LRTKレフィクシア株式会社

3D CADで複雑な形状を簡略化して解析時間を減らす6手順

3D CAD解析で形状の簡略化が必要な理由

3D CADで作成された設計モデルには、製造、組立、干渉確認、図面作成などに必要な形状情報が細かく含まれています。穴、ねじ、溝、面取り、丸み、刻印、微小な段差などは、製品を正しく設計するうえで重要です。しかし、設計に必要な形状が、そのまま解析にも必要とは限りません。

設計モデルを詳細なまま解析へ使用すると、解析の目的にほとんど影響しない部分にも細かなメッシュが作成されます。特に小さな面や短い辺、狭いすき間、曲率の大きい曲面が存在すると、その形状を表現するために局所的な要素寸法を小さくしなければなりません。

一部の微小形状に合わせてモデル全体の要素が細かくなると、要素数と節点数は急激に増加します。要素数が増えるほど、メッシュ生成、方程式の計算、結果の保存、結果表示に必要な時間も長くなります。使用する解析方法によっては、計算に必要なメモリが不足し、解析を開始できないこともあります。

流体解析でも同様です。流路内に細かな溝、突起、狭いすき間があると、その周辺に小さな計算セルが作成されます。非定常解析では、最小セルの大きさによって時間刻みが制限される場合があり、わずかな細部形状が計算時間全体を大きく延ばす原因になります。

複雑な接触を含む構造解析では、形状の細かさだけでなく、接触面の数も計算時間に影響します。締結部品や内部部品をすべて実形状で残すと、多数の接触判定が必要です。接触状態が変化する非線形解析では、反復計算の回数が増え、収束しにくくなる可能性もあります。

こうした問題を避けるために必要なのが、解析目的に合わせた形状の簡略化です。ここでいう簡略化とは、単に形状を削除することではありません。必要な剛性、質量、荷重経路、熱伝導経路、流路特性などを維持しながら、計算結果への影響が小さい情報を整理する作業です。

設計用の3D CADモデルは、製品形状をできるだけ正確に表現することを目的としています。一方、解析モデルは、確認したい物理現象を必要な精度で表現することを目的としています。目的が異なるため、両者の形状が完全に同じである必要はありません。

適切に簡略化された解析モデルは、計算時間を減らすだけでなく、メッシュ品質を安定させ、条件設定の漏れを減らす効果も期待できます。結果分布が見やすくなり、原因と結果の関係を説明しやすくなる点も利点です。

ただし、重要な形状まで取り除くと、短時間で計算できても信頼性の低い結果になります。形状簡略化では、何を削除するか以上に、なぜ削除できるのかを説明できることが重要です。

形状を簡略化する前に決めておく基本方針

形状の簡略化を始める前に、設計用モデルと解析用モデルを分けて管理します。元の3D CADデータを直接変更すると、設計形状との比較が難しくなり、削除した形状を復元できなくなるおそれがあります。

解析専用のコピーを作成し、元モデルの版、作成日、解析目的、簡略化の内容を記録します。簡略化した理由も残しておけば、別の担当者がモデルを使用するときに判断根拠を確認できます。解析結果だけを保存するのではなく、どの形状をどのような考え方で変更したかを追跡できる状態にします。

次に、簡略化の基準を寸法だけで決めないことが重要です。例えば、直径が小さい穴であっても、穴の周辺に生じる応力を評価するなら削除できません。反対に、比較的大きな形状でも、評価領域から離れており、荷重や流れへの影響が小さければ簡略化できる場合があります。

形状の大きさだけでなく、解析目的、荷重位置、拘束位置、接触状態、材料、評価箇所との関係を含めて判断します。特に荷重を受ける面、部品を支持する面、部品同士が接触する面は、簡略化による影響を受けやすい部分です。

簡略化は一度に大きく進めず、段階的に行うことも大切です。まず文字や刻印などの明らかに不要な形状を除去し、次に小穴や微小な丸みを整理します。その後、薄板の面化、棒状部品の線化、接触条件の置き換え、対称モデル化へ進みます。

段階ごとにデータを保存しておけば、解析結果に大きな差が生じた際に、どの変更が原因だったのかを特定しやすくなります。すべての簡略化を一度に実施すると、結果が変化した原因を切り分けることが難しくなります。

また、形状を削除した場合には、その形状が持っていた機能を別の方法で表現する必要があります。部品を削除すれば、その部品の質量、剛性、支持、熱伝導、流体抵抗なども失われます。必要に応じて集中質量、ばね、結合条件、熱抵抗、圧力損失などへ置き換えます。

解析モデルの簡略化は、形状修正だけで完結する作業ではありません。材料、荷重、拘束、接触、メッシュ、評価方法を含めて、解析全体を組み立て直す作業として進めることが重要です。

手順1 解析目的と必要な精度を明確にする

最初の手順は、解析によって何を確認したいのかを具体的に定義することです。形状を残すか削除するかの判断は、解析目的によって変わります。

例えば、装置全体の変形量を確認する解析では、全体剛性と荷重伝達経路が重要です。この場合、微小な面取り、刻印、細い溝などは結果への影響が小さく、省略できる可能性があります。

一方、穴の縁や段差部分の最大応力を確認する場合は、対象周辺の形状を正確に残す必要があります。全体変形では無視できる小さな丸みでも、局所応力には大きな影響を与えることがあります。

「応力を確認する」という目的だけでは、簡略化の基準を決めるには不十分です。どの部品の、どの領域に生じる、どの荷重条件での応力を確認するのかまで整理します。変位を評価する場合も、装置全体のたわみなのか、部品間の相対変位なのかによって必要な形状が変わります。

解析目的を明確にしたら、結果の評価指標を決めます。最大応力、代表点の変位、反力、固有振動数、最高温度、流量、圧力差など、判断に使用する数値を定めます。評価指標が明確であれば、簡略化前後の比較もしやすくなります。

次に、荷重がどこから入り、どの経路を通って拘束部へ伝わるかを確認します。荷重伝達経路に含まれるリブ、ボス、ブラケット、接合面などは、形状が小さくても重要です。外観だけでは不要に見える形状が、実際には剛性や荷重分配を支配していることがあります。

熱解析では、発熱部から放熱部までの熱の移動経路を整理します。薄い金属部品や小さな接触面が、重要な熱伝導経路になっている場合があります。流体解析では、入口から出口までの主流路、分岐部、合流部、絞り部、障害物を確認します。

評価対象の近くでは詳細形状を残し、離れた部分では簡略化を進める方法も有効です。ただし、単純な距離だけで判断してはいけません。評価箇所から離れていても、全体剛性や境界条件を決める形状は結果に影響します。

この段階では、残す形状、条件付きで簡略化する形状、削除候補の形状に分類します。判断が難しい部分は、最初から削除せず、後の比較解析で影響を確認します。

設計担当者と解析担当者が異なる場合は、形状の機能を確認することも重要です。3D CADデータだけでは分からない設計意図を共有すれば、重要な形状を誤って除去するリスクを下げられます。

手順2 解析結果への影響が小さい細部を除去する

解析目的が整理できたら、結果への影響が小さい細部形状を除去します。代表的な対象は、文字、刻印、装飾的な凹凸、浅い溝、微小な面取り、小さな丸み、未使用の穴、詳細なねじ形状などです。

これらの形状は、3D CAD上では小さく見えても、解析用メッシュには大きく影響します。短い辺や小さな面が存在すると、その形状を表現するために局所的な要素寸法が小さくなります。細かな要素が周囲へ広がると、モデル全体の要素数が増加します。

特に、多数の部品に同じ小形状が含まれている場合は注意が必要です。一つの部品では影響が小さくても、数百個の穴や面取りが集まると、メッシュ数や接触面数が大幅に増えます。

文字や刻印は、構造、熱、流体の主要な挙動へ影響しない場合が多いため、早い段階で削除しやすい形状です。ただし、文字部分の深い彫り込みを応力や流体抵抗の対象とする場合は残す必要があります。

ねじ形状は、簡略化の効果が大きい対象です。ねじ山を実形状のまま残すと、細かなメッシュと複雑な接触設定が必要になります。締結部全体の荷重伝達だけを確認する場合は、円筒面や簡略化した締結条件へ置き換えられます。

ただし、ねじ山の局所応力、かみ合い、摩擦、破損位置を評価する場合は、詳細形状が必要です。解析目的に応じて、モデル全体では簡略表現を使用し、締結部だけを別モデルで詳細解析する方法もあります。

小穴を削除するときは、穴径だけで判断せず、穴の役割を確認します。締結、位置決め、冷却、排気、潤滑、軽量化などに使われる穴は、荷重や流れへ影響する可能性があります。未使用の加工穴でも、応力集中を評価する場所であれば削除できません。

面取りや丸みも同様です。全体の変位や固有振動数を確認する解析では省略できる場合がありますが、角部の応力を評価する場合は重要です。丸みを削除して鋭角にすると、応力が局所的に増加し、メッシュを細かくするほど最大値が上昇することがあります。

簡略化によって鋭角を作る場合は、最大応力の評価方法を慎重に決めます。特異点付近の一点だけを評価するのではなく、一定距離離れた位置の応力や、領域平均の値を使う方法も検討します。

形状を除去した後は、立体が正しく閉じているかを確認します。穴を埋めた結果として細い面が残ったり、曲面の接続が不連続になったりすると、メッシュ生成に失敗する可能性があります。

面の重複、微小なすき間、不正な境界、内部に残った不要面も確認します。見た目では問題がなくても、解析側では別々の面として認識されることがあります。

自動的に細部を削除する処理を利用する場合でも、結果の確認は必要です。寸法条件だけで削除対象を選ぶと、荷重面や接触面の一部まで消える可能性があります。荷重点、拘束面、接合部、評価領域は重点的に比較します。

細部の削除によって質量が変化する場合は、解析目的への影響も確認します。静的な強度解析では影響が小さくても、振動解析や加速度を含む解析では、質量と重心の変化が結果に表れる可能性があります。

手順3 薄肉部品や細長い部品を簡略要素へ置き換える

薄板、外装、配管、棒材、フレームなどは、立体形状のまま解析すると要素数が増えやすい部品です。特に板厚が長さや幅に比べて小さい部品では、厚さ方向を表現するために細かな要素が必要になります。

立体要素で薄板を解析する場合、厚さ方向にも適切な数の要素を配置する必要があります。そのため、板厚に合わせて要素寸法を小さくすると、面方向にも多数の要素が作成されます。

このような薄肉部品は、中立面を利用したシェルモデルへ置き換えることで、要素数を大幅に減らせる場合があります。シェルモデルでは、面形状に板厚情報を与え、面内変形と曲げ変形を表現します。

ただし、立体モデルを単純に中立面へ変換するだけでは不十分です。板厚、材料、面の向き、基準位置を正しく設定する必要があります。面の表裏が逆になると、板厚のオフセットや荷重方向が意図と異なることがあります。

部品同士の接続位置にも注意します。元の立体モデルでは表面同士が接触していても、それぞれを中立面へ置き換えると面の位置が離れる場合があります。そのまま結合すると、実際とは異なる偏心や剛性が生じる可能性があります。

板厚のオフセット、接続線、剛体領域などを使い、実際に近い位置で荷重が伝わるようにします。複数の板が重なる部分や段差のある接合部では、特に接続方法を確認します。

細長いフレームや棒状部品は、梁モデルへ置き換えられる場合があります。梁モデルでは、中心線と断面特性を利用して変形を計算します。断面積、断面二次モーメント、ねじり特性などを正しく設定すれば、少ない自由度で全体挙動を評価できます。

梁モデルは、装置全体のたわみ、支持反力、荷重分担、固有振動数などの確認に適しています。一方、接合部の局所応力、断面の局部変形、局部座屈を確認する場合は、梁だけでは情報が不足します。

全体モデルでは梁やシェルを使用し、詳細を確認したい部分だけを立体モデルで解析する方法が有効です。すべての部品を同じ要素形式で表現する必要はありません。解析目的に合わせて複数の表現を組み合わせます。

配管を構造解析する場合も、中心線と断面特性を用いたモデルへ置き換えられます。ただし、配管内部の流れや局所的な圧力損失を評価する場合は、流路の立体形状が必要です。同じ部品でも、解析の種類によって適切なモデル表現は異なります。

薄肉部品を面へ置き換えるときは、穴や切り欠きの扱いも検討します。全体剛性に影響する大きな開口は残し、影響が小さい穴は削除します。締結位置として使用する穴は、結合条件を設定するために必要になる場合があります。

簡略要素へ置き換えた後は、元の3D CADモデルと質量、重心、断面特性を比較します。板厚や断面寸法の入力間違いは、剛性や固有振動数を大きく変えるため、単位も含めて確認します。

立体、シェル、梁を組み合わせる場合は、それぞれの接続部で荷重が正しく伝達されているかを確認します。変形表示を拡大し、接続部で不自然な変位の飛びや回転が生じていないかを確認すると、結合漏れを見つけやすくなります。

手順4 対称性と周期性を使って解析領域を縮小する

形状、材料、荷重、拘束条件が対称である場合は、モデル全体ではなく、半分や一部だけを解析できることがあります。解析領域を半分にできれば、理想的には要素数や計算量も大きく減らせます。

左右対称の部品では、中央面でモデルを分割し、切断面に対称条件を設定します。回転対称の容器や軸では、断面だけを使った軸対称モデルを検討できます。一定の形状が繰り返される部品では、一つの周期領域だけを取り出す方法があります。

ただし、形状が対称であるだけでは対称モデルを使用できません。荷重、拘束、材料、接触条件も対称である必要があります。左右対称の形状でも、片側だけに荷重が加わる場合は、半分のモデルでは実際の挙動を再現できません。

構造解析で切断面を設定するときは、すべての方向を固定しないように注意します。対称面では、対称性を維持するために必要な自由度だけを拘束します。切断面を完全固定すると、実際よりも剛性が高くなり、変位が小さくなる可能性があります。

軸対称モデルは、形状と荷重が回転軸の周囲で一様な場合に有効です。円筒容器、円盤、軸などが対象になります。ただし、局所的な穴、切り欠き、偏った荷重、部分的な接触がある場合は、軸対称の仮定が成立しません。

周期性を利用する方法は、同じ形状が等間隔で繰り返される部品に向いています。解析領域を繰り返し単位まで縮小し、周期面の変位、温度、圧力などが対応するように条件を設定します。

流体解析でも対称面を利用できますが、流れ自体が対称になるかを確認する必要があります。形状と入口条件が対称でも、旋回、はく離、渦、乱れなどによって非対称な流れが発生することがあります。

対称条件を使用すると、非対称な現象が計算上発生できなくなります。座屈解析でも、実際には左右どちらかへ変形する可能性があるのに、対称条件によって変形モードが制限されることがあります。

対称性を使用する前に、解析で確認したい現象が対称条件と矛盾しないかを検討します。全体変形や平均的な温度分布の確認には適していても、非対称な破損、流れ、座屈を評価する場合には適さないことがあります。

初めて対称モデルを使用する対象では、粗いメッシュの全体モデルと比較する方法が有効です。主要な変位、応力、反力、温度、流量などが整合すれば、詳細な条件で対称モデルを使用する根拠になります。

解析領域を縮小するときは、切断面周辺の細かな形状も整理します。切断面に微小な段差や複雑な曲面があると、境界条件の設定やメッシュ生成が難しくなります。できるだけ平坦で連続した面になるように調整します。

手順5 接触部や締結部の表現を整理する

複数の部品で構成される3D CADモデルでは、形状の複雑さだけでなく、接触条件の数が解析時間に影響します。接触候補となる面が多いほど、解析中に接触状態を判定する処理が増えます。

接触の開閉、滑り、摩擦を含む解析では、反復計算が必要になります。接触条件が複雑になると、計算時間が長くなるだけでなく、収束しにくくなる場合があります。

解析目的に応じて、詳細な接触を一体結合へ置き換えられるかを検討します。実際には溶接、接着、圧入、締結によって固定されている部分でも、相対変位を評価しない場合は、一体として扱える可能性があります。

一体結合に置き換えると、接触の開閉や滑りを計算する必要がなくなり、解析を安定させやすくなります。ただし、接合面の滑り、分離、接触圧、摩擦、締結部の荷重分担を評価する場合は、詳細な接触条件を残します。

接触を過度に固定すると、モデル全体が実際より硬くなることがあります。解析が速く終わっても、変位や応力分布が現実と異なれば適切な簡略化ではありません。

ボルトやピンなどの締結部品も、実形状のまま残す必要があるとは限りません。ねじ山を含む詳細形状を省略し、梁、ばね、結合要素などへ置き換えることで、要素数と接触数を減らせます。

締結部品を置き換える場合は、軸方向剛性、せん断剛性、締付力、接続位置を適切に設定します。単に二つの穴を固定するだけでは、実際の締結状態を再現できない場合があります。

部品を削除する場合は、その部品が持っていた機能を整理します。例えば、支持金具を削除すれば、支持剛性が失われます。必要に応じてばねや拘束条件へ置き換えます。

重量物を削除した場合は、集中質量や分布質量として置き換えます。熱伝導部品を削除した場合は、熱抵抗や境界条件で影響を表現します。流体抵抗を生む部品を除去する場合は、圧力損失を別の条件で与える方法を検討します。

接触面の数を減らすために、分割された面をまとめる方法も有効です。面取りや段差によって接触面が複数に分かれていても、解析上同じ接触状態として扱えるなら、単純な面へ整理できます。

部品間に微小なすき間や重なりがある場合は、その原因を確認します。設計上必要なすき間であれば残しますが、データ変換や作図誤差によるものなら修正します。

微小なすき間が残ると、本来接触すべき部品が離れた状態で計算されることがあります。反対に、形状が重なっていると、初期状態で大きな接触力が発生する場合があります。

接触と結合を整理した後は、荷重がモデル内を正しく伝わっているかを確認します。入力荷重と反力の合計を比較し、大きな差がないかを確認します。

変形図を拡大して確認することも有効です。接続部で不自然な変位の飛びがある場合は、結合漏れや接触設定の誤りが疑われます。

手順6 簡略化前後の結果を比較して妥当性を確認する

形状の簡略化が完了したら、簡略化によって解析結果がどの程度変化したかを確認します。計算時間が短くなっただけでは、簡略化が成功したとは判断できません。

比較では、最大値だけでなく、分布と発生位置も確認します。最大応力が近い値でも、発生位置が別の部品や別の領域へ移動していれば、荷重伝達経路が変化している可能性があります。

変位を比較する場合は、最大変位だけでなく、代表点の変位や部品間の相対変位も確認します。反力を比較すると、荷重が想定した経路で拘束部へ伝わっているかを判断できます。

振動解析では、固有振動数だけでなく、振動モードの形状を比較します。近い固有振動数であっても、異なる変形モードが対応している場合があります。

熱解析では、最高温度、最低温度、代表点の温度、熱流量、温度分布を比較します。放熱形状を簡略化した場合は、表面積や熱伝達条件が変化していないかを確認します。

流体解析では、入口と出口の圧力差、流量、代表断面の速度分布、流れの分岐割合などを比較します。最大流速だけでは、流れ全体の変化を判断できない場合があります。

応力の最大値は、鋭角、拘束端、点荷重付近で大きくなりやすいため、比較方法に注意します。簡略化によって角部の形状やメッシュが変わると、最大値だけが大きく変化することがあります。

局所的な一点の値だけでなく、一定範囲の平均応力、評価点から少し離れた位置の応力、荷重と変位の関係など、解析目的に合った指標を使用します。

簡略化前の詳細モデルが大きすぎて解析できない場合は、両モデルを粗いメッシュで比較します。同程度のメッシュ条件で解析し、簡略化による全体傾向の変化を確認します。

必要に応じて、重要部分だけを切り出した詳細モデルも作成します。全体モデルで得た変位や荷重を詳細モデルの境界条件として与え、局所応力を確認する方法もあります。

比較結果に許容できない差がある場合は、削除した形状を段階的に戻します。一度にすべてを戻すのではなく、荷重経路に近い形状、剛性への影響が大きい形状、接触条件から順に復元します。

どの変更が結果へ影響したかを特定できれば、その部分だけを詳細化し、他の簡略化は維持できます。これにより、精度と計算時間のバランスを取りやすくなります。

簡略化による効果も記録します。部品数、面数、要素数、節点数、接触条件数、メッシュ生成時間、計算時間、結果データ量などを比較します。

結果への影響と計算時間の削減量をセットで残すことで、次回以降の解析に利用できる判断材料になります。どの簡略化が効果的だったかを蓄積すれば、似たモデルの準備時間も短縮できます。

簡略化の妥当性は、解析条件が変わると見直す必要があります。以前は影響が小さかった形状でも、荷重方向、拘束位置、材料、評価対象が変われば重要になることがあります。

過去の解析モデルを流用するときも、新しい目的に対して簡略化内容が適切かを確認します。検証済みという理由だけで、条件の異なる解析へそのまま使用しないことが重要です。

解析の種類によって変わる簡略化の判断基準

形状を簡略化できるかどうかは、解析の種類によって変わります。すべての解析に共通する一つの基準を作るのではなく、構造、振動、熱、流体などの目的別に考える必要があります。

静的な構造解析では、荷重経路、剛性、断面特性、接触状態が重要です。装置全体の変形を確認する場合は、微小な面取りや穴を省略しやすくなります。

局所応力や疲労を評価する場合は、切り欠き、丸み、穴、溶接部などの形状が重要です。全体解析では省略し、局所モデルでは詳細に表現する方法が適しています。

振動解析では、剛性だけでなく質量と重心の分布が重要です。外観上は小さな部品でも、質量が大きい場合や部品の先端に取り付けられている場合は、固有振動数へ影響します。

形状を削除する場合は、集中質量などで重量と位置を再現します。剛性を持つ部品を質量だけに置き換えると、振動モードが変化することがあるため注意が必要です。

熱解析では、熱伝導経路、発熱量、接触熱抵抗、対流面積、放射面積が重要です。薄い部品や小さな接触部が、主要な熱移動経路になっている場合があります。

細かな放熱形状を単純化すると、表面積が減少します。元の対流条件をそのまま使用すると、放熱性能を過小評価する可能性があります。簡略化後の表面積に合わせて条件を調整する方法を検討します。

流体解析では、流路断面積、曲がり、分岐、合流、絞り、障害物が重要です。流れに対して十分小さな凹凸は省略できる場合がありますが、境界層、圧力損失、混合、はく離を評価する場合は必要になることがあります。

狭いすき間を閉じると、その経路を流れる流量がなくなります。すき間が小さいという理由だけで削除せず、実際に流体が通過するか、流量配分へ影響するかを確認します。

落下や衝突を含む解析では、最初に接触する角部や突起が重要です。通常の静解析では削除できた細部でも、衝突位置になる場合は残す必要があります。

大変形や座屈を扱う解析では、初期形状のわずかな違いが結果へ影響することがあります。全体を過度に対称化すると、実際に発生する非対称な変形を表現できない場合があります。

このように、同じ3D CADモデルでも、一つの解析用モデルだけですべての目的へ対応するのは困難です。全体剛性用、局所応力用、振動用、熱用など、目的ごとに解析モデルを分ける方法が有効です。

3D CADモデルの簡略化で起こりやすい失敗

形状簡略化で起こりやすい失敗は、小さい形状を一律に削除することです。形状寸法が小さくても、荷重の入力部、支持部、接触部、応力集中部、流路の絞り部であれば重要です。

形状の寸法だけでなく、機能と解析条件を確認します。判断に迷う場合は、削除前後を比較し、結果への影響を確認します。

部品を削除したにもかかわらず、その部品が担っていた質量や剛性を置き換えない失敗もあります。形状だけを減らすと、解析対象の物理状態まで変化します。

丸みを削除して鋭角を作り、最大応力が異常に高くなることもあります。鋭角付近の応力値をそのまま設計判断に使用すると、誤った評価につながる可能性があります。

対称条件の誤用にも注意が必要です。形状だけが対称でも、荷重、拘束、材料、接触が対称でなければ使用できません。非対称な座屈や流れを評価する場合にも適していません。

接触部を一体結合へ置き換えすぎると、モデル全体が実際より硬くなります。収束しやすくなったことだけで適切と判断せず、変位、反力、荷重分担を確認します。

簡略化後の形状が閉じた立体になっていないケースもあります。面の欠落、重複、微小なすき間、内部面が残ると、メッシュ生成の失敗や不正な要素の原因になります。

メッシュが生成できたことだけを完了条件にするのも危険です。メッシュ品質、荷重条件、拘束条件、接触、材料、単位が正しくなければ、計算が終了しても信頼できる結果にはなりません。

解析時間を減らすことを優先しすぎて、評価箇所まで粗くする失敗もあります。モデル全体を簡略化しても、評価対象の周辺には必要な詳細形状と十分なメッシュ密度を残します。

簡略化モデルの作成者しか変更内容を理解できない状態も避ける必要があります。削除した形状、置き換えた条件、検証結果を記録し、別の担当者が再現できる状態にします。

簡略化した解析モデルを設計変更へ追従させる方法

解析用モデルを設計モデルから分けると、簡略化しやすくなる一方で、設計変更の反映漏れが起こりやすくなります。元の3D CADモデルが更新されても、解析モデルが古いままでは、実際の設計とは異なる条件で評価することになります。

設計モデルと解析モデルの版を対応付けて管理します。解析結果には、基準とした設計版、解析モデルの版、実施日を記録します。

設計変更が発生したら、変更部分が解析へ影響するかを確認します。すべての変更を機械的に解析モデルへ反映するのではなく、荷重経路、剛性、質量、接触、熱、流れへの影響を判断します。

外観上の小変更であっても、肉厚や接触面が変わる場合は解析結果へ影響する可能性があります。反対に、解析対象から離れた刻印の変更などは、解析モデルへ反映する必要がない場合があります。

変更された部品だけを置き換えた後は、接続関係を確認します。部品番号や面の識別情報が変わると、荷重、拘束、接触条件の参照先が外れることがあります。

更新後は、形状だけでなく解析条件も再確認します。特に自動的に面を参照している設定では、意図しない面へ条件が移る可能性があります。

大きな設計変更が入った場合は、以前の簡略化基準をそのまま適用しないことも重要です。荷重経路や接合方法が変われば、以前は不要だった形状が重要になることがあります。

設計変更前後で質量、重心、主要寸法、接触面積などを比較すると、反映漏れを見つけやすくなります。解析結果についても、代表点の変位や反力を比較し、不自然な変化がないかを確認します。

設計モデルと解析モデルを完全に自動連携させることが難しい場合でも、変更確認の手順を決めておけば漏れを減らせます。解析モデルを独立したデータではなく、設計変更と連動して更新する管理対象として扱います。

形状簡略化を社内で標準化するための考え方

形状簡略化を継続的に活用するには、担当者個人の経験だけに頼らず、判断基準と確認方法を共有する必要があります。

まず、解析の種類ごとに簡略化の基準を整理します。全体剛性、局所応力、振動、熱、流体などに分け、残すべき形状と省略候補をまとめます。

ただし、穴径や面積などの数値だけで一律に判断する基準は避けます。評価領域、荷重経路、支持、接触、流路との関係を確認する項目も含めます。

次に、解析用モデルの命名規則と保存場所を統一します。元の3D CADモデル、作業中の簡略化モデル、検証済みモデルを区別し、誤使用を防ぎます。

簡略化の履歴には、削除した形状、置き換えた部品、変更した接触条件、検証方法を記録します。担当者が変わっても、同じ判断を再現できる状態を目指します。

簡略化前後で確認する項目も標準化します。質量、重心、体積、主要寸法、反力、代表点の変位、固有振動数、最高温度、圧力差などから、解析目的に合う項目を選びます。

モデルの複雑さを数値で記録する方法も有効です。部品数、面数、要素数、節点数、接触条件数、計算時間を残せば、簡略化の効果を客観的に比較できます。

よく使用する部品については、解析用の軽量モデルを準備します。締結部、支持部、駆動部などを簡略表現として登録し、適用できる解析目的と条件も記載します。

同じ簡略モデルをすべての解析へ使用するのではなく、用途に応じた複数の表現を用意することが重要です。全体解析用と局所解析用を分けるだけでも、準備時間を短縮しやすくなります。

レビューでは、形状の見た目だけでなく、簡略化の理由を確認します。なぜ削除できるのか、結果への影響をどのように確認したかを共有します。

標準化の目的は、すべてのモデルを同じ形状にすることではありません。判断の手順、記録方法、検証方法をそろえ、根拠のない省略や確認漏れを防ぐことが目的です。

現場の三次元情報を解析条件へ反映する

解析精度を高めるには、3D CAD上の設計形状だけでなく、実際の設置状態や周辺環境を確認することも重要です。

設計モデルでは、支持面が完全に平坦で、部品が指定位置へ正確に取り付けられていることを前提にする場合があります。しかし、現場では設置面の傾き、周辺構造物との位置関係、支持部のずれなどが存在する可能性があります。

現場の状態をすべて詳細な解析形状として取り込むと、モデルが再び複雑になります。そのため、取得した情報から解析結果へ影響する部分だけを選びます。

例えば、支持位置のずれが全体変形へ影響する場合は、拘束位置へ反映します。周辺設備との接触が想定される場合は、接触位置や移動可能範囲を解析条件へ反映します。

現場で取得した三次元情報と3D CADモデルを重ねれば、設計と実際の状態の差を確認しやすくなります。差が小さい部分は設計モデルを使用し、差が大きい部分だけを解析モデルへ反映することで、過度に複雑なモデルを避けられます。

現場情報を利用するときも、取得した形状をそのまま解析へ使用するのではなく、目的に応じて簡略化します。点や面が細かすぎる場合は、支持面、障害物、境界面など、解析に必要な形状へ整理します。

現場の位置情報や三次元データを取得し、設計データとの比較へ活用する方法として、LRTK Phoneがあります。現場で得た情報を3D CADモデルと照合し、支持位置や周辺形状などを確認することで、解析条件を検討するための材料を増やせます。

3D CAD、現場計測、解析を別々の作業として扱うのではなく、必要な情報を相互に確認できる流れを作ることが重要です。現場の状態を踏まえて解析モデルを簡略化すれば、計算量を抑えながら実際に近い条件を設定しやすくなります。

まとめ

3D CADで複雑な形状を簡略化して解析時間を減らすには、細かな形状を無条件に削除するのではなく、解析目的に必要な情報を見極めることが重要です。

最初に解析目的、評価箇所、必要な精度を明確にし、荷重、熱、流れが伝わる経路を整理します。そのうえで、解析結果への影響が小さい刻印、溝、穴、面取り、ねじ形状などを段階的に除去します。

薄板や細長い部品は、目的に応じてシェルや梁などの簡略要素へ置き換えることで、要素数を減らせます。置き換え後は、板厚、断面特性、質量、重心、接続位置が元モデルと整合しているかを確認します。

形状と解析条件が対称であれば、対称性や周期性を利用して解析領域を縮小できます。ただし、荷重、拘束、接触、現象そのものが対称条件に適しているかを確認しなければなりません。

複数部品のモデルでは、接触部や締結部の整理も大きな効果を持ちます。詳細な接触が不要な部分は一体結合や簡略要素へ置き換えますが、実際よりも過度に硬いモデルにならないよう注意します。

簡略化後は、元モデルとの比較を行います。最大値だけでなく、分布、発生位置、反力、代表点の値を確認し、解析目的に必要な精度が保たれているかを判断します。

形状簡略化の手順、記録方法、検証項目を標準化すれば、担当者による差を抑えながら解析業務を効率化できます。過去の解析モデルと結果を蓄積することで、次回以降は適切な詳細度を早い段階で決めやすくなります。

さらに、設計時の3D CADデータと現場で取得した三次元情報を照合すると、実際の支持状態や周辺環境を踏まえて解析条件を検討できます。現場情報を効率よく取得し、設計モデルとの比較へつなげる際には、LRTK Phoneの活用も選択肢になります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る