積層造形でサポート材が必要になる理由
積層造形は、薄い層を順番に重ねて立体物を形成する製造方法です。切削加工のように材料の塊から不要部分を削るのではなく、基本的には下側に形成された層を土台として、その上へ新しい層を追加していきます。そのため、下の層から大きく張り出した部分や、空中に浮いた状態から始まる部分は、そのままでは安定して造形できないことがあります。
このような形状を支えるために追加されるのがサポート材です。サポート材には、造形途中の形状を保持する役割があります。また、使用する材料や造形方式によっては、熱を逃がす経路を作る、造形面への固定を補助する、反りや変形を抑制するといった役割も持ちます。したがって、サポート材は単なる無駄な材料ではなく、造形品質を安定させるために必要な場合があります。
一方で、サポート材が増えると、材料消費量だけでなく、造形時間や後処理の負担も増加します。造形後にはサポート材を切断、剥離、研磨などによって取り除く必要があり、接触部分には跡や凹凸が残ることがあります。寸法精度が必要な取付面や外観面にサポート材が付くと、追加の仕上げ加工が必要になる可能性があります。
さらに、内部流路や閉じた空間にサポート材が形成されると、造形後に取り出せない場合があります。外側から工具が届かない場所では、サポート材が残留し、流路の閉塞や重量増加、異物混入などの原因になりかねません。内部サポートを除去できる設計になっているかどうかは、外観から確認しにくいため、3D CADの段階で十分に検討する必要があります。
サポート材が必要になる条件は、材料、造形方式、積層厚さ、造形速度、冷却条件、形状寸法などによって変わります。ある装置では問題なく造形できる傾斜でも、別の条件では表面が崩れることがあります。そのため、特定の角度や寸法だけを絶対的な基準として扱うのではなく、実際に利用する造形条件と照らし合わせながら判断することが重要です。
3D CADを利用すると、造形方向に対する面の傾きや、下向き面の位置、内部空間の形状を造形前に確認できます。設計段階でサポート材が増えやすい場所を見つけ、機能や強度を維持したまま自己支持しやすい形状へ変更できれば、造形から仕上げまでの工程全体を効率化できます。
サポート材を減らす前に3D CADで確認したいこと
サポート材を減らす設計では、最初に造形方向を決める必要があります。同じ部品でも、配置方向を変えるだけで張り出し面の位置や面積が大きく変化するためです。造形方向が決まっていない状態で形状だけを修正すると、別の方向へ配置したときに改善効果が失われる可能性があります。
まず、部品の中で優先度の高い面を整理します。寸法精度が必要な基準面、他部品と接触する組付け面、外観品質が求められる意匠面、密封性が必要な面などは、サポート材との接触を避けたい場所です。これらの面を上向きや側面へ配置できるかを確認し、複数の造形方向を比較します。
次に、部品全体の高さを確認します。サポート材を減らすために部品を立てると、下向き面は減っても造形高さが増える場合があります。一般に積層する層数が増えれば、造形時間も長くなる傾向があります。サポート削減だけを優先すると、装置の稼働時間や変形のリスクが増えることもあるため、全体のバランスを見る必要があります。
造形面との接触面積も重要です。部品を細い端部だけで立てると、サポート材は減っても造形中の安定性が不足する可能性があります。接触面が小さい状態では、振動や材料収縮の影響によって部品が傾いたり、造形面から外れたりすることがあります。必要に応じて一時的な保持部や基準部を追加し、造形後に除去する設計も検討します。
また、内部形状は断面表示を使って確認します。外側からは単純に見える部品でも、内部に水平な天井、袋小路、横向きの穴、深いポケットが存在すると、サポート材が必要になることがあります。特に中空部品では、サポート材だけでなく、造形時に使用されなかった材料の排出経路も確認しなければなりません。
3D CAD上での解析結果は、造形可否を保証するものではありません。角度解析などで問題がないように見えても、薄い先端、熱が集中する厚肉部、急激な断面変化などでは変形が起こる場合があります。解析は問題箇所を絞り込むための手段として利用し、最終的には造形条件や試作結果と組み合わせて判断します。
形状改善1 水平な張り出しを傾斜面へ置き換える
サポート材が増えやすい代表的な形状は、造形方向に対して下向きとなる水平面です。棚板のように側面から直角に張り出す形状や、段差の下面が水平になっている形状では、新しい層を支える材料が直下に存在しません。そのまま造形すると、材料が垂れたり、下面が荒れたりするため、広い範囲にサポート材が配置されやすくなります。
この問題を改善する基本的な方法は、水平な下面を傾斜面へ置き換えることです。直角の段差に面取りを追加したり、張り出しの根元から先端へ向かう斜面を設けたりすると、新しい層が直前の層へ少しずつ重なる形になります。完全な水平面を避けることで、サポート材を使わずに造形できる範囲を広げられる可能性があります。
例えば、上側に取付面を持つ棚状の形状では、機能上必要なのは上面だけであり、下面まで水平である必要はない場合があります。下面を斜めに持ち上げ、根元を厚く、先端を薄くすることで、上面の機能を維持しながら張り出しを減らせます。荷重を受ける部品では、傾斜面が補強リブとして働くこともあります。
直線的な傾斜では外形が大きくなりすぎる場合、曲面を用いる方法もあります。張り出しの根元を円弧状に接続すれば、直角部分をなくし、応力集中を緩和できます。ただし、曲面は位置によって傾斜角度が変わります。外観上は滑らかでも、曲面の頂部付近に急な張り出しが残る場合があるため、造形方向から角度を確認する必要があります。
傾斜角度を緩やかにするほど自己支持しやすくなる傾向がありますが、部品の外形や材料体積は増加します。周辺部品との隙間が小さい場所では、傾斜面を追加したことで干渉が発生するかもしれません。3D CADではアセンブリ状態で周辺部品を表示し、形状改善後も組付けや可動範囲に問題がないか確認します。
傾斜面を追加するときは、急激な肉厚変化にも注意します。根元だけが極端に厚くなると、材料の冷却や収縮が均一にならず、反りや内部応力が発生する可能性があります。外形を単に埋めるのではなく、必要な強度を満たす範囲で中空化したり、一定厚さのリブとして構成したりすることが大切です。
また、外観面に傾斜を追加できない場合は、部品の内側だけを変更する方法があります。外形を維持しながら下面の内部に斜めの補強面を設ければ、見た目を変えずに水平な天井面を縮小できます。3D CADの断面表示を使い、必要な空間を残しつつ自己支持しやすい内部形状を検討します。
水平な張り出しを傾斜へ変える設計は、比較的単純で効果を得やすい方法です。ただし、傾斜を追加した結果として重量や外形が増えすぎると、製品全体では不利になることがあります。サポート材の削減量だけではなく、部品重量、強度、周辺空間、造形時間を合わせて評価することが重要です。
形状改善2 横穴や内部流路を自己支持断面に変える
造形方向に対して横向きに配置された円形穴は、サポート材が必要になりやすい形状です。穴の下半分は周囲の材料に支えられながら形成できますが、上半分へ進むにつれて各層の張り出し量が増えます。穴の頂部では下面に近い状態となり、穴径や造形条件によっては材料が垂れたり、断面が変形したりします。
この問題を改善する方法の一つが、円形穴を自己支持しやすい断面へ変更することです。上部を尖らせた涙滴形状、ひし形、山形、アーチ形状などにすると、左右の壁が段階的に内側へ近づくため、頂部に水平な面が生じにくくなります。3D CADでは、円弧と傾斜線を組み合わせた断面をスケッチし、押し出しやスイープによって穴や流路を作成できます。
ただし、すべての穴を自由な断面へ変更できるわけではありません。軸、ピン、締結部品などが通る穴では、完成時に円形断面が必要です。その場合は、造形時には小さめの下穴や自己支持断面を設け、造形後に切削加工して所定の円形寸法へ仕上げる方法が考えられます。
後加工を前提とする場合は、加工代だけでなく工具の進入方向を確認します。穴の奥に段差や曲がりがあると、一般的な工具では加工できない可能性があります。工具を挿入できる開口、加工時に部品を固定する基準面、切りくずを排出する空間まで3D CAD上で確認しておく必要があります。
冷却や空気、液体を通す内部流路でも、横向きの円形断面はサポート材の原因になります。必要な断面積を維持したまま、上部を山形にしたり、縦長の断面へ変更したりすれば、サポートを減らせることがあります。ただし、断面形状を変更すると流れ方も変化します。圧力損失、流速分布、滞留、洗浄性などへの影響を考慮しなければなりません。
内部流路の方向自体を変更できる場合は、造形方向と平行に近づける方法も有効です。水平に伸びていた流路を緩やかに上昇させたり、短い縦穴と斜め流路を組み合わせたりすると、大きな水平天井を避けられます。接続位置や流路長が変わるため、周辺部品との関係や流体性能を確認しながら調整します。
分岐流路では、交差部に広い空間ができることで、局所的に水平な天井が生じる場合があります。単純に二本の流路を重ねるのではなく、交差部を滑らかにつないだり、分岐角度を変更したりすることで、急な張り出しを減らせます。外側から見えない部分ほど、断面表示を複数方向から行うことが重要です。
内部穴にサポート材を配置する設計では、造形後に取り出せることが前提です。入口が小さい、流路が曲がっている、途中で分岐しているといった条件では、サポート材を完全に除去できない可能性があります。自己支持断面への変更は、材料削減だけでなく、内部に異物を残さないためにも重要な形状改善です。
形状改善3 長いブリッジと片持ち形状を短くする
二つの支持部の間を水平に結ぶ部分は、積層造形ではブリッジとして形成されます。短い距離であれば、両端を支点として材料を橋渡しできる場合があります。しかし、距離が長くなると中央部が垂れ、下面の粗さや寸法誤差が大きくなるため、サポート材が必要になります。
長いブリッジを改善する基本的な方法は、途中に支持部を追加して橋渡し距離を短くすることです。幅の広い開口部を一つ設けるのではなく、細い柱や隔壁を追加して複数の開口に分ければ、一つ当たりのブリッジ距離を小さくできます。追加した柱を製品使用時の補強として残せる場合は、造形性と強度を同時に改善できます。
柱を残せない場合は、造形後に除去する一時的な連結部として設計する方法があります。自動生成されるサポート材とは異なり、切断位置や太さ、工具の進入方向を3D CAD上で制御できます。除去後の跡が機能面や外観面へ影響しない位置に配置すれば、後処理を計画しやすくなります。
開口部の上側を水平梁からアーチ形状へ変更する方法も有効です。左右から少しずつ内側へ積層される形状にすれば、中央に到達するまで各層を下側から支えられます。完全な曲線が使えない場合でも、開口上部の角を斜めに切り落とした形状にすると、水平部分を短くできます。
長いブリッジを複数の短い傾斜面へ分解する方法もあります。例えば、開口の中央に向かって左右から斜面を設け、頂部だけを短いブリッジとして残します。これにより、サポート材が必要な範囲を全面から中央の狭い領域へ縮小できる可能性があります。
片側だけで支えられる片持ち形状も、サポート材が増えやすい部分です。フック、爪、レバー、配線保持部などでは、根元から先端までの下面が張り出しになることがあります。片持ち長さが大きいほど変形しやすくなるため、下面に三角形のリブを追加したり、先端を上向きに傾斜させたりします。
リブは、造形中の支持だけでなく、使用時の曲げ剛性を高める効果も期待できます。ただし、厚いリブを追加すると重量が増え、接続部に熱が集中しやすくなる場合があります。リブの厚さを周囲の壁厚に合わせ、根元を滑らかにつなげることで、急激な断面変化を避けます。
片持ち形状の機能を分解することも有効です。長い爪を一体で造形する代わりに、短い固定部と別部品の可動部に分割すれば、それぞれに適した向きで造形できます。ただし、部品点数や組立工程が増えるため、サポート削減の効果と比較して判断します。
ブリッジや片持ち形状を変更するときは、必要な開口寸法や可動範囲を維持できているか確認します。造形しやすい形状に変えた結果、工具、配線、配管、作業者の手が通らなくなることがあります。3D CAD上で周辺物を表示し、実際の使用条件を想定した干渉確認を行うことが大切です。
形状改善4 部品を分割して造形方向を最適化する
一体形状のままではサポート材を避けられなくても、部品を複数に分割すると、それぞれに適した造形方向を選べる場合があります。複雑な箱形部品や内部空間を持つ部品では、分割によって大きな水平天井や除去困難な内部サポートをなくせる可能性があります。
例えば、底面と側壁と天井が一体になった箱形状を開口側から造形すると、天井の下側へ広いサポート材が必要になることがあります。天井を別部品として分割すれば、本体は開口を上向きにし、天井は広い面を造形面側へ配置できます。造形後に両者を接合することで、内部サポートを回避できます。
分割位置を決める際は、組立後の強度を確認します。荷重が集中する部分や繰り返し変形する部分に分割面を設けると、接合部が弱点になる可能性があります。荷重経路を3D CAD上で想定し、応力が比較的小さい位置や、補強しやすい位置を選びます。
位置合わせの方法も必要です。単純な平面同士を接合するだけでは、組立時にずれや回転が生じることがあります。段差、溝、ほぞ、位置決め穴などを設けると、部品同士の位置を安定させやすくなります。ただし、造形誤差や表面粗さを考慮せずに隙間を小さくすると、部品が組み付かない場合があります。
接合方法に応じた形状も設計します。ねじで締結する場合は、工具を回せる空間や座面が必要です。接着する場合は、十分な接着面積と位置保持構造が求められます。圧入する場合は、寸法ばらつきと材料の変形特性を考慮する必要があります。分割面だけを作り、接合工程を後回しにすると、造形後に組み立てられない問題が起こります。
外観部品では、分割線の位置にも注意します。正面や連続した曲面の中央に分割線があると、接合跡が目立ちやすくなります。裏面、段差、角部、既存の境界線などへ分割面を移動すれば、外観への影響を抑えられます。
分割によって部品ごとの造形方向を変えられると、サポート材だけでなく表面品質も改善できる可能性があります。重要面を上向きに配置し、サポート材との接触を避けられるためです。一方で、分割部品ごとの寸法誤差が積み重なると、組立後の全体寸法がずれることがあります。位置決め基準を明確にし、重要寸法が複数部品にまたがらない構成を検討します。
分割しすぎると、部品点数、造形準備、組立、検査、データ管理の負担が増えます。サポート材が少し減るだけで多くの接合部が必要になる設計は、全体工程では不利になる可能性があります。分割案を評価するときは、材料使用量だけでなく、組立時間や検査項目まで含めて比較します。
3D CADのデータ管理では、製品としての一体モデルと、造形用に分割したモデルの関係を明確にします。設計変更があったときに片方だけが更新されると、完成寸法や接合位置が一致しなくなります。基準となる形状から造形用モデルを派生させるなど、変更を反映しやすい構成にしておくことが重要です。
形状改善5 閉じた空間と深いくぼみを見直す
積層造形では、外側から見えない空間にもサポート材や未使用材料が残ることがあります。内部に水平な天井を持つ空洞、出口のない中空部、奥行きの深いポケットなどは、造形が完了しても内部を清掃できない可能性があります。
閉じた空間を設ける場合は、内部を自己支持形状に変更できないか検討します。水平な天井を山形やアーチ形状へ変更すれば、サポート材を減らせる場合があります。外側の形状を変更できないときは、内部だけに傾斜面を追加し、必要な容積を確保しながら水平面をなくします。
中空部には、造形後に材料を排出するための開口も必要です。粉末状または液状の材料を用いる造形では、空洞内に未使用材料が残ることがあります。開口が小さすぎたり、一方向にしか設けられていなかったりすると、内部に材料や洗浄液が残留する可能性があります。
排出用の開口は、内部の最も低い位置だけに設ければよいとは限りません。部品をどの方向へ傾けられるか、空気がどこから入るか、洗浄液がどのように流れるかを考慮する必要があります。入口と出口を分けることで、内部を流れが通りやすくなる場合があります。
深いポケットでは、内部に工具が届くか確認します。サポート材を形成できても、除去用工具を挿入できなければ後処理は困難です。ポケットを貫通させる、側面に作業穴を追加する、浅い形状に分割するなどの改善を検討します。
作業穴を追加する場合は、完成後に塞ぐ方法まで設計します。栓やカバーを取り付けるのであれば、固定方法、密封性、外観、保守性を確認します。穴を塞ぐ工程が増えるため、部品分割や内部形状の変更と比較し、総工数の少ない方法を選びます。
中空化による軽量化を優先しすぎると、内部が複雑になり、サポート材や未使用材料を除去しにくくなることがあります。細い通路や袋小路が多い内部構造では、洗浄や検査も困難です。軽量化による効果と、造形後処理の負担を合わせて評価する必要があります。
3D CADでは、断面表示や透明表示を利用して内部空間を確認します。一方向の断面だけでは見落としが生じるため、複数方向から切断し、造形方向に沿って各層がどのように形成されるかを想定します。特に流路の分岐部、曲がり部、天井部は重点的に確認します。
内部形状は完成後に目視しにくいため、設計段階で確認ルールを設けることが有効です。最小開口寸法、工具の到達距離、排出経路、洗浄経路などを設計チェック項目に含めれば、除去不能なサポート材を防ぎやすくなります。
形状改善6 後加工を前提とした形状を組み込む
サポート材を完全になくすことが、常に最適とは限りません。造形方向を優先すると、重要な取付面の精度が低下したり、穴の形状が変形したりする場合があります。このような箇所では、後加工を前提として形状を設計する方法が有効です。
寸法精度が必要な平面には、あらかじめ加工代を追加しておきます。造形後に切削して仕上げれば、サポート材との接触跡や表面の凹凸を除去しながら、所定の寸法へ合わせられます。3D CADでは完成寸法と造形時の寸法を区別し、どの面に加工代があるのか明確にします。
穴についても、完成寸法を直接造形するのではなく、小さめの下穴として作り、造形後に加工する方法があります。横穴を自己支持断面にしておき、後加工で円形へ仕上げることも可能です。ただし、工具が穴の全長へ届くか、部品を安定して固定できるかを事前に確認します。
造形中だけ必要な保持部を製品モデルへ組み込む方法もあります。例えば、薄い部品の端部に保持用の耳を追加したり、細長い部品を安定させる連結部を設けたりします。これらは造形後に切断しますが、自動生成されるサポート材よりも位置と形状を管理しやすい点が利点です。
保持部の接続部分は、除去しやすい太さにします。細すぎると造形中に破損し、太すぎると切断や研磨が難しくなります。切断工具の幅、作業方向、完成面までの距離を考慮し、製品側を傷付けにくい位置へ配置します。
加工や検査のための基準部を一時的に追加する方法もあります。自由曲面が多い部品や、つかみやすい平面がない部品は、造形後の固定や測定が難しくなります。基準面、保持用の突起、測定用の座などを追加しておけば、後加工や寸法検査を安定させられます。
後加工用の形状を追加するときは、完成品に残る部分と除去する部分を明確に区別します。造形用モデルに追加した加工代や保持部が、組立確認用モデルへ残っていると、干渉判定や部品表の確認で誤解が生じます。3D CADの構成管理機能などを利用し、完成状態と造形状態を切り替えられるようにすると管理しやすくなります。
後加工を前提にする場合は、工程数が増えることも考慮します。加工代を追加すれば精度を確保しやすくなりますが、切削、固定、測定、洗浄などの作業が必要です。サポート材を使って直接造形する場合と比べ、どちらが全体として安定するかを判断します。
重要なのは、サポート材の削減を材料費だけで評価しないことです。計画されていないサポート除去は作業時間が読みにくく、品質のばらつきにもつながります。後加工を設計段階で計画し、必要な形状を3D CADへ組み込むことで、不規則な手作業を管理された工程へ置き換えられます。
3D CADでサポート削減案を比較する手順
サポート材を減らす形状改善は、一つの案だけで判断せず、複数の造形方向や形状案を比較することが重要です。最初に、完成品として必要な機能、寸法、外観、強度を整理し、変更できる形状と変更できない形状を区別します。
次に、候補となる造形方向を設定します。広い平面を下に置く案、重要面を上に向ける案、部品を立てる案などを作り、それぞれの状態で下向き面を確認します。造形方向ごとにモデルを複製するのではなく、方向を管理できる基準座標や構成を用いると比較しやすくなります。
各案では、下向き面の面積だけでなく位置も確認します。同じ面積でも、外周にあるサポート材は除去しやすく、内部にあるサポート材は除去が困難です。外観面、取付面、内部流路など、サポート材が接触する場所によって影響は大きく異なります。
次に、造形高さと造形面への接触状態を比較します。サポート材が少ない方向でも、部品が極端に高くなれば造形時間や変形リスクが増えることがあります。接触面が小さい場合は、造形中の安定性を確保するために別の保持構造が必要になるかもしれません。
形状改善案を作成したら、元のモデルと比較して機能が維持されているか確認します。傾斜面を追加したことで周辺部品と干渉していないか、穴断面を変更したことで必要な部品が通らなくなっていないか、分割によって荷重経路が変わっていないかを確認します。
内部形状については、断面表示を用いてサポート材の除去経路を確認します。工具が入るだけでなく、切断したサポート材を外部へ取り出せるかも重要です。内部で大きな塊となる場合、入口を通過できないことがあります。
後加工が必要な案では、加工機への固定方法や測定方法まで検討します。加工面は工具から見える位置にあるか、切りくずを排出できるか、基準面を確保できるかを確認します。造形が成功しても後加工できなければ、製品として完成させられません。
比較結果は、サポート材の推定量、造形高さ、後処理箇所、加工工程、組立工程などに分けて記録します。単純な材料体積だけで順位を付けるのではなく、工程全体の時間と失敗リスクを考慮します。
最終的には、代表的な形状を含む試験片や小規模な試作品を造形し、設計基準を確認します。3D CAD上の角度解析で問題がない形状でも、実際には下面が荒れたり、穴が変形したりすることがあります。自社で使用する材料、装置、積層条件に基づいた実績を蓄積することで、次回以降の設計判断を早められます。
サポート材を減らすときの注意点
サポート材を減らす設計では、造形性だけを優先しすぎないことが大切です。傾斜面を追加すると自己支持しやすくなりますが、部品の外形や重量が増える場合があります。穴の断面を変更すればサポートを減らせても、軸や配管との適合性が失われる可能性があります。
強度については、完成形状だけでなく積層方向も確認します。造形方向を変えると、荷重に対する層の向きが変化します。使用時の荷重が層同士を引き離す方向に作用すると、期待した強度を得られない場合があります。サポート材が減った案であっても、使用条件に対して適切な方向とは限りません。
寸法精度も造形方向の影響を受けます。横穴の形状、薄い壁の厚さ、広い平面の反りなどは、支持状態や積層方向によって変わることがあります。重要寸法を持つ箇所では、後加工を含めた方法を検討します。
熱の影響を受ける造形では、サポート材が熱を逃がす経路や変形を抑える固定部として機能する場合があります。形状が自己支持できるように見えても、サポートを削除したことで熱が集中し、反りや残留応力が増える可能性があります。特に厚肉部や広い平面では注意が必要です。
細かな面取りや微細なリブを多数追加すると、3D CADモデルが複雑になり、修正しにくくなることがあります。造形装置で再現できないほど小さな形状を追加しても、期待した効果は得られません。実際に造形可能な最小寸法を確認し、効果のある形状に限定します。
サポート材の体積だけでなく、除去のしやすさも評価します。少量のサポート材でも、内部や重要面に配置されると大きな負担になります。反対に、多少量が増えても外周の切断しやすい場所へまとめられれば、後処理時間を短縮できることがあります。
部品を分割する場合は、組立誤差や接合部の耐久性を確認します。サポート材は減っても、接合部の不具合が増えれば製品全体では改善になりません。組立治具、締結方法、検査方法まで含めた計画が必要です。
設計変更の効果は、材料使用量、造形時間、装置への配置数、後処理時間、加工時間、組立時間、検査時間などを含めて評価します。サポート材を最小にすることではなく、安定した品質で効率よく完成品を作ることが最終的な目的です。
まとめ
積層造形では、3D CAD上で問題なく成立する形状でも、造形方向に対して下側の支えが不足するとサポート材が必要になります。水平な張り出し、横向きの円形穴、長いブリッジ、片持ち部、閉じた内部空間などは、サポート材が増えやすい代表的な形状です。
水平な下面を傾斜面へ変える、穴や流路を自己支持断面にする、ブリッジを短くする、部品を分割する、内部の排出経路を確保する、後加工用の形状を組み込むことで、サポート材を減らせる可能性があります。ただし、形状改善によって強度、外形、重量、流体性能、組立性などが変化するため、造形性だけで判断してはいけません。
3D CADでは、造形方向を定義したうえで、下向き面、内部空間、工具到達性、周辺部品との干渉を確認します。複数の造形方向や形状案を比較し、サポート材の量だけでなく、造形高さ、後処理、加工、組立、検査まで含めた総工数で評価することが重要です。
実際に採用できる張り出し角度や穴形状は、材料や造形条件によって異なります。一般的な目安だけに依存せず、試験片や試作品の結果を蓄積し、自社の設計基準として整理することで、次回以降の形状検討を効率化できます。
積層造形した部品を設備や構造物へ取り付ける場合は、造形後の形状だけでなく、設置位置や周辺物との取り合いも確認する必要があります。現場で部品の位置や周囲の状況を記録し、設計データとの照合を効率化したい場合は、LRTK Phoneの活用も検討できます。