分かれないようにします。 複数の穴が並ぶ部品では、曲げ後の穴間隔だけでなく、穴列全体の位置も確認します。曲げ角度のばらつきがあると、別の面に配置された穴同士の位置関係が変化することがあります。組立時に相手部品の穴と合わせる必要がある場合は、必要な位置精度、公差、組立方向を含めて設計します。

曲げ順序と工具干渉を事前に確認する

展開できる形状であっても、実際に曲げ加工できるとは限りません。複数のフランジを持つ板金部品では、曲げ順序によって工具や設備との干渉が変わります。先に一箇所を曲げると、次の曲げで立ち上がった部分が工具や設備本体に当たり、加工できなくなることがあります。 3D CADで板金部品を設計するときは、完成形状だけでなく、曲げを一段階ずつ進める状態を想定します。どの曲げを最初に行い、どの向きから材料を挿入し、加工後にどの方向へ取り出すかを確認します。深い箱形状や狭いコの字形状では、特に曲げ順序の影響が大きくなります。 短いフランジにも注意が必要です。フランジが短すぎると、曲げ加工時に工具上で安定して保持できない場合があります。3D CAD上では問題なく立ち上げられても、加工設備では材料を支える面が不足し、位置ずれや角度不良につながる可能性があります。 高いフランジや内向きの曲げがある場合は、工具の側面や上部との接触を確認します。曲げ角度が進むにつれて部品の姿勢が変わるため、加工開始時には干渉していなくても、途中で接触することがあります。最終位置だけでなく、曲げ動作中の通過範囲を考えることが重要です。 閉じた箱形状や返し曲げを含む部品では、最後の曲げが成立するかを確認します。完成後の開口が狭い場合、通常の工具では部品を抜き取れない可能性があります。設計を分割して接合する方法、曲げ方向を変更する方法、形状に合わせた工具を使用する方法などを検討します。 曲げ順序は、寸法精度にも影響します。最初の曲げで生じた角度誤差や位置ずれが、後工程の基準へ影響することがあるためです。重要な寸法をどの工程で作り込むかを考え、基準となる面を安定して保持できる順序を選びます。 3D CADに加工シミュレーション機能がない場合でも、曲げを一つずつ抑制した状態を作成すれば、中間形状を確認できます。完成状態から逆順に曲げを解除し、展開状態まで戻す方法でも、曲げ順序を検討できます。各段階で工具が入る空間、材料を保持する面、部品を回転させる空間を確認します。 加工現場で使用できる設備や工具を設計者が把握していない場合は、設計初期の段階で確認することが重要です。完成後に加工不可と判断されると、部品分割や寸法変更など大きな修正が必要になる可能性があります。過去に加工実績のある形状を参考にしながら、新しい形状で追加される難しさを整理します。

展開図と完成形状を相互に検証する

3D CADで板金部品を設計した後は、完成形状と展開形状の両方を確認します。自動展開が成功したというだけでは、正しい展開図であるとは判断できません。展開後の外形、穴位置、曲げ線、逃げ形状、加工方向などを確認し、完成状態へ戻したときに設計意図どおりになるかを検証します。 最初に確認したいのは、展開図に重複や交差がないことです。複数のフランジが展開時に重なっている場合、そのまま一枚の板から切り出すことはできません。3D CADが展開形状を生成できたとしても、輪郭線が自己交差していたり、隣接する形状が重なっていたりする可能性があります。 次に、展開外形が一つの連続した板材として成立しているかを確認します。極端に細い接続部、孤立した領域、閉じていない輪郭などがあると、切断データとして正しく認識されない場合があります。切断後の取り扱いで変形しやすい細長い部分がないかも確認します。 曲げ線については、曲げ方向と曲げ角度が分かるように整理します。展開図上では山側と谷側の区別が分かりにくくなることがあります。曲げ方向を誤ると、左右対称に見える部品でも完成形状が反転し、組み付けられなくなる可能性があります。 左右勝手のある部品では、展開データの反転にも注意が必要です。完成形状を複製して左右反転した場合、曲げ方向、穴の向き、表面処理面、外観面などが正しく反映されているかを確認します。単純に展開輪郭を反転するだけでは、加工指示まで正しく置き換わらないことがあります。 展開図の寸法を確認するときは、外形全長だけでなく、曲げ線間の距離や穴中心から曲げ線までの距離も確認します。全長が合っていても、途中の曲げ位置がずれていれば完成形状は合いません。重要なフランジ寸法に関係する曲げ線を基準に、展開寸法を追跡します。 完成形状へ戻した後は、外形寸法、角度、穴位置、相手部品とのすき間を再確認します。曲げ条件を変更すると、展開長さだけでなく、曲げ部周辺の形状や完成位置が変化する場合があります。設計変更前後のモデルを比較し、意図しない部分まで変化していないかを確認します。 試作後に実測値が得られた場合は、3D CAD上の完成寸法と比較します。差がある場合は、展開外形、曲げ位置、曲げ角度、曲げ半径のどこに原因があるかを切り分けます。実測値に合わせて完成モデルを直接変形させるのではなく、補正値や加工条件を見直すことが重要です。 展開データを外部形式で受け渡す場合は、出力後のデータも確認します。線の重複、曲げ線と外形線の混同、単位の違い、尺度の変化などが発生していないかを確認します。3D CAD内で正しく表示されていても、加工側で読み込んだ際に線種や属性が失われることがあるためです。

3D CADによる板金設計の確認手順

板金部品の展開ミスを防ぐには、設計完了時だけでなく、設計の各段階で確認することが効果的です。最初に、材料、板厚、曲げ内側半径、補正方式などの基本条件を設定します。基本条件が未確定のまま細部を作り込むと、後から板厚や曲げ半径を変更した際に多くの形状が崩れる可能性があります。 次に、部品の基準面と主要寸法を決めます。組立時に重要となる面や穴を明確にし、それらが曲げ誤差の影響を受けにくい構成を検討します。複数の曲げをまたいで重要寸法を設定する場合は、各曲げの誤差が累積することを考慮します。 基本形状を作成したら、曲げ部とフランジを追加します。この段階で、曲げ半径、フランジ長さ、曲げ方向を確認します。短すぎるフランジや工具が入りにくい形状がないかを早めに確認することで、後工程での大幅な修正を避けやすくなります。 穴や切り欠きを追加するときは、完成状態と展開状態を切り替えながら配置を確認します。曲げ線との距離、曲げ逃げとの干渉、加工後の穴変形の可能性を見ます。重要な穴については、相手部品を配置した状態で組付け性も確認します。 角部を作成した後は、曲げ逃げとコーナーすき間を確認します。展開状態で材料が重なっていないか、切断可能な輪郭になっているかを確認します。溶接や接合が必要な箇所は、加工前のすき間と完成後の形状を区別します。 モデルが完成したら、一度すべてを展開して、外形と曲げ線を確認します。極端に細い部分、閉じていない輪郭、重複線、交差線などがないかを見ます。その後、再び完成形状へ戻し、外形寸法と組立状態を確認します。 さらに、曲げを一箇所ずつ解除し、中間形状を確認します。加工順序を想定し、工具干渉、設備との接触、部品の保持方法、取り出し方向を検討します。加工が難しい箇所がある場合は、形状変更、部品分割、曲げ方向変更などを設計段階で検討します。 最終確認では、3Dモデル、展開図、加工図面、部品表、材料指示の内容が一致しているかを確認します。3Dモデルだけが更新され、展開図や図面が古い状態のまま残っていないかにも注意します。改訂番号や更新日時だけで判断せず、板厚、曲げ角度、穴位置などの重要項目を実際に照合します。

加工現場と設計部門で条件を共有する方法

板金部品の展開精度を安定させるには、設計部門だけで条件を決めるのではなく、加工現場との情報共有が欠かせません。3D CAD上の理論値と実際の加工結果には差が生じることがあるため、試作や量産で得られた情報を設計条件へ戻す必要があります。 共有すべき情報には、使用材料、板厚、曲げ半径、曲げ角度、工具条件、加工設備、補正値、測定方法などがあります。単に「寸法がずれた」と報告するだけでは、設計側で原因を特定できません。どの寸法をどの基準から測り、どの方向にどれだけ差があったかを明確にします。 曲げ角度の測定値と外形寸法の測定値は分けて記録することが重要です。外形寸法の差が、展開長さの問題ではなく、曲げ角度の差によって生じている場合があるためです。曲げ角度が設計値と異なる状態で補正値だけを変更すると、別の部品で誤差が増える可能性があります。 加工実績を蓄積するときは、部品単位の結果だけでなく、材料と加工条件の組み合わせで整理します。特定の部品だけに補正を加える方法では、類似部品を設計するたびに同じ検証が必要になります。再利用できる条件として整理すれば、次の設計で同じ板厚や曲げ条件を使用するときに活用できます。 一方で、過去の補正値を無条件に流用しないことも重要です。設備、工具、材料、加工担当、測定方法が変われば、以前と同じ結果になるとは限りません。条件表には適用範囲を記録し、どの設備と材料に対する値なのかを明確にします。 設計変更時には、加工担当者が変更内容を把握できる形にします。外形の一部だけを変更したつもりでも、展開形状や曲げ順序に影響することがあります。変更前後の完成形状と展開形状を比較し、曲げ線、穴位置、曲げ方向などの変更点を共有します。 3D CADデータを加工側へ渡す場合も、モデルだけに情報を集約しすぎないことが大切です。使用環境によっては、曲げ属性や注記が正しく引き継がれない可能性があります。重要な加工条件は、図面や確認資料にも記載し、受け渡し後に内容が読み取れることを確認します。 加工後の現物を確認できる場合は、設計者自身が曲げ部、穴、端部、逃げ形状を見ることが有効です。数値報告だけでは分からない変形や加工跡から、設計改善の手掛かりが得られることがあります。現物確認の結果を3D CADの標準設定や設計ルールへ反映すれば、個人の経験に依存しにくい運用につながります。

まとめ

3D CADを使った板金設計では、自動展開機能を利用するだけで展開ミスを防げるわけではありません。正しい展開結果を得るためには、板厚、材料、曲げ半径、曲げ補正、逃げ形状、穴位置、加工順序などの条件を、実際の加工方法と一致させる必要があります。 第一のポイントは、板厚と材料情報を設計初期に確定し、モデル、図面、材料指示を一致させることです。第二のポイントは、曲げ内側半径を3D CADの初期値だけで決めず、使用する工具や加工実績に合わせることです。第三のポイントは、曲げ補正値を材料と加工条件ごとに管理し、実測結果から継続的に見直すことです。 第四のポイントは、曲げ逃げやコーナーすき間を適切に設け、展開時の重なりや曲げ時の変形を防ぐことです。第五のポイントは、穴や切り欠きを曲げ線から適切に離し、完成後の変形や位置ずれを考慮することです。第六のポイントは、曲げ順序と工具干渉を事前に検討し、展開できても加工できない形状を避けることです。第七のポイントは、完成形状と展開図を相互に確認し、出力後の加工データまで検証することです。 板金部品の品質を安定させるには、3D CAD上の設計条件と加工現場の実績をつなげることが重要です。試作で得られた寸法差を部品ごとの修正で終わらせず、曲げ補正表や設計基準へ反映すれば、類似部品の展開精度も高められます。 また、既設設備に取り付ける板金カバーやブラケットを設計する場合は、現場側の寸法や位置関係が不正確だと、3D CAD上で正しく展開できていても取り付け時に合わないことがあります。現場の形状、取付位置、周辺設備とのすき間を記録し、設計モデルと照合する工程も重要です。 現場情報を効率よく取得し、3D CADによる設計へつなげたい場合は、位置情報を伴う計測や現況記録に対応したLRTK Phoneの活用も検討できます。展開計算の精度だけでなく、設計の前提となる現場寸法や配置条件まで確実に確認することで、板金部品の製作から取り付けまでの手戻りを減らしやすくなります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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