3D CADで設計業務を進めていると、取引先や別部署から受け取ったモデルを修正しなければならない場面があります。しかし、受け取ったデータには作成時のフィーチャー履歴や寸法拘束が含まれておらず、通常の方法では寸法を変更できないことがあります。
このような取込モデルの修正に役立つのが、3D CADのダイレクト編集です。ダイレクト編集では、押し出しや回転といった元の作成手順をさかのぼるのではなく、モデルを構成する面や形状を直接選択して移動、削除、置換します。履歴を持たないモデルでも、穴位置の変更、板厚の調整、ボスの移動、不要形状の削除などを進めやすくなります。
ただし、ダイレクト編集は面を直接動かせる反面、基準を決めずに作業すると、意図しない面まで変形したり、隣接する形状が破綻したりすることがあります。見た目では修正できていても、微小な隙間や不連続な面が残り、後工程の図面作成、解析、加工データ作成で問題になる可能性もあります。
本記事では、3D CADへ取り込んだモデルを安全に修正するための流れを6つのステップに分けて解説します。取込直後の検証から、面の移動、穴やフィレットの再構成、最終確認までを順番に進めることで、修正漏れや形状崩れを抑えやすくなります。
取込モデルのダイレクト編集が必要になる理由
3D CADのモデルは、すべてが同じ形式や同じ設計思想で作成されているわけではありません。社内で作成したネイティブデータであれば、押し出し、穴、フィレット、パターンといった履歴を編集し、寸法を変更できる場合があります。一方、別の3D CADから中間形式で書き出されたモデルには、形状を構成する面やソリッドだけが残り、元の履歴や寸法拘束が失われていることがあります。
履歴のない取込モデルを通常のフィーチャー編集だけで修正しようとすると、モデルを最初から作り直す必要が生じる場合があります。単純な部品なら再作成も選択肢になりますが、曲面や多数の穴、細かな段差を含む部品では、再モデリングに大きな手間がかかります。形状を再現できても、元モデルとのわずかな違いが発生し、組立時の干渉や加工寸法の不一致につながることもあります。
ダイレクト編集では、履歴の有無にかかわらず、現在存在している面を基準に修正できます。たとえば、平面を一定距離だけ移動して全長を変える、円筒面を移動して穴位置を変更する、不要な突起を削除して周囲の面を延長する、といった操作が可能です。元のモデルを活用しながら必要な箇所だけ変更できるため、再作成よりも効率的に進められることがあります。
また、ダイレクト編集は設計変更だけでなく、解析用モデルや加工用モデルの準備にも利用できます。解析に不要な小穴や刻印を削除したり、加工条件に合わせて角部の形状を単純化したりすることで、後工程で扱いやすいモデルに整えられます。
ただし、ダイレクト編集は万能ではありません。面のつながりが複雑な形状や、極端に小さな面を多数含むモデルでは、移動や削除が失敗することがあります。変更対象と周辺形状の関係を理解し、段階的に修正することが重要です。
作業前に確認したいデータ状態と修正方針
取込モデルを開いた直後に面を動かし始めるのは避けたほうが安全です。最初にモデルの状態を確認し、どの範囲をどの方法で修正するかを決める必要があります。
まず確認したいのは、取り込まれたデータがソリッドとして認識されているかどうかです。外観が立体に見えていても、実際には複数のサーフェスが並んでいるだけで、内部が閉じていない場合があります。ソリッドでなければ、体積、質量、重心、干渉などの検証が制限されることがあります。面の移動や穴の削除も、閉じたソリッドに対する操作とは異なる結果になる可能性があります。
次に、取込時の診断機能が利用できる場合は、欠損面、重複面、短いエッジ、面同士の隙間などを確認します。小さな不具合でも、ダイレクト編集によって周囲の面を延長したときに形状崩れの原因になることがあります。修復機能で自動的に直せる箇所と、手作業で面を作り直す必要がある箇所を分けておくと、後の作業が安定します。
修正方針については、変更後に何へ使用するモデルなのかを明確にします。組立確認だけに使うのか、製作図を作成するのか、解析へ利用するのか、加工データの基礎にするのかによって、求められる精度が変わります。外観確認だけなら細部の単純化が許容される場合がありますが、製造に使うなら穴径、面間距離、板厚、基準面などを厳密に管理する必要があります。
変更箇所が多い場合は、すべてをダイレクト編集で処理するより、必要な部分だけ再モデリングしたほうが安定することもあります。単純な寸法変更は面の移動、複雑な曲面は面の置換、規則性の高い穴列は作り直したフィーチャーで再配置するなど、形状に応じて方法を使い分けます。
作業前には元データを残し、修正用の複製ファイルを作成しておくことも重要です。変更途中で形状が崩れた場合や、異なる修正案を比較したい場合に、元の状態へ戻りやすくなります。保存先やファイル名には改訂内容が分かる情報を含め、どのモデルが受領時のデータで、どれが修正後のデータなのかを識別できるようにします。
ステップ1 取込形状と単位を検証する
最初のステップでは、取込モデルの形状、向き、寸法、単位を確認します。ここで誤りを見落とすと、正しく編集したつもりでも、完成モデル全体の大きさや方向が間違った状態になります。
単位の確認では、モデル内の代表寸法を測定します。全長、穴径、板厚など、図面や仕様書から判断しやすい寸法を選ぶと効率的です。たとえば、本来100ミリメートル程度の部品が数千ミリメートルとして表示されている場合は、取込時の単位解釈が合っていない可能性があります。
単位が誤っている場合、特定の面だけを直すのではなく、モデル全体の尺度を適切に変換する必要があります。全体尺度を修正した後で、もう一度代表寸法を測定し、想定した大きさになっているかを確認します。単位設定の表示だけを変更しても、実際のモデル寸法が変わらない場合があるため、設定変更と形状変換を混同しないことが大切です。
座標軸やモデルの向きも確認します。正面、上面、側面の認識が社内基準と異なると、図面化した際の投影方向や、組立モデルへ配置するときの基準が分かりにくくなります。必要に応じてモデル全体を回転させ、基準面と3D CADの標準平面を合わせます。
次に、形状診断を行います。ソリッドが閉じているか、複数のボディに分かれていないか、意図しない内部面が存在しないかを確認します。複数のボディで構成されている場合は、本来一体部品なのか、それとも複数部品が一つのファイルにまとめられているのかを判断します。
一体部品であるべきボディが分離している場合は、結合できる状態かを確認します。面同士が接しているように見えても、わずかな隙間があると結合に失敗することがあります。その場合は、隙間の位置を特定して面を延長するか、不足部分を補う必要があります。
また、モデルに極端に小さな面や短いエッジがないかも確認します。これらは元の3D CADでフィレットや面取りを作成した際に発生した可能性があります。小さな面が密集している部分を一度に移動すると、周囲の面を再計算できず、編集が失敗することがあります。事前に問題箇所を把握しておけば、単純化してから変更するなどの対策を取れます。
形状検証が終わったら、全長、全幅、全高、主要穴径、主要穴間距離、板厚などを記録します。修正前後の数値を比較できるようにしておくと、変更対象以外の寸法が意図せず変わっていないか確認しやすくなります。
ステップ2 修正対象を分離して基準を決める
取込モデルの状態を確認したら、次は修正対象を明確にします。ダイレクト編集で起きやすい失敗の一つは、どの面を動かすかだけを考え、どの面を固定するかを決めていないことです。
たとえば、部品の全長を10ミリメートル延長する場合、左右どちらの端面を移動するかによって、穴や段差の位置関係が変わります。中央を基準に両側へ5ミリメートルずつ延長する方法もあります。完成寸法が同じでも、基準面の選び方によって組立時の位置が異なるため、設計意図に合わせて判断する必要があります。
修正前には、図面の基準寸法や組立時の取付面を確認します。取付面、合わせ面、軸中心、穴中心など、変更後も位置を維持すべき要素を基準として扱います。基準が不明な場合は、周辺部品との関係から推定しますが、製造に使用するモデルでは関係者への確認が必要になることもあります。
修正対象がモデルの一部に集中している場合は、対象周辺を別ボディとして分離すると作業しやすくなることがあります。分割面を作成してボディを分け、修正後に再結合すれば、他の領域への影響を抑えられます。ただし、分割位置にフィレットや複雑な曲面があると、再結合時に不連続が生じる可能性があります。できるだけ単純な平面や円筒面を境界として選ぶことが重要です。
面を選択するときは、正接でつながった面や同じ形状グループが自動選択される設定にも注意します。便利な機能ですが、意図しない面まで選ばれることがあります。特にフィレット面が連続している場合、離れた位置まで選択範囲が広がる可能性があります。選択後はモデルを回転させ、裏側や内側の面が含まれていないかを確認します。
穴を移動する場合は、円筒面だけでなく、穴底、面取り、座ぐり、周辺のフィレットなども対象になることがあります。円筒面だけを動かすと、入口の面取りが元の位置に残る場合があります。穴を一つのまとまりとして認識し、関連する面を確認することが必要です。
修正対象には色や表示状態を設定し、固定する領域と区別しておくと、選択ミスを減らせます。複雑なモデルでは、一時的に不要なボディや面を非表示にし、編集対象だけを表示すると操作しやすくなります。
この段階で、変更内容を簡単な作業記録として残しておくことも有効です。どの基準から、どの面を、どの方向へ、どれだけ移動するのかを明確にしておけば、作業後の確認や第三者によるレビューがしやすくなります。
ステップ3 面の移動とオフセットで寸法を直す
修正対象と基準が決まったら、平面や円筒面を移動して寸法を変更します。ダイレクト編集の中心となる操作ですが、移動方向と周囲の面の延長方法を意識する必要があります。
平面を移動する場合は、面の法線方向へ移動する方法が基本です。端面を外側へ移動すれば部品を延長でき、内側へ移動すれば短縮できます。移動量は、現在値と目標値の差から計算します。全長を測定し、目標寸法との差をそのまま入力できる場合もありますが、基準となる反対側の面が固定されているかを確認します。
板厚を変更するときは、片側の面だけを移動するのか、中心面を維持して両側を移動するのかを決めます。片面基準の部品であれば、基準側を固定して反対側だけを動かします。中心基準の部品では、両面を同量ずつ反対方向へ移動することで、中心位置を維持できます。
面のオフセットは、形状全体の厚みを変える場合に利用できます。ただし、曲面を含む領域を大きくオフセットすると、面同士が交差したり、曲率半径より大きな移動によって形状を維持できなくなったりすることがあります。最初から大きな値を入力せず、小さな移動で結果を確認しながら進めると安全です。
円筒面を移動する場合は、穴径の変更と穴位置の変更を区別します。円筒面を半径方向へオフセットすると穴径が変わり、円筒軸を平行移動すると穴位置が変わります。似た操作に見えても、目的と結果が異なります。
穴径を拡大するときは、周囲の肉厚が十分に残るかを確認します。穴の近くに外周面や別の穴がある場合、径を大きくすると面同士が交差する可能性があります。編集が成功しても、製造上必要な最小肉厚を満たさない場合があるため、操作後に距離を測定します。
穴位置を変更するときは、円筒面と穴底をまとめて移動します。貫通穴の場合は両側の面取りも確認します。座ぐり穴や段付き穴では、複数の同軸円筒面をすべて選択しなければ、段差の一部だけが元位置に残ることがあります。
複数の穴を同時に動かす場合は、穴同士の間隔を維持したまま移動するのか、それぞれ個別に位置を変更するのかを明確にします。一定間隔で並んだ穴列なら、一つずつ動かすより、不要な穴を削除して規則的な配置として作り直したほうが管理しやすい場合があります。
面の移動後は、見た目だけでなく数値で確認します。変更した面間距離、穴径、穴中心位置を測定し、目標値と一致しているかを確認します。同時に、変更対象ではない周辺寸法も測定します。面の延長処理によって隣接面の形状が変わる可能性があるためです。
ステップ4 穴やボスなどの形状を再構成する
単純な面移動だけでは修正しにくい形状は、一度削除して再構成する方法が有効です。穴、ボス、リブ、溝、突起などは、周辺面との関係が複雑になるほど、無理に移動するより作り直したほうが安定します。
穴位置を大きく変更する場合、元の穴を直接移動すると、周囲のフィレットや座ぐり面の再計算に失敗することがあります。その場合は、元の穴を削除して周囲の平面を復元し、新しい位置に穴を作成します。履歴のない取込モデルであっても、修正後に追加する穴には寸法や位置拘束を設定できる場合があります。
元の穴を削除するときは、円筒面、穴底、面取り、座ぐり面など、穴を構成する面をすべて選択します。選択が不足すると、一部の面だけが残り、不自然な段差や細い面が生じます。削除後は周囲の平面が正しく延長され、穴が完全に埋まった状態になっているかを確認します。
ボスや突起も同様です。単純な円柱状のボスであれば移動できる場合がありますが、根元にフィレットがあると、移動時に周囲の面を再構成できないことがあります。先にフィレットを削除し、ボス本体を移動した後で、必要な丸みを作り直す方法が安定しやすくなります。
フィレットや面取りは、形状修正の前に一時的に削除することが有効です。これらは複数の面を滑らかにつなぐ補助形状であり、基礎となる平面や円筒面を移動すると、元の接続条件を維持できない場合があります。先に単純な形状へ戻し、主要寸法を変更してから再作成することで、編集エラーを減らせます。
リブの厚みを変更する場合は、両側面を同じ量だけ動かし、中心位置を維持するかどうかを判断します。片側だけを動かすと、隣接するボスや穴との位置関係が変わります。リブの端部が曲面へ接続している場合は、面の延長方向によって接続形状が変わるため、断面表示で確認します。
溝や切欠きの幅を変更するときも、片側基準か中心基準かを決めます。組立時に別部品がはまる形状であれば、相手部品とのすきまを含めて寸法を確認します。単に幅を広げるだけでは、入口の面取りや底部の丸みが不足する可能性があります。
再構成した形状には、可能な範囲で寸法や基準との関係を設定します。取込部分には履歴がなくても、追加した形状を管理可能なフィーチャーとして残しておけば、次回の設計変更に対応しやすくなります。すべてをダイレクト編集だけで完結させるのではなく、直接修正と履歴付き形状を組み合わせることが実務では効果的です。
ステップ5 面の削除と置換で複雑な部分を整える
複雑な段差、局所的な変形、不要な突起、壊れた曲面などは、面の削除や置換を使って整えます。面の移動では対応できない形状を修正する段階です。
面の削除には、削除した部分を周囲の面で自動的に埋める方法と、開いた状態のまま削除する方法があります。不要な小穴や突起を取り除く場合は、周囲の面を延長して閉じる方法が便利です。一方、面を新しく作り直す場合は、一度開いた状態にしてから補間面や延長面を配置することがあります。
自動修復を伴う面削除では、周囲の面がどの方向へ延長されるかを確認します。平面上の単純な穴なら自然に埋まりやすいですが、複数の曲面が交わる場所では、意図しない形状になることがあります。操作が成功したという表示だけで判断せず、断面や曲率の変化を確認します。
面の置換は、既存面を別の基準面や新しく作成した面へ合わせる操作です。たとえば、わずかに傾いた面を正しい平面へそろえる、変形した曲面を基準曲面へ置き換える、複数の段差を一つの面へ統合するといった修正に利用できます。
置換先の面は、対象範囲より十分に大きく作成します。置換先が小さいと、対象面の境界まで届かず、処理に失敗することがあります。平面で置換する場合は、基準となる位置と向きを寸法で管理します。曲面で置換する場合は、周囲の面と滑らかにつながるかを確認します。
曲面の修正では、位置の連続だけでなく、接線方向の連続も重要です。面同士がつながっていても、境界で急に傾きが変わると、外観品質や加工面の仕上がりに影響する可能性があります。意匠面や流体に接する面では、反射表示や断面曲線を使って不自然な折れがないか確認します。
微小面が多数存在する場合は、個別に移動するより、周辺をまとめて削除して一つの面へ置換したほうが形状を単純化できます。ただし、元モデルの微細な特徴が設計上必要な場合もあります。何を残し、何を省略するかは、モデルの利用目的に基づいて判断します。
解析用モデルでは、刻印、細い溝、小さな面取りなどを削除することで、形状を簡略化できる場合があります。これにより、計算用の分割が過度に細かくなることを防ぎやすくなります。ただし、応力集中や流れに影響する形状まで削除すると、解析結果の意味が変わる可能性があります。単純化の前には、対象形状が評価項目へ与える影響を検討します。
面を削除または置換した後は、ソリッドが閉じた状態を維持しているかを確認します。外観では分かりにくい微小な隙間が残ることがあるため、形状診断を再実行します。体積が計算できるか、ボディ数が意図せず増えていないかも確認します。
ステップ6 干渉や厚みを確認して完成データを保存する
修正操作が完了しても、すぐに完成データとして渡すのは避けます。最後のステップでは、形状の健全性、主要寸法、干渉、最小厚み、組立状態を確認します。
最初に、修正後の形状診断を実行します。開いたエッジ、自己交差する面、重複面、極端に短いエッジ、無効なボディなどがないかを確認します。診断結果に問題がある場合は、その箇所を拡大し、どの編集操作で発生したかを推定します。
次に、修正前に記録した代表寸法を再測定します。変更した寸法だけでなく、変更していない全長、穴間距離、基準面からの位置、板厚なども比較します。意図した変更量と測定結果が一致していることを確認し、周辺寸法が変化していないかを調べます。
最小厚みの確認も重要です。穴径の拡大、穴位置の移動、溝幅の変更などによって、局所的に肉厚が薄くなることがあります。外観では十分に見えても、曲面の内側やフィレット付近で厚みが不足する場合があります。厚み解析や断面測定を利用し、必要な領域を確認します。
組立モデルがある場合は、修正した部品へ置き換えて干渉を確認します。穴位置を変更しただけでも、ボルト、軸、配管、周辺部品との位置関係が変わります。静止状態で干渉がなくても、可動部品では動作範囲の途中で接触する可能性があります。必要に応じて複数の姿勢で確認します。
接触させるべき面については、意図しないすきまがないかを確認します。取込モデルでは面の精度差によって、見た目では接触していても微小な隙間が存在することがあります。組立基準面やシール面などでは、面間距離を数値で確認します。
修正後の質量や重心が重要な部品では、材料情報が正しく設定されているかを確認してから再計算します。取込時に材料情報が失われている場合、形状が正しくても質量は正しく計算できません。必要に応じて材料区分や密度を設定します。
図面を作成する場合は、修正後のモデルから投影図を更新し、寸法や注記との不一致がないかを確認します。既存図面を流用すると、モデル形状だけが変わり、古い寸法や注記が残る可能性があります。変更箇所だけでなく、関連する断面図や詳細図も見直します。
完成データを保存するときは、受領した元データを上書きせず、改訂番号や修正内容を識別できる名称にします。ネイティブ形式で保存する場合は、ダイレクト編集の履歴や追加フィーチャーが残るため、次回の修正に利用しやすくなります。中間形式で渡す場合は、書き出したデータを再度読み込み、形状が維持されているかを確認すると安全です。
修正内容を共有するときは、変更した寸法、削除した形状、再作成した穴、基準として固定した面などを記録します。完成モデルだけでは、どこをどのように変えたのか判断しにくいためです。変更前後の画像や測定結果を添えることで、レビュー担当者が確認しやすくなります。
ダイレクト編集の失敗を減らす実務上のポイント
ダイレクト編集を安定して行うには、一度に大きな変更を加えないことが重要です。複数の面移動、穴の削除、曲面の置換をまとめて実行すると、問題が起きたときに原因を特定しにくくなります。
基本となる進め方は、形状を単純化し、主要寸法を変更し、細部を再構成する順序です。フィレットや面取りを先に削除し、平面や円筒面を変更してから、最後に丸みや仕上げ形状を追加します。元の作成順序と完全に同じである必要はありませんが、基礎形状から細部へ進める考え方は有効です。
編集ごとにモデルを保存し、戻れる状態を作ることも大切です。特に複雑な取込モデルでは、一つの操作が成功しても、後の操作で形状が破綻することがあります。節目ごとに別名保存しておけば、すべてを最初からやり直す必要がありません。
面の選択は、表示方向を変えながら確認します。正面からは一つの面に見えても、実際には細い面で分割されていることがあります。透明表示や断面表示を使い、内側の面や裏側の面を含めて確認します。
自動選択機能に頼りすぎないことも重要です。同一半径の面、正接する面、連続する面をまとめて選択できる機能は便利ですが、モデル全体に同じ半径のフィレットが使われている場合、離れた場所まで選択されることがあります。選択数や強調表示を確認してから操作を確定します。
形状が複雑で編集に失敗する場合は、移動量を分割します。一度に大きく動かすと面の交差関係を解決できなくても、小さな移動を複数回に分けると成功する場合があります。ただし、分割操作によって余分な面が増えることもあるため、途中の形状を確認します。
それでも修正できない場合は、ダイレクト編集に固執せず、部分的な再モデリングへ切り替えます。対象領域を切り取り、断面形状を作成して押し出す、回転形状として作り直す、補助面を使って境界を再構成するなどの方法があります。
元モデルの精度が低い場合は、寸法を測定してもわずかなばらつきが生じることがあります。複数の平面が同一平面に見えても、実際には微小な段差がある場合があります。設計意図が明確なら、基準値へそろえて形状を整理することも検討します。ただし、独自判断で寸法を丸めるのではなく、図面や仕様書と照合することが必要です。
ダイレクト編集後のモデルを他部署へ渡す場合は、変更可能なデータと閲覧用データを分けて管理すると扱いやすくなります。編集用データには履歴や基準を残し、受け渡し用データは用途に合わせた形式で書き出します。どちらが正式な製造データなのかを明確にすることも重要です。
取込モデルを図面や現場データと照合する方法
取込モデルの修正では、3D CAD上の形状だけを見て判断すると、元の製品や現場の状態と差が生じることがあります。既存設備、改修部品、現物合わせの治具などを扱う場合は、図面や現場で取得したデータとの照合が重要です。
既存図面がある場合は、全長や穴径だけでなく、基準面からの寸法体系を確認します。図面上で同じ寸法値でも、基準が異なれば部品の位置関係が変わります。取込モデルの面を測定し、図面の基準寸法と一致しているかを確認します。
図面とモデルに差がある場合は、どちらを正とするかを決めなければなりません。図面が最新とは限らず、現物側で加工変更が行われている可能性もあります。反対に、取込モデルが設計途中の版で、図面のほうが新しい場合もあります。ファイルの更新日時だけで判断せず、改訂情報や変更履歴を確認します。
現物計測によって得られた点群や座標データがある場合は、取込モデルと重ねて差を確認できます。最初に基準面、基準穴、特徴点などを使って位置合わせを行い、その後に全体のずれを確認します。位置合わせに使った部分だけが一致していても、別の領域で大きな差が出る場合があります。
現場データには計測誤差やノイズが含まれるため、すべての点を3D CADモデルへ一致させる必要はありません。取付面、穴中心、外形、干渉に関係する領域など、設計上重要な部分を優先して評価します。局所的な凹凸をそのままモデル化すると、不要な微小面が増え、編集しにくいデータになる可能性があります。
現物に合わせてモデルを修正する場合は、設計値からの差を記録します。どの寸法を現物優先で変更し、どの寸法を設計値のまま維持したかを明確にします。これにより、次回の製作や追加改修で判断根拠を確認できます。
現場で形状や位置情報を取得し、3D CAD上の取込モデルと照合する運用を整えると、机上のデータだけでは把握しにくい差異を確認しやすくなります。LRTK Phoneを活用して取得した現場データと3D CADモデルを組み合わせることで、既存構造物との位置関係や修正対象の確認を進める方法も検討できます。
まとめ
3D CADのダイレクト編集は、履歴や寸法拘束を持たない取込モデルを修正するときに役立つ方法です。元の作成手順が分からないモデルでも、平面、円筒面、曲面などを直接操作することで、全長、板厚、穴径、穴位置、突起形状などを変更できます。
安全に作業を進めるには、最初に取込形状と単位を検証し、修正対象と固定する基準を明確にすることが重要です。その後、面の移動やオフセットで主要寸法を変更し、穴やボスなどの複雑な形状は必要に応じて削除して再構成します。面の移動だけで対応できない部分は、面の削除や置換を使って整えます。
編集後は、形状診断、主要寸法、最小厚み、干渉、組立状態を確認します。操作が成功したことと、設計として正しいことは同じではありません。変更対象以外の寸法が変わっていないか、周辺部品との関係が維持されているかまで確認する必要があります。
複雑な取込モデルでは、一度に完成させようとせず、形状の単純化、主要寸法の変更、細部の再作成という順序で進めると安定しやすくなります。ダイレクト編集だけで解決しにくい部分は、部分的な再モデリングと組み合わせることも有効です。
さらに、既存設備や現物部品を対象とする場合は、図面や現場計測データとの照合が欠かせません。3D CAD上のモデルを基準情報として整理し、LRTK Phoneで取得した現場データと組み合わせることで、取込モデルの修正箇所や実際の配置状態を確認する業務へつなげられます。