3D CADの機構シミュレーションで動作不良が起こる理由
3D CADの機構シミュレーションは、設計した部品を仮想的に組み立て、実際に製作する前に動作を確認するための機能です。回転軸、リンク、スライダ、開閉扉、昇降部、搬送機構などをモデル上で動かすことで、可動範囲や部品同士の干渉、ストローク不足、停止位置のずれなどを確認できます。
しかし、アセンブリの形状が正しく見えていても、機構シミュレーションを実行すると部品が動かないことがあります。ほかにも、一部の部品だけが急に飛び出す、想定とは反対方向へ回転する、途中で計算が停止する、部品同士がすり抜けるといった動作不良が発生します。
これらの問題は、3D CADの計算機能そのものではなく、モデルに与えた条件の組み合わせによって起こることが少なくありません。機構シミュレーションでは、どの部品を固定するか、部品間にどのような動きを許すか、どの部品へ駆動入力を与えるかを設計者が定義します。その条件に不足や重複があると、計算側が部品の位置や動きを一意に決められなくなります。
たとえば、回転させたい軸に回転を禁止する拘束が残っていれば、回転速度を入力しても動きません。反対に、軸方向の移動を止める条件が不足していれば、軸が回転するだけでなく、軸方向へ抜けるように移動することがあります。
部品同士の接触を使う機構では、さらに条件が複雑になります。接触対象が設定されていなければ部品がすり抜け、解析開始時点で形状が重なっていれば、重なりを解消するために部品が急激に移動することがあります。
動作不良を直すには、設定を手当たり次第に追加するのではなく、原因を順番に切り分けることが重要です。基本となる確認項目は、固定部品と拘束条件、自由度、接触条件、駆動条件、質量特性の5つです。この順番で確認すると、複雑な機構でも問題の範囲を絞り込みやすくなります。
機構シミュレーションを直す前に確認すること
機構シミュレーションを修正する前に、まず解析の目的を明確にします。単純な可動範囲を見たいのか、部品同士の接触を確認したいのか、重力や慣性を含む動的な挙動を検討したいのかによって、必要な設定が異なるためです。
可動範囲だけを確認する場合は、部品間の拘束と変位または回転角度の入力だけで十分なことがあります。この段階で摩擦、重力、ばね、外力、細かな接触条件まで追加すると、動作不良が起きた際に原因を特定しにくくなります。
一方、駆動力、加減速、衝突、振動などを確認する場合は、部品の質量や重心位置、慣性、時間変化を考慮する必要があります。ただし、動的な条件を設定する場合も、最初に幾何学的な動作が成立していることを確認しなければなりません。
機構を構成する部品は、固定部品、駆動部品、従動部品に分けて整理すると分かりやすくなります。固定部品はフレームや筐体など、装置全体の基準となる部品です。駆動部品は回転や直線移動を直接与える軸やスライダです。従動部品は、リンクや接触を通して駆動部品の動きを受ける部品です。
次に、各部品が実際にはどの方向へ動くのかを整理します。回転軸であれば中心軸周りの回転だけを許し、軸方向の移動や傾きを止めます。スライダであれば案内方向の移動だけを許し、それ以外の移動と回転を止めます。
3D CAD上の見た目だけで判断せず、現実の支持方法を考えることが大切です。実機では軸受やガイドによって動きが制限されていても、3D CAD上ではその関係を拘束やジョイントとして明示しなければ、自由に動く部品として扱われることがあります。
形状モデルの状態も確認します。同心になるはずの円筒面がわずかに傾いている、平行になるはずの軸がずれている、接触面に微小な段差があるといった問題は、機構シミュレーションの不安定要因になります。別形式から取り込んだモデルや簡略化したモデルでは、面や軸の認識状態が変わることもあるため注意が必要です。
修正作業を始める前には、元のアセンブリを複製しておくことも重要です。原因調査の過程では拘束を削除したり、部品位置を変更したりするため、元の設計状態を残しておけば比較や復元が容易になります。
確認1 固定部品と拘束条件を見直す
機構シミュレーションで最初に確認したいのが、固定部品と拘束条件です。装置の基準となる部品が固定されていないと、駆動入力を与えたときに機構全体が動いてしまうことがあります。
たとえば、筐体に支持された回転軸を動かす場合、筐体が固定されていなければ、軸だけでなく筐体側も反対方向へ回転する可能性があります。計算上は力の関係が成立していても、確認したい実機の動作とは異なる結果になります。
反対に、固定する範囲が広すぎる場合も動作不良につながります。駆動対象や従動部品まで固定されていれば、どれだけ駆動条件を与えても動きません。部品全体の固定だけでなく、面、軸、基準座標などに設定された固定条件も確認します。
拘束の重複にも注意が必要です。同じ部品間に複数の拘束が設定され、同じ自由度を繰り返し制限すると、過拘束になることがあります。過拘束があると、警告が表示されるだけでなく、解析開始時に部品位置がずれたり、計算が途中で止まったりする場合があります。
回転部では、軸を一致させる条件と端面位置を決める条件が必要になります。ただし、回転させたい部品の向きや位置を必要以上に固定すると、回転自由度まで失われます。回転軸の中心を合わせたあと、どの条件が位置決めに必要で、どの条件が重複しているかを整理します。
スライド部でも同様です。案内方向を決める条件に加え、部品がガイドから外れないように姿勢を制限する必要があります。しかし、移動方向の距離まで固定すると、スライドさせたい自由度がなくなります。
問題を修正するときは、拘束を追加するより、一度最小構成へ戻すほうが効果的です。基準となる部品を一つだけ固定し、回転部、スライド部、リンク部の順に拘束を設定します。拘束を一つ追加するたびに、部品を手動で動かし、設計意図どおりの動きが残っているか確認します。
通常のアセンブリ配置に使う拘束と、機構シミュレーション用の条件が併存している場合も注意が必要です。組立状態を完全に固定するための拘束が、シミュレーション時には動きを妨げることがあります。解析用にモデルを複製し、機構確認に不要な拘束を抑制すると原因を切り分けやすくなります。
部品階層も確認します。サブアセンブリとして登録された機構が一つの剛体として扱われている場合、内部の部品に拘束を設定していても、上位アセンブリでは動かないことがあります。内部部品の動きを有効にする設定があるか、サブアセンブリ全体が固定されていないかを確認します。
確認2 必要な自由度が残っているか確認する
自由度とは、部品が独立して移動または回転できる方向の数です。空間内で拘束されていない部品は、一般に三方向の直線移動と三軸周りの回転が可能です。機構を成立させるためには、不要な自由度を制限し、必要な自由度だけを残します。
回転機構であれば、一つの軸周りの回転自由度を残します。直線案内であれば、一方向の移動自由度だけを残します。リンクの接続部では、接続軸周りの回転を許しながら、軸中心の位置関係を維持します。
部品がまったく動かない場合は、必要な自由度まで拘束されている可能性があります。駆動条件を設定した方向と、部品に残っている自由度が一致していなければ、入力しても動作しません。
一方、部品が予想外の方向へ移動する場合は、不要な自由度が残っています。軸受の中に配置された回転軸が、回転だけでなく軸方向へ移動する場合は、端面位置や軸方向の拘束が不足していると考えられます。
自由度を確認する簡単な方法は、解析前に部品を手動で動かすことです。回転部が軸周りにだけ動くか、スライダが案内方向にだけ移動するかを確認します。複数方向へ動く場合は拘束不足で、まったく動かない場合は固定または過拘束を疑います。
ただし、リンク機構や閉ループ機構では、部品を一つだけ見ても自由度を判断しにくいことがあります。一つの部品には動く余地があっても、周囲のリンクを接続すると動けなくなる場合があります。
このようなときは、一時的に一つの接続を解除し、閉じた機構を開いた状態にします。各部品が意図した方向へ動くことを確認したあと、最後の接続を戻します。最後の接続を追加した時点で動かなくなる場合は、その接続付近に過拘束や形状の不整合がある可能性が高くなります。
機構の初期姿勢にも注意します。リンクが一直線に並ぶ位置や、複数の軸が重なる位置では、動作方向を一意に決めにくくなることがあります。わずかな入力や計算誤差によって、意図しない方向へ折れたり、解析が進まなくなったりする可能性があります。
初期姿勢が原因と考えられる場合は、開始角度を少し変更します。完全に伸び切った状態や上下が対称になる姿勢を避け、動作方向が分かる位置から解析を始めます。
可動範囲の上限と下限も確認します。回転角度や移動距離に制限を設定している場合、初期位置がすでに上限または下限に達していれば、その方向には動けません。入力方向と可動範囲の設定が矛盾していないかを確認します。
確認3 接触条件と初期干渉を確認する
接触条件は、部品同士が触れたときの関係を定義します。接触条件がない場合、3D CAD上で形状が重なっても、部品同士がそのまますり抜けることがあります。
カム、ストッパー、搬送物、ローラーなど、形状同士の接触によって動きが伝わる機構では、接触対象となる部品や面を正しく指定する必要があります。接触対象の選択が不足していると、駆動部品だけが動き、従動部品へ力が伝わりません。
反対に、すべての部品を接触対象にすると計算負荷が増えます。ボルト、座金、細かな面取り、ねじ形状、小さな凹凸まで接触判定に含めると、接触点が増え、解析が不安定になることがあります。
機構の動作に必要な接触だけを選び、動きに影響しない部品は対象から外します。可動範囲を確認するだけなら、細かな締結部品を省略した解析用モデルを作る方法も有効です。
解析開始時点の初期干渉も重要です。接触対象となる部品同士が重なった状態で解析を開始すると、計算側は重なりを解消しようとします。その結果、部品が急激に飛び出したり、意図しない方向へ移動したりすることがあります。
初期干渉は、目視だけでは見つけにくい場合があります。接触面の間にわずかな食い込みがあるだけでも、解析条件によっては大きな反力が発生します。機構シミュレーションを実行する前に、静止状態で干渉検査を行います。
圧入部、シール、ねじ山など、設計上は意図的に重なっている部分がある場合は、解析用モデルで簡略化する必要があります。機構の動きに関係しない重なりを残すと、不要な接触反力が生じるためです。
接触面の形状にも注意します。カムやレールの表面に小さな段差や不連続な面があると、接触点が切り替わるたびに従動部品が跳ねることがあります。設計用モデルでは問題にならない面分割でも、接触計算では挙動に影響する場合があります。
このような場合は、接触に使う面を滑らかな解析用形状へ置き換えます。細かな穴や溝、面取りなど、運動に影響しない形状を省略することで、接触判定を安定させやすくなります。
摩擦条件を設定している場合は、まず摩擦を無効にして動作を確認します。摩擦が大きすぎると、部品が固着したように動かなくなることがあります。摩擦を無効にすると正常に動く場合は、摩擦条件または接触面の押し付け状態を見直します。
ストッパーによる停止位置を確認したい場合、形状接触を使う方法と、移動量や回転角度の上限を設定する方法があります。単純な可動範囲確認では上限値を使うほうが安定しやすく、実際の衝突挙動を確認する場合は接触条件を使う必要があります。
目的に応じて方法を使い分けることで、必要以上に複雑な接触計算を避けられます。
確認4 駆動条件と時間設定を確認する
駆動条件は、機構を動かすための入力です。回転角度、回転速度、直線変位、移動速度、力、トルクなどを設定します。動作不良がある場合は、入力の種類、方向、単位、対象部品、時間範囲を確認します。
最初に確認したいのが入力方向です。回転軸の正方向と設計者が想定する回転方向が一致していなければ、部品は反対方向へ動きます。表示される矢印だけで判断せず、基準軸や座標系の向きを確認します。
直線移動でも同様です。スライダの移動方向を定義した軸が反対向きになっていれば、正の変位を入力しても想定とは逆へ動きます。必要に応じて入力値の符号を変えるのではなく、基準方向そのものが設計ルールと一致しているか確認します。
単位の違いも動作不良の原因になります。回転角度、回転速度、移動距離、時間などが、想定とは異なる単位で解釈されると、極端に速い動作やほとんど動かない結果になります。
外部から取り込んだモデルでは、長さの単位が変換されている場合があります。形状の大きさが正しく見えていても、解析条件の入力欄がどの単位を使うかは別に確認する必要があります。
同じ自由度に複数の駆動条件が設定されていないかも確認します。たとえば、一つの回転軸に回転角度と回転速度を同時に設定し、その内容が一致していなければ、解析側が両方の条件を満たせません。
一つの自由度に対する直接入力は、原則として一つに絞ります。ほかの部品は拘束、リンク関係、接触などを通じて従動させます。
複数の駆動軸を持つ機構では、入力の同期にも注意が必要です。二つの駆動部品が同じ部品を異なる位置へ動かそうとすると、機構内で矛盾が発生します。入力開始時刻、終了時刻、速度、位相が設計意図と合っているか確認します。
時間刻みも解析結果へ影響します。高速で回転する部品や短時間で接触状態が変わる機構に対して時間刻みが粗すぎると、接触する瞬間を計算できず、部品が相手をすり抜けたような結果になることがあります。
一方、時間刻みを細かくしすぎると、計算量が増えるだけでなく、微小な形状差や設定の矛盾が結果に現れやすくなります。最初は短い解析時間と適度な時間刻みで基本動作を確認し、その後に必要な精度へ調整します。
入力値の立ち上がり方も重要です。停止状態から瞬間的に最大速度へ切り替える条件は、非常に大きな加速度を与えることになります。動的な解析では、開始直後に大きな慣性力が発生し、部品が跳ねたり計算が不安定になったりします。
実機の駆動を想定し、速度や変位が段階的に増加する入力にすると安定しやすくなります。可動範囲だけを確認する場合でも、開始直後の急激な変化を避けることで、不自然な挙動を減らせます。
確認5 質量特性と解析条件を確認する
部品の位置関係だけを確認する解析では、質量や慣性が結果へ大きく影響しない場合があります。しかし、重力、慣性、衝突、駆動力、反力などを扱う場合は、質量特性の設定が重要です。
部品に材料や密度が設定されていなければ、質量が未定義になったり、仮の値が使われたりすることがあります。質量が極端に小さい部品と大きい部品が混在すると、接触時の挙動が不自然になる可能性があります。
材料を設定していても、3D CADモデルの形状が実物と異なれば質量特性は一致しません。中空部品を中実形状で作っている、内部部品を省略している、簡略化によって肉厚が変わっている場合は、計算された質量や重心位置をそのまま実物の値として扱えません。
必要に応じて、質量、重心、慣性などを設計値や実測値に合わせます。ただし、根拠のない細かな数値を入力すると、結果だけが精密に見え、判断を誤る可能性があります。入力条件の根拠や想定範囲を記録することが重要です。
重力方向も確認します。3D CADのモデル座標と実際の設置方向が一致していない場合、重力を有効にすると部品が横方向へ落下するような挙動になることがあります。
装置を設置する姿勢とモデルの上下方向を確認し、重力の方向を設定します。傾斜した設備や可動台に取り付ける機構では、どの座標系を基準としているかを明確にします。
ばねや減衰を設定する場合は、その接続位置と方向を確認します。ばねが想定とは異なる点へ接続されていると、部品を横方向へ引っ張ったり、回転させたりすることがあります。
減衰が小さすぎると、機構が長時間振動することがあります。反対に大きすぎると、動きが極端に鈍くなります。最初はばねや減衰を無効にして基本動作を確認し、必要な条件を段階的に追加します。
解析方式が目的に合っているかも重要です。部品を剛体として扱う機構シミュレーションでは、部品自体のたわみや局所変形を十分に評価できません。機構上は干渉せずに動いていても、実機では荷重による変形によって接触する可能性があります。
反対に、剛体モデル上でわずかな干渉があっても、実物では組立隙間や弾性変形によって問題にならない場合があります。機構シミュレーションの結果だけで最終判断せず、解析の前提と実物との差を考慮します。
大きな荷重が作用する機構や、細長い部品が動く機構では、必要に応じて変形を扱う検討へつなげます。機構シミュレーションは、可動範囲や運動関係を確認する手段として位置付け、評価対象を明確にすることが大切です。
動かない原因を効率よく切り分ける手順
機構が動かないときは、すべての設定を同時に変更してはいけません。複数の条件を一度に変えると、どの修正が効果を持ったのか分からなくなります。
最初に、元のモデルを複製し、修正前の状態を残します。次に、接触、摩擦、重力、ばね、外力などの追加条件を一時的に無効にします。
固定部品、基本的な拘束、単一の駆動条件だけを残し、最小構成で動作を確認します。この状態でも動かなければ、固定部品、拘束、自由度のいずれかに原因がある可能性が高くなります。
駆動部品を手動で動かし、必要な方向へ移動または回転できるかを確認します。手動でも動かなければ、過拘束や固定状態を見直します。手動では動くのにシミュレーションでは動かない場合は、駆動条件の対象、方向、単位、時間設定を確認します。
基本動作が確認できたら、接触条件を一組ずつ戻します。複数の接触をまとめて有効にすると、どの組み合わせで問題が発生したか分かりません。
接触を追加するたびに短時間の解析を実行し、動作が変化していないか確認します。特定の接触を有効にした直後に停止する場合は、初期干渉、接触対象、面形状、摩擦などを調べます。
次に、重力やばねなどを一つずつ追加します。重力を有効にした途端に部品が落下する場合は、上下方向の拘束不足が考えられます。ばねを有効にした直後に反対方向へ動く場合は、接続点や初期長さを確認します。
最後に解析時間を延ばし、時間刻みを調整します。短時間では正常でも、可動端や特定の姿勢へ到達した時点で停止することがあります。
解析が止まった時刻と、その直前の部品姿勢を記録します。停止直前に接触が始まったのか、リンクが伸び切ったのか、可動範囲の上限へ達したのかを確認すると原因を特定しやすくなります。
この切り分けでは、条件を減らして基本動作を確認し、一つずつ戻すことが重要です。動かないからといって拘束や力を追加し続けると、過拘束や条件の矛盾が増え、原因がさらに見えにくくなります。
閉ループ機構で動作不良が起きる場合の対処
四節リンク、平行リンク、クランク機構など、部品が閉じた輪を構成する機構では、拘束条件が複雑になります。各接続が単独では正しくても、機構全体を閉じたときに過拘束になる場合があります。
たとえば、四つのリンクを回転接続でつなぐ場合、各回転軸の位置や向きが整合している必要があります。軸がわずかに傾いていたり、リンク長が合っていなかったりすると、剛体として輪を閉じることができません。
3D CADの組立画面では許容範囲内に収まっているように見えても、機構シミュレーションでは矛盾として扱われる場合があります。円筒面だけでなく、基準軸や寸法を使って接続位置を確認します。
閉ループ機構を修正するときは、最後の接続を一時的に解除します。開いた状態で各リンクを動かし、すべての接続部が設計意図どおりに回転するか確認します。
その後、最後のリンクが無理なく接続位置へ到達するかを確認します。接続を追加した瞬間に部品位置が変化する場合は、リンク長、軸位置、既存拘束のいずれかに不整合がある可能性があります。
閉ループ機構には、複数の組立姿勢が存在することもあります。同じリンク長でも、上側へ折れる姿勢と下側へ折れる姿勢が成立する場合があります。
解析開始位置によっては、設計者が想定していない姿勢へ移ることがあります。初期姿勢を明確にし、必要に応じて開始角度を調整します。
ただし、姿勢を決めるための補助拘束を追加した場合は、動作開始時に無効化されているか確認します。補助拘束が残ったままでは、機構本来の動きを妨げます。
歯車やプーリーなどの回転関係を確認する場合は、必ずしも細かな形状接触を使う必要はありません。回転比や同期関係だけを確認する目的であれば、比率による関係を使うほうが安定することがあります。
実際の歯面接触や隙間を検討する場合は、詳細形状を使った別の解析モデルを用意します。可動範囲、回転比、接触状態を一つのモデルだけで同時に確認しようとすると、条件が複雑になりすぎます。
動くものの挙動が不自然な場合の確認
機構が最後まで動けば、シミュレーションが正しいとは限りません。動作が速すぎる、途中で急に方向が変わる、部品が振動する、軌跡が滑らかでないといった場合は、設定を再確認します。
まず、駆動入力の時間変化を確認します。速度や変位が区間の境界で急に変化すると、加速度や反力も急変します。入力曲線を滑らかにつなぎ、開始時と終了時の条件を見直します。
接触する機構では、接触面の形状も確認します。カムやレールに小さな段差があると、従動部品がその段差を通過するたびに跳ねることがあります。
設計モデルに細かな面分割が含まれている場合は、解析用の滑らかな形状へ置き換えます。接触点の移動が連続になるように面を整理すると、挙動が安定しやすくなります。
軌跡が想定と異なる場合は、どの点を評価しているか確認します。部品の重心、穴中心、先端、基準点など、評価点の位置によって軌跡は変わります。
設計上確認したい点と、結果表示に使っている点を一致させます。回転部品では、中心から離れた点ほど大きな円弧を描くため、評価点を取り違えると結果を誤解しやすくなります。
変位や速度の符号が途中で変わる場合は、座標系も確認します。全体座標系で評価する場合と、動く部品に固定された局所座標系で評価する場合では、同じ動作でも表示される成分が異なります。
部品が細かく振動する場合は、摩擦、減衰、時間刻みの影響を調べます。摩擦を無効にすると振動が消える場合は、摩擦条件や押し付け力が原因として考えられます。
時間刻みを変えたときに結果が大きく変化する場合は、解析が十分に安定していない可能性があります。時間刻みを段階的に変更し、主要な結果が大きく変わらなくなる範囲を確認します。
アニメーションの再生速度にも注意します。解析結果を高速で再生すると、わずかな動きが大きく跳ねて見える場合があります。見た目だけで判断せず、変位、回転角度、速度、停止位置、最小隙間などの数値も確認します。
機構シミュレーションを安定させるモデル作成ルール
動作不良を減らすには、解析時の修正だけでなく、3D CADモデルを作る段階から機構を意識する必要があります。
回転部品には中心軸、スライド部品には移動方向を示す基準軸や基準面を作成します。形状面だけに依存して拘束を設定すると、設計変更によって参照面が変わり、機構条件が壊れる可能性があります。
基準形状を使って拘束すれば、面取りや穴寸法を変更しても運動軸を維持しやすくなります。特に、複数の設計者がモデルを編集する場合は、どの基準を機構条件に使うか統一することが重要です。
装置全体の固定部品も明確にします。最上位に基準フレームや筐体を配置し、それを固定したうえで各機構を構成すると、アセンブリ全体が不用意に動く問題を防ぎやすくなります。
拘束やジョイントには、役割が分かる名称を付けます。回転軸、スライド方向、可動範囲、駆動側、従動側などが分かる名称にすると、動作不良が起きたときに確認しやすくなります。
解析用モデルと製造用モデルを分ける方法も有効です。製造用モデルには、ねじ形状、面取り、溝、細かな穴などが必要でも、機構シミュレーションでは不要な場合があります。
解析用モデルでは、運動に影響しない細部を省略し、基準軸や接触面を分かりやすくします。ただし、簡略化によって外形、質量、重心、接触位置が変わらないように注意します。
可動範囲の上限と下限も設計値として管理します。回転角度、ストローク、停止位置、最小隙間などを数値で定義しておけば、シミュレーション結果と比較できます。
アニメーションを見て問題がなさそうと判断するだけでは、わずかなストローク不足や干渉を見落とす可能性があります。確認対象となる数値と判定基準を事前に決めることが重要です。
設計変更後は、エラーが表示されていなくても再検証します。拘束が維持されていても、参照先の面や軸が変更され、以前とは異なる位置関係になっている可能性があります。
重要な回転軸、接触面、可動端、停止位置については、設計変更後に再確認する運用を整えます。解析条件の変更履歴も残しておけば、結果が変わった理由を追跡しやすくなります。
3D CADと現場計測データを組み合わせる方法
機構シミュレーションは3D CADモデル内の条件を使って実行しますが、既設設備の改修や現地設置では、周辺環境の形状も重要です。
設計モデル上で正常に動いていても、現場にある配管、架台、壁、基礎、周辺設備などが設計時の想定と異なれば、設置後に干渉する可能性があります。
既設設備では、過去の図面と現況が一致していない場合があります。改修対象だけでなく、その周囲の障害物や作業空間も確認し、必要に応じて現況を計測します。
現場計測データを3D CADへ取り込む場合は、座標系、単位、基準位置を統一します。現況形状が正しく取得されていても、設計モデルとの位置合わせがずれていれば、干渉確認には使えません。
点群や座標データには、遮蔽、反射、不要物、計測誤差などが含まれる場合があります。取得したデータをそのまま接触形状として使用するのではなく、解析目的に合わせて必要な面や基準位置を整理します。
3D CADの機構シミュレーションで可動範囲を確認し、現場計測データと重ねて周辺物との隙間を確認すれば、設置後の干渉リスクを減らすための判断材料になります。
ただし、計測精度、施工誤差、組立公差、部品のたわみなども考慮する必要があります。シミュレーション上で隙間があるからといって、その数値を実機で保証される余裕として扱うことはできません。
屋外設備や構造物の位置を把握し、現況情報を3D CADによる設計検討へつなげる場合は、必要な精度、計測範囲、座標管理、データ形式を事前に整理します。
現場で取得した位置情報を設計や干渉確認に活用する方法を検討する際には、LRTK Phoneを用いた計測も選択肢の一つになります。設計モデルと現況を同じ基準で扱えるようにすることで、机上の機構確認を現場条件の検討へ広げられます。
まとめ
3D CADの機構シミュレーションで動作不良が起きたときは、固定部品と拘束条件、必要な自由度、接触条件、駆動条件、質量特性という5つの項目を順番に確認することが重要です。
部品がまったく動かない場合は、固定範囲や過拘束を疑います。意図しない方向へ移動する場合は、不要な自由度や駆動軸の方向を確認します。部品がすり抜ける場合は接触条件を、解析開始直後に飛び出す場合は初期干渉や急激な入力を見直します。
複雑な機構では、接触、摩擦、重力、ばね、外力などを一時的に無効にし、最小構成から確認します。基本動作が成立したあとに条件を一つずつ戻すことで、問題を引き起こしている設定を特定しやすくなります。
閉ループ機構では、一つの接続を解除して開いた状態で確認する方法が有効です。最後の接続を追加した時点で動かなくなる場合は、軸位置、リンク長、拘束条件の不整合を調べます。
機構が動作しても、アニメーションの見た目だけで正常と判断してはいけません。変位、回転角度、ストローク、停止位置、最小隙間などを数値で確認し、設計条件と比較します。
また、機構シミュレーションの結果は、入力した形状と条件に基づくものです。部品の変形、組立公差、施工誤差、現場周辺の状況などは、解析の前提に応じて別途考慮する必要があります。
既設設備への設置や現地での干渉確認まで行う場合は、3D CAD内の設計情報だけでなく、現況の位置や形状を把握することも大切です。機構シミュレーションと現場計測を組み合わせ、設計と実際の設置条件をつなぐ方法として、LRTK Phoneの活用を検討してみてください。