輸送パレットの積載効率を3D CADで検討する意義
輸送パレットの積載効率は、物流費、保管スペース、荷役時間、梱包資材の使用量などに影響します。同じ数量の製品を運ぶ場合でも、荷物の向きや並べ方、積み重ね方が違うだけで、必要となるパレット枚数や輸送回数が変わることがあります。
一方で、積載効率を高めることだけを優先すると、荷崩れ、製品の変形、梱包材の破損、荷役作業のしにくさなど、新たな問題が発生する可能性があります。隙間をできる限りなくした配置が、必ずしも実務上の最適解になるとは限りません。輸送中の振動、加減速、段差通過、積み替え、倉庫での保管なども含めて、安全性と作業性を確認する必要があります。
そこで役立つのが3D CADです。3D CAD上にパレット、製品、梱包箱、緩衝材、固定具などをモデル化すれば、実物を何度も並べ替えなくても、複数の配置案を比較できます。平面上の並べ方だけでなく、高さ、重心、干渉、はみ出し、荷役機器との位置関係まで立体的に確認しやすくなることが大きな利点です。
従来の表計算や二次元図面でも、箱数や面積の計算はできます。しかし、製品の形状が直方体ではない場合や、箱の一部に突起や持ち手がある場合、積み重ねに向きの制約がある場合は、単純な縦横寸法だけでは判断しにくくなります。3D CADで実際の外形に近いモデルを使用すれば、数値上は入るように見えても、角部や突起が干渉する配置を事前に発見できます。
また、3D CADによる検討結果は、物流担当者だけでなく、製品設計、包装設計、製造、倉庫、輸送、調達などの関係者と共有できます。積載効率の問題を物流工程だけの課題として扱うのではなく、製品寸法や梱包仕様を含めて改善するための共通資料として利用できる点も重要です。
輸送パレットの配置を検討するときは、最大個数を詰め込むことを目的にするのではなく、安全に運べる数量を安定して再現できる状態を目指します。3D CADを使えば、積載数量、製品保護、荷役性、輸送条件のバランスを視覚的に整理しやすくなります。
配置術1 パレット寸法と荷物寸法の基準を統一する
積載配置の検討では、最初にパレットと荷物の寸法基準を統一します。ここが曖昧なまま配置を始めると、3D CAD上ではきれいに収まっていても、実際には積載できないという問題が起こります。
パレットについては、全長、全幅、全高だけでなく、実際に荷物を置ける有効範囲を確認します。パレットの外形寸法と積載可能範囲は、必ずしも同じではありません。角部の面取り、外周部の構造、差し込み口、固定金具、保護材などによって、荷物を安定して置ける範囲が狭くなる場合があります。
荷物についても、製品本体の寸法ではなく、輸送時の荷姿を基準にします。箱、袋、トレー、緩衝材、保護カバー、バンド、ラベルなどを含めた外形寸法が必要です。梱包箱には製造上のばらつきや膨らみが生じることもあるため、公称寸法だけで隙間なく配置すると、現場で箱同士が押し合って並べられなくなる可能性があります。
3D CAD上では、実測値または承認済みの梱包仕様をもとに簡略モデルを作成します。積載検討が目的であれば、箱の細かな印刷や内部構造まで再現する必要はありません。ただし、持ち手、突出部、開口部、積み重ねを妨げる段差など、配置に影響する形状は省略しないことが大切です。
寸法の単位も統一します。設計データ、包装仕様、物流資料で異なる単位が使われていると、変換時の入力ミスが起こりやすくなります。3D CADに取り込んだ後は、既知の寸法を測定し、モデルの尺度が正しいことを確認します。特に外部から受け取った中間形式のデータや、過去のモデルを再利用する場合は、単位設定を慎重に確認する必要があります。
さらに、配置に必要なクリアランスをあらかじめ定義します。荷物同士を接触させてよいのか、緩衝材を挟むのか、取り出し用の隙間が必要なのかによって、使用できる面積は変わります。3D CAD上では、荷物の外形を一定量だけ拡張した仮想モデルを作り、その拡張形状が重ならないように配置する方法も有効です。
寸法基準を統一すると、配置案の比較がしやすくなります。ある案だけ余裕を含み、別の案では公称寸法だけを使っている状態では、正しい比較ができません。パレットの有効範囲、荷姿の最大外形、必要な隙間を同じ条件でモデル化することが、積載効率を高める最初の配置術です。
配置術2 平面配置を複数パターンで比較する
輸送パレットの積載検討では、最初に上面から見た平面配置を比較します。箱を縦方向にそろえるだけでなく、横向き、交互配置、列ごとの向き変更など、複数のパターンを3D CAD上で作成します。
単純な直方体の荷物であっても、縦横の組み合わせによって一段当たりの積載数は変わります。たとえば、同じ向きで整列させる配置では端部に大きな空間が残っても、一部の荷物を90度回転させることで、その空間を活用できることがあります。計算だけで判断するのではなく、実際の外形モデルを並べて比較することが重要です。
3D CADでは、パレット上に基準面を設定し、荷物の配置間隔や整列方向をパラメータとして管理すると効率的です。荷物の数、縦方向の間隔、横方向の間隔、外周からの距離などを変更できるようにしておけば、条件を変えた配置案を短時間で作成できます。
比較する際は、一段当たりの個数だけでなく、空き領域の位置にも注目します。空き領域が一か所にまとまっていれば、緩衝材や付属品の配置に利用できる可能性があります。一方、細い隙間が複数箇所に分散している配置では、面積上の効率が高くても、実際には活用できない空間が増えます。
外周部の配置も重要です。パレットの端ぎりぎりまで荷物を置けば面積効率は高まりますが、輸送中の接触や梱包材の変形により、荷物がパレットからはみ出す可能性があります。はみ出しは製品損傷だけでなく、隣接する荷物や設備との接触、保管時の干渉につながることがあります。
反対に、パレットより内側に荷物を配置しすぎると、利用可能な面積を無駄にします。外周から一定の余裕を確保しながら、一段当たりの積載数を最大化できる配置を探します。この余裕は一律に決めるのではなく、箱の剛性、固定方法、輸送環境、保管条件を考慮して設定します。
複数案を比較するときは、配置ごとに名称や識別番号を付けます。モデルの画面だけを見て判断すると、どの案がどの条件だったのか分からなくなりやすいためです。一段当たりの個数、空き面積、外周余裕、使用する緩衝材などを各案に記録しておくと、関係者との検討も進めやすくなります。
平面配置の最適化は、単に箱を詰め込む作業ではありません。空間の使い方、固定のしやすさ、積み付け作業の再現性を含めて比較することで、実務で使える配置案を選べます。
配置術3 荷物の向きを変えて隙間を減らす
荷物の向きを変えることは、輸送パレットの積載効率を改善する基本的な方法です。ただし、縦横を入れ替えるだけではなく、製品の形状、梱包構造、強度方向、取り扱い表示などを考慮する必要があります。
梱包箱が直方体であれば、上面から見た向きを90度変更するだけで、パレット端部の隙間を減らせる場合があります。形状が左右非対称の場合は、180度反転させた配置を組み合わせることで、突出部とくぼみをかみ合わせるように配置できることもあります。
3D CADでは、荷物モデルの基準点と基準方向を設定し、回転角度を変えながら干渉を確認します。複雑な形状を目視だけで並べると、近接している部分を見落としやすいため、干渉確認機能や断面表示を使って確認すると効果的です。
ただし、形状上は配置可能でも、輸送上許されない向きがあります。液体を含む製品、内部に可動部を持つ機器、特定方向の圧縮に弱い製品、天地を維持する必要がある製品などは、自由に回転できません。梱包箱に方向指定がある場合は、その条件を3D CADモデルにも反映します。
荷物の向きを変更する際には、ラベルや識別表示の見え方も確認します。倉庫や出荷工程では、品番、数量、行き先、取り扱い情報などを外側から確認することがあります。積載効率だけを優先してラベル面を内側に向けると、検品や仕分けに余計な時間がかかる可能性があります。
積み付け作業のしやすさも見逃せません。交互に向きを変える配置は空間効率を高めやすい一方、作業者が向きを判断する工程が増えます。配置規則が複雑になるほど、積み間違いが起こりやすくなります。3D CADで効率の高い配置が見つかっても、現場で安定して再現できるかを確認する必要があります。
実務では、配置する向きを色だけに頼らず、平面図や斜視図で分かりやすく示すことが大切です。荷物の持ち手、ラベル面、開口部など、向きを判断できる形状を図面上に残しておくと、積み付け指示が伝わりやすくなります。
また、同じパレットに複数種類の荷物を混載する場合は、寸法の異なる箱を組み合わせて隙間を減らせる可能性があります。ただし、出荷順序や納品先が異なる荷物を混在させると、仕分け作業が増えることがあります。3D CAD上で空間効率が高い配置になっていても、物流工程全体では非効率になる場合があるため、運用条件との整合が必要です。
向きを変える配置術では、荷物の回転自由度を最初に整理し、その範囲内で隙間を減らします。自由に回転できる荷物と、方向を固定すべき荷物を区別することで、安全性を損なわずに積載効率を高めやすくなります。
配置術4 高さ方向の積み重ねを最適化する
平面配置が決まったら、高さ方向の積み重ねを検討します。輸送パレットの積載効率は、一段当たりの個数だけでなく、何段まで安全に積めるかによって大きく変わります。
高さ方向の検討では、輸送車両や保管設備の有効高さ、荷役機器の能力、荷物の圧縮強度、パレットを含む総重量などを確認します。単純に荷物の高さを割り算して段数を決めるのではなく、上部の余裕、固定資材の厚み、パレット自体の高さなども含めて計算します。
3D CAD上では、輸送時に使用するパレットと荷物を一体の積載モデルとして作成し、許容される高さを示す境界モデルと比較します。上限を平面や透明な立体として表示すれば、固定具や箱の突出部が高さ制限を超えていないか確認しやすくなります。
段ごとの配置を同じ向きにするか、交互に変えるかも重要です。同じ向きで積む方法は作業が分かりやすく、箱の角部をそろえやすい利点があります。段ごとに向きを変えるインターロック配置は、横方向のまとまりを作りやすい場合がありますが、段ボール箱では角や辺の鉛直方向の整列が崩れ、圧縮強度が低下する場合もあります。内容物が主に荷重を支える箱か、箱体が主に荷重を支える箱かによって適した積み方が異なるため、梱包設計上の許容条件や試験結果を優先します。
梱包箱は、箱体が荷重を支える構造では角や辺の位置が荷重経路になりやすく、上下の箱が大きくずれると、上段の荷重が下段の弱い部分に集中することがあります。一方、内容物が荷重を支える構造では、接触面積や内部支持の状態も影響します。3D CADでは、上下の箱の角部や支持面がどの程度重なっているかを確認し、必要に応じて内部の支持位置も簡略化して表現します。
異なる大きさの荷物を積み重ねる場合は、上段の荷重を下段が安定して受けられる配置にします。小さな箱の上に大きな箱を置くと、はみ出した部分が支持されず、箱の変形や傾きにつながる可能性があります。反対に、強度の低い箱を最下段に配置すると、上段の重量でつぶれるおそれがあります。
高さを増やすほど輸送空間の利用率は高まりますが、重心も高くなります。重心が高い積載物は、旋回、急制動、段差通過などで傾きやすくなります。積載数量を増やせるからといって、常に上限まで積み重ねることが最適とは限りません。
積み重ね可能な段数は、製品や梱包材の強度だけでなく、保管期間や環境条件によっても変わることがあります。長期間保管する場合や、温度や湿度の影響を受ける梱包材を使用する場合は、短時間の試験結果だけで判断しないことが重要です。
3D CADで高さ方向を検討する際は、最大段数の案だけでなく、安定性を優先した案も作成します。総積載数、全高、重心位置、下段への荷重条件などを比較し、輸送条件に合った段数を選びます。箱の圧縮強度や接触部の応力まで評価する場合は、配置モデルだけで結論を出さず、梱包試験や構造解析の結果と組み合わせます。
配置術5 重心と荷重分布を安定させる
積載効率の高い配置であっても、重量が一部に偏っていると安全な輸送はできません。輸送パレットでは、荷物の個数や体積だけでなく、重量の配置を確認する必要があります。
同じ外形寸法の箱でも、内容物によって重量が異なることがあります。混載する場合は、各荷物の質量を3D CADモデルに設定し、積載物全体の重心を確認します。外観だけでは均等に見える配置でも、重量物が片側に集中していれば、持ち上げたときに傾く可能性があります。
重い荷物は、一般に低い位置に配置した方が重心を下げやすくなります。ただし、下段の梱包強度が不足している場合や、納品順序の都合で先に取り出す必要がある場合など、重量だけでは決められない条件もあります。3D CADでは、重量、強度、作業順序を同時に確認しながら配置を調整します。
パレットの中央付近に重心を近づけることも重要です。重心が端部に寄ると、荷役機器で持ち上げた際の安定性が低下しやすくなります。また、パレットの一部に荷重が集中すると、天板や脚部に大きな負担がかかる可能性があります。
3D CAD上で重心位置を表示するときは、荷物だけでなく、パレット、固定具、補助材などの質量も必要に応じて含めます。荷物の重量に比べて小さい部材であっても、大型の固定枠や金属製部品を使用する場合は、重心に影響することがあります。
ここで区別したいのが、重量配置と実際の荷重分布です。一般的な3D CADの質量特性機能で確認しやすいのは、静止状態における総質量、部品ごとの重量配置、積載物全体の重心などです。パレットのたわみ、箱の面圧、支持反力、接触部の応力といった荷重分布を求めるには、材料特性、接触条件、支持条件を設定した構造解析や、実物による載荷試験が必要になる場合があります。
荷重分布を検討する際は、パレットの支持位置にも注目します。床面に置かれているとき、保管設備に載せられているとき、荷役機器で持ち上げられているときでは、支持される場所が異なります。同じ積載配置でも、支持条件が変わればパレットのたわみ方や荷重の伝わり方が変わります。
重量物が複数ある場合は、左右や前後に分散させます。ただし、見た目の対称性だけで判断せず、各荷物の実際の重量を反映します。箱の大きさが同じでも重量が異なる場合、個数が左右同じだからといって重心が中央にあるとは限りません。
積載物の重心がどの程度移動する可能性があるかも確認します。輸送中に内容物が動く可能性がある場合や、液体など内部で質量が移動する荷物を扱う場合は、静止状態の重心だけでは不十分です。固定方法や内部梱包を含めて、重量移動を抑える必要があります。
積載効率と安定性の間には、調整が必要な場合があります。空間を最大限に使う配置よりも、重心を中央かつ低い位置に保てる配置の方が、安全性と運用の再現性に優れることがあります。3D CADで重心位置と重量配置を可視化し、必要に応じて構造解析や実機試験で荷重分布を確認すれば、数量だけでは判断できない配置の違いを比較しやすくなります。
配置術6 輸送と荷役まで含めて配置を決める
輸送パレットの配置は、パレット上に荷物が収まれば完成というものではありません。積み付け、固定、運搬、積み込み、荷降ろし、保管、開梱までの流れを考慮して決める必要があります。
まず、荷役機器の差し込み方向を確認します。荷物や固定具が差し込み口をふさいでいると、持ち上げ作業ができません。パレットの外周から垂れ下がる梱包材や固定材も、差し込み作業の妨げになることがあります。
3D CADでは、荷役機器の爪や搬送経路を簡略モデルとして配置し、積載物との干渉を確認できます。差し込み量、持ち上げ位置、旋回時の空間などを検討することで、パレット上だけでは見つけにくい問題を事前に把握できます。
輸送設備への積み込みも確認します。荷室の内寸だけでなく、開口部の寸法、床面からの段差、扉や柱の位置、固定設備の突出などが影響します。荷室内部には収まる寸法でも、入口を通過できなければ積み込めません。
パレットを複数並べる場合は、隣接する積載物との隙間も必要です。固定作業や荷降ろし作業のために人が手を入れる空間が必要になることがあります。また、輸送中の振動で隣の荷物と接触しないように、一定の余裕を設けることも重要です。
固定方法についても3D CAD上で確認します。バンド、フィルム、ベルト、枠、当て材などを使用する場合は、それらを取り付ける空間が必要です。荷物を隙間なく配置した結果、固定材を通せなくなることがあります。固定材が箱の角部や製品の弱い部分に集中しないかも確認します。
荷降ろしの順序も配置に影響します。複数の納品先に配送する場合、先に降ろす荷物が奥にあると、手前の荷物を移動する作業が発生します。積載効率がわずかに低くても、配送順に取り出せる配置の方が、全体の作業時間を短縮できる場合があります。
倉庫での保管方法も考慮します。積載状態のまま保管設備に置く場合は、高さ、幅、奥行き、荷重条件との適合を確認します。上段に別のパレットを重ねる運用がある場合は、積載物の上面形状や支持構造も重要です。
さらに、作業者が配置を再現しやすいかを確認します。複雑な配置は3D CAD上では成立していても、実際の積み付けで時間がかかったり、向きを間違えたりする可能性があります。基準となる角、積み始める位置、段ごとの向きなどを明確にし、作業手順を単純化します。
輸送パレットの配置術では、一段当たりの数量だけでなく、物流工程全体の効率を見ることが欠かせません。荷役や固定を含めた3D CADモデルを作ることで、積載数を増やした結果、別工程の作業が増えてしまう問題を防ぎやすくなります。
3D CADによる積載シミュレーションの進め方
3D CADで輸送パレットの積載を検討するときは、最初から細密なモデルを作る必要はありません。検討目的に応じて必要な情報を絞り、簡略モデルから始める方が効率的です。
最初に、使用するパレットの外形と有効積載範囲を作成します。次に、梱包後の荷物モデルを配置します。この段階では、外形寸法、質量、積み重ね方向、接触を避ける範囲など、配置判断に必要な情報を優先します。
その後、基本となる整列配置を作成します。同じ向きに並べた状態を基準案とし、向きの変更、交互配置、混載、高さ方向の段数変更などを行います。基準案を残したまま派生案を作れば、変更による効果を比較しやすくなります。
配置案を作成したら、干渉を確認します。荷物同士の重なりだけでなく、パレット外周からのはみ出し、固定材との干渉、荷役機器の進入範囲なども確認します。外観では接触していないように見えても、底面の突起や持ち手が干渉している場合があるため、必要に応じて断面表示を使います。
次に、積載物の全高、総重量、重心位置を確認します。高さや重量の上限は、輸送方法、保管設備、荷役条件によって異なります。3D CAD上で数値を確認するだけでなく、使用する設備の仕様、パレットの許容荷重、社内基準、梱包仕様に照らして判断します。
荷重分布やパレットのたわみを評価する必要がある場合は、配置モデルを構造解析へ展開するか、代表条件で載荷試験を行います。解析では、パレットや梱包材の材料特性、箱同士の接触、床や棚、フォークによる支持条件を設定しなければ、実際の状態に近い結果は得にくくなります。簡略化した条件を使う場合は、結果を絶対値として断定せず、配置案同士の相対比較として扱います。
有力な配置案が絞れたら、固定材や保護材を追加します。ここで積載数が変わる場合もあります。荷物だけを並べた段階では効率が高くても、実際に必要な緩衝材や固定枠を入れると成立しないことがあるためです。
積載モデルからは、平面図、側面図、斜視図、段ごとの配置図などを作成します。積み付け作業者が使用する資料では、設計者にしか分からない複雑な情報を載せすぎないことが大切です。荷物の向き、積み始める位置、一段当たりの個数、段数などを明確に伝えます。
最後に、実物による試験積みを行います。3D CADは配置の候補を効率よく絞り込むために有効ですが、梱包材の変形、摩擦、作業者の持ちやすさ、実際の固定状態など、モデルだけでは完全に再現しにくい要素もあります。試験積みで見つかった差異をモデルへ戻し、寸法や隙間の設定を更新すると、次回以降の検討精度が高まります。
3D CADによる積載シミュレーションは、一度だけ行う作業ではありません。製品寸法、梱包仕様、輸送条件が変わったときに再検討できるよう、モデルの基準や条件を整理して保存しておくことが重要です。
積載効率を評価するための指標
配置案を比較するときは、一段当たりの個数だけで判断しないことが大切です。積載効率には、面積、容積、重量、作業時間など、複数の見方があります。
平面上の効率を見る場合は、パレットの有効面積に対して、荷物が占める面積の割合を確認します。ただし、荷物の外形が複雑な場合は、外接する長方形で計算した面積と、実際に占有する面積が異なります。3D CAD上のモデルを使えば、形状に応じた空き領域を視覚的に確認できます。
高さを含めた効率を見る場合は、使用可能な積載空間に対する荷物の容積を確認します。平面配置がよくても、荷物の高さが輸送空間と合わず、上部に大きな空間が残ることがあります。反対に、高さを使い切ろうとして段数を増やすと、重量や重心の制約に達する場合があります。
重量の利用率も重要です。輸送空間に余裕があっても、許容重量に先に達する荷物があります。この場合、容積効率を高めることよりも、重量を適切に配置し、安全に運べる状態を作ることが優先されます。
パレット一枚当たりの製品数量は、分かりやすい指標です。しかし、数量が増えても、積み付け時間や固定作業が大幅に増える配置では、全体の効率が下がることがあります。配置案の評価には、作業時間や必要な資材も含める必要があります。
輸送後の品質も評価対象です。積載数を増やした結果、箱の変形、擦れ、製品の移動などが増えるのであれば、安定した配置とはいえません。試験輸送や過去の不具合情報を積載モデルと関連付け、どの配置で問題が発生したかを記録します。
再現性も重要な指標です。熟練者しか正しく積めない配置よりも、誰が作業しても同じ状態を作れる配置の方が、日常運用では安定します。配置規則が単純で、積み間違いを発見しやすいことも、積載効率の一部として考える必要があります。
評価指標には優先順位を付けます。輸送費の削減を重視するのか、製品保護を重視するのか、積み付け時間を短縮したいのかによって、最適な配置は変わります。3D CADで複数案を作成し、それぞれの指標を同じ条件で比較すると、判断の根拠を整理しやすくなります。
輸送パレットの配置検討で起こりやすい失敗
輸送パレットの積載検討では、3D CAD上で配置が成立していることだけを見てしまい、実際の条件を十分に反映できていないケースがあります。
代表的な失敗は、製品本体の寸法だけで配置することです。輸送時には梱包箱、緩衝材、保護材などが加わるため、製品モデルだけを並べても正しい積載数は求められません。必ず出荷時の荷姿を基準にします。
次に多いのが、寸法のばらつきを考慮しないことです。梱包材には製造誤差があり、内容物の収まり方によって外形がわずかに変わることもあります。公称寸法で隙間なく配置すると、実物では並べられない可能性があります。
パレットの外形全体を積載可能面積として扱うことも問題です。パレットの構造や固定方法によっては、外周部に荷物を置けない場合があります。有効積載範囲を別に定義し、その範囲内で配置を検討します。
高さ方向では、荷物の高さだけを合計し、固定材や上部余裕を含めない失敗があります。積載後にフィルムや保護材が盛り上がる場合や、箱のふたが膨らむ場合もあるため、実際の最大高さを想定します。
重量を無視して体積だけを最大化することも避けるべきです。見た目の配置が均等でも、重量が片側や上段に集中していると、輸送や荷役時の安定性が低下します。各荷物の質量を設定し、重心位置を確認します。
一方で、3D CADの重心表示だけから、パレットのたわみや箱の面圧まで分かったと判断するのも危険です。実際の荷重分布は、材料特性、支持位置、接触状態、梱包材の変形などに左右されます。必要な場合は構造解析や載荷試験を行い、配置モデルの結果と照合します。
荷役工程をモデル化しないことも、現場での手戻りにつながります。荷物が差し込み口をふさいでいる、固定材を通せない、持ち上げると荷物が接触するなど、パレット上の配置だけでは分からない問題があります。
また、配置パターンを増やしすぎると、現場での管理が複雑になります。製品数量や輸送条件ごとに異なる積み方を作りすぎると、作業者が誤った配置を選ぶ可能性があります。可能であれば基本パターンを共通化し、例外を最小限にします。
3D CADモデルを更新しないことも注意点です。梱包仕様が変更されたのに古いモデルを使い続けると、積載数や隙間の判断を誤ります。モデルには改訂情報を付け、使用している梱包仕様と一致していることを確認します。
最後に、試験積みを省略しないことが大切です。3D CADでは成立する配置でも、箱の摩擦、変形、持ちやすさ、固定作業などにより、実際には扱いにくい場合があります。モデルによる事前検討と実物確認を組み合わせることで、配置の信頼性を高められます。
まとめ
3D CADを使った輸送パレットの配置検討では、パレット上にできるだけ多くの荷物を置くだけでは不十分です。荷姿の寸法、必要な隙間、荷物の向き、積み重ね強度、重心、荷役方法、輸送設備などを含めて総合的に確認する必要があります。
まず、パレットと荷物の寸法基準を統一し、実際の梱包状態に近いモデルを用意します。そのうえで、平面配置、荷物の向き、高さ方向の段数を複数案で比較します。さらに、重量の偏りや重心位置を確認し、荷役機器による取り扱いや固定作業まで含めて成立する配置を選びます。
積載効率は、一段当たりの個数だけでは評価できません。面積や容積の利用率に加えて、総重量、作業時間、梱包資材、輸送後の品質、積み付けの再現性も確認することが重要です。空間を最大限に埋める配置よりも、安全に繰り返し運用できる配置の方が、物流工程全体では高い効果を得られる場合があります。
3D CADで配置を可視化すれば、設計、包装、物流、倉庫、製造などの関係者が同じ条件を見ながら検討できます。ただし、一般的な3D CADで確認できる重心や重量配置と、構造解析や試験が必要な実荷重分布は区別します。試験積みで得た実測値や改善点をモデルへ反映し、積載モデルを継続的に更新することで、製品や梱包仕様が変わった際にも再検討しやすくなります。
積載効率をさらに高めるには、設計データだけでなく、実際の荷物、保管場所、積み付け場所、搬送経路などの現況を正しく把握することも欠かせません。現場の寸法や形状を点群として記録し、3D CAD上の計画と照合したい場合は、LRTK Phoneを活用できる場面があります。取得した点群は、対応する形式や座標系を確認したうえで、積載モデルや現況図との比較に利用します。
ただし、倉庫内部や地下などGNSS衛星の電波を受信しにくい場所では、LRTK PhoneによるRTK測位だけで絶対座標を直接取得できない場合があります。屋内を含む物流環境で利用するときは、屋外で取得した基準、標定点、既知点との位置合わせなど、対象範囲と必要精度に合う方法を事前に確認します。点群の寸法精度や欠測も実物で検証し、計画モデルと現況データを組み合わせることで、机上の配置検討を実際の物流環境へつなげやすくなります。