LRTKレフィクシア株式会社

3D CADで樹脂部品の肉厚不足を見つける5つの解析ポイント

樹脂部品の肉厚不足を3D CADで確認する重要性

樹脂部品の設計では、外形寸法や組付け条件が成立していても、局所的な肉厚不足によって製造時や使用時の問題が発生することがあります。3D CADの画面では十分な厚さがあるように見えていても、曲面同士が近づく部分、穴と外壁の間、溝の底、リブの端部、ボスの周辺などでは、設計者が意図していない薄肉部が生じる場合があります。

樹脂部品の形状は、外観面と内部構造を組み合わせて作られることが一般的です。外形を先に作成し、その後に中空化、リブ、ボス、穴、逃げ、フィレットなどを追加していくと、最初に設定した壁厚が最終形状でも維持されているとは限りません。設計履歴上では一定の厚さを指定していても、後工程で面を移動したり、穴を追加したり、曲面を修正したりすることで、局所的な残り厚さが小さくなることがあります。

肉厚不足があると、成形時に樹脂が流れにくくなり、先端まで十分に充填されない可能性があります。また、複数の樹脂流動が合流する部分に薄肉があると、接合部分の状態が不安定になることも考えられます。成形できた場合でも、組付け時の押し込み、ねじ締結、落下、振動、温度変化などによって変形や割れが起こる可能性があります。

ただし、薄い部分がすべて不具合になるわけではありません。弾性変形させる爪、意図的に曲げる部分、切り離し用の溝、薄肉ヒンジなど、機能上の理由から薄く設計される形状もあります。必要な肉厚は、使用する樹脂材料、部品の大きさ、成形条件、流動距離、使用温度、荷重方向、要求寿命などによって異なります。そのため、肉厚解析では最小値だけを見て合否を決めるのではなく、薄肉部の位置、範囲、周辺形状、役割を含めて判断することが重要です。

3D CADの肉厚解析を活用すれば、向かい合う面の距離を計算し、指定した範囲より薄い部分を視覚的に抽出できます。手動ですべての箇所を測定するより効率的であり、目視では見つけにくい内部の薄肉部も確認しやすくなります。一方で、解析条件やモデルの状態が適切でなければ、実際の設計意図と異なる結果が表示されることがあります。解析機能を実行すること自体を目的にせず、結果を設計条件と照合しながら読み解く姿勢が必要です。

肉厚解析を始める前に整理したい設計条件

肉厚解析を正しく行うためには、最初に解析対象となる3Dモデルの状態を確認します。外部から受け取ったデータや、複数の面を接合して作成したモデルでは、見た目が閉じていても立体として成立していない場合があります。微小な隙間、重複面、欠損面、自己交差、不必要な内部面などが残っていると、肉厚を測る方向が安定せず、極端に小さい値や不自然な分布が表示されることがあります。

解析対象が閉じた立体として認識されているかを確認し、必要に応じて形状修復を行います。面モデルをそのまま扱う場合は、使用する3D CADの解析機能が面モデルに対応しているかも確認します。肉厚解析が立体形状を前提としている場合は、面の接合や立体化を行ってから解析したほうが結果を判断しやすくなります。

次に、モデルの単位を確認します。受け渡されたデータの単位が想定と異なると、モデルの大きさと肉厚判定値の桁が一致しません。画面上では形状が正常に見える場合でも、代表寸法を測定すると設計図と一致していないことがあります。全長、穴径、基準となる壁厚などを測り、仕様書や図面と比較してから解析を始めることが安全です。

解析の妨げになる微小形状についても整理します。外観用の文字、細かな凹凸、小さな面取り、微細な溝などが含まれていると、それらが薄肉箇所として大量に検出され、重要な問題箇所が結果の中に埋もれることがあります。最終確認では細部も含めて評価する必要がありますが、初期確認では機能に影響しない微小形状を一時的に抑制したモデルを使い、部品全体の傾向を先に把握すると効率的です。

設計段階も明確にしておきます。構想段階では、部品全体の肉厚が大きく偏っていないかを確認することが主な目的になります。詳細設計段階では、穴、リブ、ボス、爪などを追加した後の局所的な薄肉を確認します。量産準備に近い段階では、微小な残り厚さ、成形方向、金型構造、使用時の荷重まで含めて詳しく評価する必要があります。

解析前には、材料、基準肉厚、許容する最小肉厚、重点確認部位、評価から除外する形状を整理します。数値や判断基準を決めずに色分け結果だけを見ると、どの部分を修正すべきか判断できません。設計仕様、過去の類似部品、試作結果、成形担当者の知見などを参考にし、少なくとも初期の判定基準を用意しておくことが重要です。

解析ポイント1 基準肉厚と許容範囲を明確にする

肉厚解析で最初に行うことは、対象部品の基準肉厚を明確にすることです。基準肉厚とは、主要な外壁や構造壁に設定する設計上の目安です。樹脂部品では、厚くすれば必ず性能が向上するとは限りません。厚肉部を増やすと、材料の使用量が増えるだけでなく、冷却時間、収縮差、外観上のへこみ、変形などに影響する可能性があります。そのため、必要な性能を満たしながら、できるだけ急激な肉厚変化を避けることが基本となります。

基準肉厚は、材料の一般的な特性だけで決めるものではありません。部品の大きさ、流動距離、成形方向、ゲートからの距離、外観品質、荷重条件、使用温度、耐久性などを考慮して決定します。材料ごとの目安があっても、対象部品の形状や製造条件によって適切な値は変わります。

3D CADで肉厚解析を行うときは、基準肉厚に対して複数の判定範囲を設定すると確認しやすくなります。設計上おおむね問題が起こりにくい範囲、注意して確認する範囲、優先的に修正を検討する範囲というように、段階的に表示します。単一のしきい値だけで判定すると、わずかに基準を下回る部分と、大幅に不足している部分が同じ警告として扱われてしまいます。

最小肉厚の数値だけを見るのではなく、薄肉領域の面積や連続性も確認します。針先ほどの小さな部分に最小値が現れている場合と、広い範囲にわたって薄肉が続いている場合では、製造や強度への影響が異なります。最小値が同じでも、流動方向に長い薄肉領域や、荷重が集中する部分の薄肉は、優先的な検討が必要になることがあります。

部品全体で一つの基準を使うことが適切でない場合もあります。外観を構成する側壁、ねじ締結を受けるボス、位置決め用の壁、たわみを利用する爪、保護用のカバーでは、要求される厚さや変形の考え方が異なります。意図的に薄くした部分を通常の外壁と同じ基準で判定すると、必要のない修正につながる可能性があります。

そこで、部品を機能別に分けて考える方法が有効です。主要外壁、締結部、支持部、弾性変形部、意匠部、非機能部などに分類し、それぞれに適した判断基準を用意します。3D CAD上で領域を分割できる場合や、特定の面だけを選択して解析できる場合は、機能ごとに結果を確認すると設計意図との照合がしやすくなります。

解析条件は記録として残します。材料、基準肉厚、警告範囲、解析対象のモデル版、解析日などを保存しておけば、設計変更前後の結果を同じ条件で比較できます。担当者ごとに異なる設定で解析すると、同じ形状でも判定結果が変わり、設計レビューの再現性が低下します。

解析ポイント2 肉厚分布を色分けして薄肉領域を探す

基準肉厚と許容範囲を決めたら、部品全体の肉厚分布を色分けして確認します。色分け表示の利点は、一か所ずつ距離を測定する方法では見つけにくい薄肉領域を、部品全体から効率よく抽出できることです。

解析結果では、最小値が表示された一点だけに注目しないようにします。面の端、鋭い角、微小な形状などでは、計算上不安定な値が現れる場合があります。まずは警告色がどの範囲に分布しているかを確認し、帯状に続いている部分、複数箇所で同じ傾向が出ている部分、穴や溝の周辺に集中している部分を探します。

肉厚の色が短い距離で急激に変化している場所も重要です。緩やかに厚さが変化する部分に比べ、局所的に急減する部分では、樹脂の流れや応力の伝わり方が変化しやすくなります。外観面は滑らかでも、内側の段差や張り出しによって残り厚さが急に小さくなることがあるため、モデルを回転させながら全方向から確認します。

外側から見えない内部構造は、透明表示や一部非表示を併用して確認します。複雑な樹脂部品では、外壁の奥にあるリブ、ボス、仕切り壁、穴周辺の解析色が通常表示では隠れてしまうことがあります。解析対象以外の部品を非表示にしたり、部品を領域ごとに分けたりすると、見落としを減らせます。

色分けの段階数も結果の見やすさに影響します。色の区分が粗すぎると、基準値をわずかに下回る部分と、大幅に不足する部分が同じ色で表示されます。一方で、区分を細かくしすぎると色の変化が複雑になり、重要な傾向が分かりにくくなります。最初は少数の範囲で全体を確認し、その後、問題が疑われる厚さの範囲に絞って再解析すると効率的です。

薄肉領域の形状にも注目します。点状の薄肉、線状の薄肉、面状の薄肉では、影響の考え方が異なります。点状の結果は、微小な角や解析誤差による可能性があります。線状の薄肉は、溝の底や曲面の境界に沿って発生している場合があります。面状の薄肉が広がっている場合は、部品全体の基準肉厚やシェル形状そのものを見直す必要があるかもしれません。

成形時の樹脂流動も意識して結果を読みます。ゲートに近い薄肉部と、流動末端にある薄肉部では、同じ厚さでも成形への影響が異なる可能性があります。薄肉領域の先に広い空間がある場合は、その狭い部分を通って樹脂を充填する必要があります。肉厚解析だけで流動状態を断定することはできませんが、想定する流れの方向と薄肉分布を重ねることで、重点的に確認すべき位置を絞り込めます。

意図的な薄肉部には、設計上の意味を残しておくことが重要です。変形させる爪、切り離し用の溝、薄肉ヒンジなどを通常の警告と区別しなければ、レビューのたびに同じ指摘が繰り返されます。設計意図を注記や属性として管理し、意図しない薄肉だけを効率的に追跡できる状態にします。

解析ポイント3 複数方向の断面で局所的な薄肉を確認する

色分け表示は部品全体の傾向を把握するのに有効ですが、薄肉が発生した原因を理解するには断面表示が欠かせません。曲面、段差、穴、溝、リブなどが組み合わされた形状では、外観だけから内部の距離関係を正確に把握することが難しいためです。

断面は一方向だけで判断せず、薄肉部を通る複数の方向に設定します。正面から見た断面では十分な厚さがあるように見えても、斜め方向では二つの面が接近し、最短距離が小さくなっていることがあります。穴が斜めに配置されている場合や、外壁が複雑な曲面になっている場合は、特に複数方向の確認が必要です。

曲面部では、水平断面や垂直断面だけでは設計上の肉厚を正しく確認できないことがあります。肉厚をどの方向の距離として評価するかによって数値が変わるためです。薄肉が疑われる面に対して直角に近い方向、実際の荷重が作用する方向、成形時に樹脂が流れる方向など、目的に応じて断面を設定します。

断面上では、向かい合う面の距離を手動で測定し、自動解析の結果と比較します。ただし、最短距離がそのまま設計上の壁厚を意味しない場合もあります。二つの面が斜めに向かい合う形状では、幾何学的な最短距離と、成形上想定している壁厚方向が異なることがあります。自動計算値だけで判断せず、断面形状と設計意図を照合します。

確認するのは薄肉部の数値だけではありません。薄肉部に至るまでの厚さの変化、周囲の角部、内側形状の張り出し、穴との距離、リブとの交差、フィレットの接続状態なども見ます。原因が外形面の変更にあるのか、内部構造の位置にあるのか、溝の深さにあるのかを特定できれば、修正方法を選びやすくなります。

外観面を変更できない部品では、内部形状を移動したり、溝を浅くしたりして肉厚を確保します。内部に基板、配線、機構部品などがあり、内側を動かせない場合は、外形側の調整が必要になることがあります。断面上で周辺部品との位置関係を確認すると、変更可能な方向を判断しやすくなります。

フィレットの影響も断面で確認します。フィレットは角部の応力集中を緩和するために使われますが、大きさや中心位置によっては反対側の面との距離を狭めます。内側フィレットと外側フィレットの関係が適切でないと、角部の途中で肉厚が小さくなることがあります。

シェル形状として作成したモデルでも、最終形状に対する断面確認が必要です。シェル処理の直後は一定の厚さでも、その後に穴、切り欠き、面移動、フィレットなどを追加すると、局所的な壁厚が変わります。設計履歴に一定肉厚の設定が残っていることを理由に、最終形状の確認を省略しないようにします。

解析ポイント4 リブやボスなどの付け根を重点的に調べる

樹脂部品の肉厚解析では、リブ、ボス、爪、仕切り壁などの内部構造を重点的に確認します。これらは強度、位置決め、締結、変形防止などのために追加されますが、外壁との位置関係によって薄肉部と厚肉部の両方を生じさせやすい形状です。

リブでは、リブ自体の厚さだけでなく、外壁や周辺形状との距離を確認します。リブの先端から付け根に向かって形状が広がる場合、抜き勾配やフィレットによって根元の幅が想定以上に大きくなることがあります。反対に、リブの近くに穴や溝があると、その間の残り厚さが不足する場合があります。

リブの端部も注意が必要です。リブを途中で止めた部分では、先端形状やフィレットによって局所的な薄肉が生じることがあります。外壁の段差付近でリブが終わる場合や、別のリブと接続する場合は、複数の断面で確認します。

複数のリブが交差する場所では、樹脂が集まりやすく厚肉になりがちです。厚肉を避けるために肉抜きや逃げを設けると、その底部や角部が薄くなることがあります。厚肉を減らす修正が、別の肉厚不足を作っていないかを再解析することが必要です。

ボスでは、下穴と外径の間に残る樹脂の厚さを確認します。ねじ締結や圧入に使うボスには周方向の力が加わるため、局所的な薄肉が割れの起点になる可能性があります。穴径だけを変更し、ボス外径を変更していない場合は、残り厚さが当初より小さくなっていることがあります。

穴が途中までの形状では、穴の底部も確認します。穴の深さを増やすと、反対側の外壁までの距離が不足する場合があります。外側からは十分な厚さに見えても、穴の底が曲面や溝に近づいていることがあります。

ボスの根元に補強リブを設ける場合は、ボス中心を通る断面だけでなく、補強リブを通る断面も確認します。補強リブが外壁へ接続する位置に穴や段差があると、残り厚さが急激に変化することがあります。補強することだけを目的に形状を追加すると、成形性や周辺の肉厚バランスを崩す可能性があります。

ボス周辺に円形や環状の肉抜きを設ける設計では、肉抜き底部の残り厚さを確認します。ボスの高さ、穴の深さ、肉抜きの深さは互いに影響します。いずれか一つを変更したときは、関連する形状を含めて再解析します。

爪やスナップ形状の根元も重要です。爪をたわませるために根元を薄くする設計はありますが、切り欠きや鋭い角によって想定以上に薄くなると、組付け時に白化や割れが発生する可能性があります。薄肉であることが機能上必要な場合でも、変形量、角部形状、繰り返し回数を含めて評価します。

内部構造は設計終盤で追加や移動が行われやすいため、外形設計が完了した時点の一回だけでは確認が不足します。リブ、ボス、穴などを変更するたびに肉厚解析を更新し、周辺への影響を確認することが重要です。

解析ポイント5 成形性と使用時の荷重を重ねて評価する

肉厚解析で薄い部分を検出しても、その結果だけで不具合になると断定することはできません。最終的には、成形性と使用時の荷重を重ねて評価します。肉厚は、製造できるかどうかと、使用中に必要な性能を維持できるかどうかの両方に関係するためです。

成形性の観点では、薄肉部の位置と想定される樹脂の流動経路を確認します。ゲートに近い薄肉部と、流動末端にある薄肉部では、同じ厚さでも影響が異なる可能性があります。薄肉部の先に広い領域がある場合、その狭い部分を通過して樹脂を充填する必要があるため、重点的な検討が必要です。

薄肉部が流動方向に長く続く場合にも注意します。一点だけがわずかに薄い形状より、狭い流路が一定距離にわたって続く形状のほうが、充填への影響が大きくなることがあります。3D CADの色分け結果から、薄肉領域の長さ、幅、向きを確認します。

急激な肉厚変化がある場所も成形上の確認対象です。薄い部分から急に厚い部分へ変化すると、樹脂の流れや冷却状態に差が生じる可能性があります。最小肉厚を確保するだけでなく、周辺とのつながりが滑らかになっているかを確認します。

使用時の強度では、荷重が伝わる経路上に薄肉部があるかを見ます。部品の固定箇所、手で押される面、落下時に衝撃を受ける角部、締結荷重が作用するボス周辺などに薄肉がある場合は、優先して評価する必要があります。外力がほとんど作用しない保護カバーと、機構を支持する壁では、同じ厚さでも重要度が異なります。

荷重方向と薄肉部の向きも重要です。薄い壁でも面内方向の力には耐えやすい場合がありますが、面外方向に曲げられると変形が大きくなることがあります。肉厚分布だけでなく、部品が押される方向、引かれる方向、ねじられる方向を整理します。

温度条件も考慮します。樹脂材料の剛性や変形特性は温度によって変化するため、常温では問題が見られない肉厚でも、高温環境や低温環境では挙動が変わる可能性があります。屋外、発熱部品の周辺、温度変化の大きい設備などで使用する場合は、実際の使用環境を想定します。

繰り返し荷重を受ける部分では、一回の荷重に耐えるだけでは不十分です。着脱を繰り返す爪、開閉するカバー、振動を受ける取付部などでは、薄肉部が損傷の起点になることがあります。必要に応じて構造解析や試作評価を行い、変形量と繰り返し回数を確認します。

成形解析や構造解析を行う場合は、肉厚解析で検出した位置を重点確認領域として利用できます。部品全体を一律に詳しく調べるより、薄肉分布から問題が疑われる場所を絞り込み、その周辺の流動、変形、応力などを確認するほうが効率的です。

ただし、詳細解析の結果も入力条件によって変わります。材料特性、荷重、拘束、温度、成形条件などが実態と異なれば、解析結果と現物の挙動にも差が生じます。解析値を絶対的な保証として扱わず、設計判断を支援する情報として活用し、必要に応じて試作や実物評価と組み合わせます。

肉厚不足を見落としやすい代表的な形状

肉厚不足は、単純な平面部よりも、複数の形状が近づく場所で発生しやすくなります。代表的な形状を理解しておけば、肉厚解析を行うときに確認の優先順位を付けられます。

穴と外壁の間は、特に見落としやすい部分です。取付穴、配線穴、通気穴、ねじ穴などを外周に近づけると、穴の一部と外壁の間に薄い領域が生じます。正面から見た距離が十分でも、穴が斜めに配置されていたり、外壁が曲面で構成されていたりすると、別方向の最短距離が小さくなる場合があります。

深い溝や段差の底部も注意が必要です。シール材を配置する溝、位置決め用の溝、外観上のラインなどを深くすると、溝底と反対側の面が接近します。溝幅だけを確認し、底部の残り厚さを見落とすことがあります。溝の深さを変更したときは、周囲を含めて再解析します。

外側と内側で異なる曲率を持つ曲面も薄肉になりやすい形状です。外側の曲面だけを変更し、内側の対応面を変更しなければ、曲面間の距離は一定になりません。複数の曲面が接続する部分や、曲率が急に変化する部分では、局所的に肉厚が不足する可能性があります。

抜き勾配を追加した壁も確認します。壁の上端では十分な厚さでも、下端へ向かうにつれて薄くなることがあります。外側と内側に勾配を付ける場合、基準面や勾配方向が一致していなければ、壁厚が高さ方向に変化します。

面取りやフィレットの周辺でも肉厚が変化します。外側の角を大きく丸め、内側の角を小さくすると、角部の厚さが増えることがあります。反対に、内側のフィレットを大きくすると、近くにある穴や溝との距離が不足することがあります。角部の見た目だけでなく、周辺形状との距離を確認します。

シェル化した後に行う面移動も見落としの原因になります。外形の微調整として一部の面を動かすと、その面だけが内側の対応面へ近づきます。設計上は小さな変更でも、残り厚さが許容範囲を下回ることがあります。

文字や記号を彫り込んだ部分も確認が必要です。薄いカバーに識別文字や目盛りを設けると、彫り込み底部の肉厚が小さくなります。文字の細い線や鋭い角では、解析結果が点状または線状に現れるため、拡大して確認します。

複数の立体を結合した形状では、結合部の内部も調べます。別々に作成した形状を一体化すると、不要な内部面や細い空間が残ることがあります。外観からは正常に見えても、内部に薄い膜状の形状が形成されている場合があります。

肉厚解析で誤判定が起こる主な原因

3D CADの肉厚解析では、形状や設定によって実際の設計意図とは異なる結果が表示されることがあります。解析結果をそのまま受け入れるのではなく、不自然な値が出たときはモデルと条件を確認します。

鋭い角や面の境界では、極端に小さい値が表示されることがあります。肉厚を計算する方向が安定しないためです。点状に現れる最小値は、周辺の断面を確認し、実際に連続した薄肉領域があるかを判断します。

微小な隙間や重複面があるモデルでも誤判定が発生します。見た目では閉じていても、内部に不要な面が残っていると、その面までの距離を肉厚として計算することがあります。形状検査を行い、欠損、重複、自己交差などを修正します。

解析方向の設定によって結果が変わる場合もあります。面に対して直角方向に測る方法、最短距離を求める方法、指定方向に測る方法では、斜めに向かい合う面の値が異なります。使用する解析方式が、評価したい肉厚の意味と一致しているかを確認します。

表示精度や計算精度が粗いと、微小な薄肉部を見落とす可能性があります。反対に、必要以上に細かい設定では、設計上意味のない微小な凹凸まで警告として検出されることがあります。部品の大きさ、要求精度、設計段階に応じて設定を調整します。

非表示の形状や別部品が計算対象に含まれていないかも確認します。アセンブリ全体を対象に解析すると、隣接部品との距離が肉厚として誤って扱われる場合があります。基本的には対象部品を単体で解析し、必要な形状だけを選択します。

単位の不一致も典型的な原因です。判定値がモデルの単位と合っていなければ、部品全体が警告色になったり、問題箇所がまったく検出されなかったりします。解析前に代表寸法を確認することで、多くの誤設定を防げます。

肉厚不足を修正するときの進め方

肉厚不足を検出したら、警告箇所だけを単純に厚くするのではなく、原因と周辺への影響を確認しながら修正します。局所的に樹脂を追加すると、別の場所に厚肉部が発生したり、外観、組付け、金型構造へ影響したりする場合があります。

最初に、薄肉部が設計意図によるものかを確認します。弾性変形を利用する部分、切り離す部分、意匠上必要な溝などでは、薄肉が機能に含まれていることがあります。意図的な薄肉であれば、厚くするのではなく、必要な変形と耐久性を満たしているかを評価します。

意図しない薄肉であれば、どの形状が原因になっているかを断面で確認します。外壁、内壁、穴、溝、リブ、ボス、フィレットなど、向かい合う面の距離を狭くしている形状を特定します。原因を確認せずに周囲の面を動かすと、別の干渉や寸法不整合を生じる可能性があります。

次に、外側と内側のどちらを変更できるかを整理します。外観が重要な部品では、外形を維持し、内部の溝やリブを調整します。内部空間に機構部品、配線、基板などが配置される場合は、内側を動かせないため、外形や部品配置の見直しが必要になることがあります。

具体的な修正方法としては、溝を浅くする、穴を移動する、穴径を見直す、リブの位置を変える、ボス外径を調整する、肉抜きの深さを減らす、曲面の接続を滑らかにするなどが考えられます。必要な厚さを確保するだけでなく、周辺の厚さが急変しない形状を目指します。

修正後は、同じ基準肉厚と判定範囲で再解析します。解析条件を途中で変えると、変更前後の比較ができません。警告箇所が消えたかだけでなく、薄肉領域が別の位置へ移動していないか、面積が増えていないかを確認します。

肉厚を増やした結果として、厚肉部が生じていないかも確認します。薄肉を解消するために内側へ材料を追加すると、外観面の裏側に樹脂が集中する場合があります。最小肉厚だけでなく、最大肉厚や肉厚分布の均一性も再評価します。

アセンブリ状態での確認も必要です。内部壁を移動したことで、周辺部品との干渉、工具の挿入、配線経路、可動範囲などに影響する場合があります。部品単体の肉厚が改善しても、組付けが成立しなければ設計としては完成しません。

修正理由と結果は設計記録へ残します。どの位置に肉厚不足があり、何が原因で、どの形状を変更し、再解析後にどのような結果になったかを記録します。設計変更の目的が明確であれば、後の修正で問題の形状へ戻してしまうことを防ぎやすくなります。

解析結果を設計レビューへ反映する方法

肉厚解析は、設計者が個人で確認するだけでなく、設計レビューの共通資料として活用すると効果的です。肉厚不足は、設計、成形、金型、品質、組立など複数の担当者に関係するため、早い段階で共有することが重要です。

レビュー資料では、部品全体の肉厚分布と、注意箇所の拡大表示を組み合わせます。全体表示だけでは局所的な問題を確認しにくく、拡大表示だけでは部品上の位置が分かりません。全体位置、断面、測定値、周辺形状が対応するように整理します。

解析条件も明記します。材料、基準肉厚、警告範囲、解析対象のモデル版、除外した微小形状などを記録します。条件が分からない結果は、別の担当者が再現できず、判断の根拠として使いにくくなります。

警告箇所には、その部分の機能も記載します。外観面、締結部、支持部、弾性部、流動末端などの情報があれば、修正の優先順位を判断しやすくなります。同じ肉厚でも、荷重経路上の薄肉と、非機能面の小さな薄肉では重要度が異なります。

すべての警告箇所を同じ重要度で扱わないことも大切です。意図された薄肉、解析上の微小な検出、追加確認が必要な薄肉、修正を優先する薄肉に分類すると、レビューを効率的に進められます。

設計変更前後の比較では、表示方向と解析条件を揃えます。最小値だけが改善していても、薄肉領域の面積が増えている場合があります。変更前後の色分布、断面、測定値を並べて確認し、部品全体として改善しているかを判断します。

許容すると判断した薄肉部については、その理由を残します。機能上必要な弾性部である、荷重がほとんど作用しない、試作で確認する予定である、製造担当者と条件を確認したなど、判断根拠を記録します。根拠が残っていれば、後のレビューで同じ検討を繰り返すことを防げます。

量産後に割れ、変形、充填不足などが発生した場合は、不具合位置と過去の肉厚解析結果を照合します。事前に検出された薄肉領域と一致しているかを確認し、その情報を次の設計基準や判定範囲へ反映します。実物の結果を解析条件へ戻すことで、社内の肉厚確認ルールを継続的に改善できます。

3D CADと現場情報を組み合わせる考え方

3D CAD上で肉厚を確認していても、試作品や量産品の形状が設計データと完全に一致するとは限りません。成形収縮、反り、加工差、組付け荷重、温度変化、経年変化などによって、実物の形状は設計値から変化する場合があります。

既存部品の改良設計では、保管されている3Dデータが実物の最新状態と一致していないこともあります。金型側で修正が行われていたり、現場で追加工されていたりすると、3D CADモデルだけを基準にしても正しい状態を把握できません。その場合は、実物の寸法や外形を確認し、設計データとの差を整理します。

外形寸法、穴位置、取付位置、変形量などを現場で記録し、その結果を3D CADモデルと照合すると、改良設計の前提を整えやすくなります。ただし、外側から取得した形状情報だけでは、内部の肉厚を直接測れない場合があります。外形計測、接触による寸法測定、切断した試料の確認、非破壊による内部確認などを目的に応じて使い分けます。

計測情報と3D CADを比較するときは、座標系、単位、基準面を統一します。基準が異なると、位置合わせの誤差を部品の変形として判断してしまう可能性があります。比較に使う穴、平面、軸、角部などを事前に決め、同じ基準で位置合わせします。

樹脂部品が屋外設備や大型構造物へ取り付けられる場合は、部品単体だけでなく、周辺設備との位置関係も重要になります。交換部品の設計、取付ブラケットの検討、作業空間の確認などでは、現場の位置情報や形状情報を設計へ反映することで、組付け時の手戻りを減らしやすくなります。

LRTK Phoneを活用すれば、屋外設備の位置、周辺形状、取付対象の配置などを現場で記録し、3D CADによる改修設計へつなげる使い方が考えられます。樹脂部品の微細な肉厚を直接測定する用途とは異なりますが、設置環境や周辺構造を設計データと結び付けることで、部品単体では分からない取付条件を確認しやすくなります。

肉厚解析と現場情報を別々に管理するのではなく、設計値、試作品、量産品、使用環境の差を継続的に確認することが、実際の不具合を減らすうえで重要です。

まとめ

3D CADで樹脂部品の肉厚不足を見つけるには、最小肉厚の数値だけを確認するのではなく、基準肉厚、薄肉領域の広がり、断面形状、内部構造、成形性、使用時の荷重を総合的に評価する必要があります。

最初の解析ポイントは、基準肉厚と許容範囲を明確にすることです。判断基準がなければ、色分けされた解析結果を見ても、修正すべき部分と許容できる部分を区別できません。部品全体に一つの基準を適用するだけでなく、外壁、締結部、支持部、弾性部などの機能を考慮します。

二つ目の解析ポイントは、肉厚分布を色分けし、薄肉領域の位置と広がりを把握することです。最小値だけでなく、薄肉が点状、線状、面状のどの状態で現れているか、長い範囲に連続していないか、急激な肉厚変化がないかを確認します。

三つ目の解析ポイントは、複数方向の断面を使った確認です。曲面や斜めの壁では、見る方向によって距離の捉え方が変わります。自動解析と手動測定を組み合わせ、薄肉が発生した原因となる形状を特定します。

四つ目の解析ポイントは、リブ、ボス、爪などの内部構造を重点的に調べることです。内部構造は強度を高める目的で追加されますが、周辺に局所的な薄肉や急激な肉厚変化を生じさせることがあります。付け根、端部、交差部、穴の底、肉抜きの底まで確認します。

五つ目の解析ポイントは、成形性と使用時の荷重を重ねて評価することです。薄肉部が流動末端にあるのか、荷重経路上にあるのか、繰り返し変形を受けるのかによって重要度は変わります。必要に応じて詳細解析や試作評価を行い、製造と使用の両面から判断します。

肉厚不足を修正した後は、同じ条件で再解析し、別の薄肉部や厚肉部が発生していないかを確認します。さらに、組付け部品との干渉、工具の作業空間、配線経路、外観、金型構造への影響も確認し、変更理由と解析結果を記録します。

3D CADの肉厚解析は、樹脂部品の問題を自動的に解決する機能ではありません。しかし、設計条件を整理し、色分布、断面、内部構造、荷重、成形性を順番に確認すれば、目視だけでは見つけにくい肉厚不足を早い段階で発見できます。

既存設備や屋外の取付環境を含めて設計する場合は、現場の情報を3D CADへ反映することも重要です。LRTK Phoneによる位置や周辺形状の記録を活用し、設計データと現況を結び付けることで、樹脂部品の形状検討だけでなく、取付条件や改修範囲を含めた設計へつなげられます。

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