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3D CADで製造原価を設計段階から下げる8つの形状改善

製造原価を下げる取り組みというと、材料の仕入れ先変更、加工条件の見直し、設備稼働率の向上、作業時間の短縮などが注目されがちです。しかし、製品の原価に大きな影響を与えるのは、製造工程に入ってからの改善だけではありません。部品形状が決まる設計段階で、加工しにくい部分、材料を多く消費する部分、段取りを増やす部分を減らしておくことが重要です。

3D CADを活用すると、完成形状を立体的に確認しながら、材料使用量、加工方向、工具の接近性、肉厚、曲面、穴、ポケット、締結部などを設計段階で検討できます。図面を作成した後に製造部門から修正を求められるのではなく、モデリング中から製造原価を意識することで、設計変更の手戻りを減らしやすくなります。

ただし、単純に形状を小さくしたり薄くしたりすれば、必ず原価が下がるわけではありません。過度な軽量化によって剛性が不足すれば、品質不良や寿命低下を招く可能性があります。加工時間を短縮できても、特殊な工具や複雑な治具が必要になれば、全体の費用は上がることがあります。設計者には、機能、強度、品質、組立性、検査性、製造性を同時に考える視点が求められます。

本記事では、3D CADを使って製造原価を設計段階から下げるための代表的な形状改善を8つに分けて解説します。切削、板金、鋳造、樹脂成形、積層造形など、製造方法によって具体的な判断基準は異なりますが、原価を押し上げる形状の考え方には共通点があります。実務で形状を見直す際の確認項目として活用してください。

製造原価を設計段階で検討する重要性

製造原価は、材料費、加工費、設備費、工具費、治具費、組立費、検査費、物流費、不良対応費など、複数の要素から構成されます。設計段階で決定された形状は、これらの費用の多くに影響します。例えば、部品に深いポケットがあると、長い工具が必要になり、加工速度を下げなければならない場合があります。複数方向から穴を加工する形状では、部品の向きを変える段取りが増え、位置決めや確認に時間がかかります。

設計が完了した後で製造原価を下げようとしても、変更できる範囲は限られます。すでに部品同士の位置関係、外形寸法、締結方法、強度条件が固まっているためです。製造工程だけで費用を下げようとすると、加工速度を上げる、作業者の動作を短縮する、複数部品をまとめて加工するといった改善が中心になります。しかし、形状そのものが加工しにくい場合、工程側の努力だけでは大幅な改善が難しくなります。

3D CADで形状を作成している段階なら、寸法、肉厚、穴位置、曲率、分割位置などを比較的柔軟に変更できます。設計初期に製造原価を検討すれば、機能を維持しながら費用を抑えられる可能性が高まります。特に量産部品では、1個当たりのわずかな加工時間や材料量の差が、累計では大きな差になります。

また、製造原価を意識した設計は、単なる費用削減にとどまりません。加工工程が単純になることで、品質が安定しやすくなり、作業者ごとの差も抑えやすくなります。工具の突き出し量や段取り回数を減らせば、加工誤差や取り付けミスのリスクも低減できます。設計段階の形状改善は、原価、品質、納期を同時に改善する手段として捉えることが大切です。

3D CADで原価に影響する形状を見つける考え方

3D CADで原価を検討するときは、モデル全体を眺めるだけでは十分ではありません。どの形状が、どの費用に影響しているのかを分けて考える必要があります。

最初に確認したいのは、材料使用量です。体積や質量を計算し、機能に直接関係しない厚肉部や大きな張り出しがないかを調べます。ただし、完成部品の体積だけではなく、加工前の素材形状も考慮しなければなりません。完成品が軽量でも、大きな角材から多くの部分を削り取る設計であれば、材料費と加工時間が増えます。完成形状が素材規格に収まりやすいか、取り代が過大にならないかを確認することが重要です。

次に、加工方向を確認します。ある面を加工するために部品を何回持ち替える必要があるか、同じ方向から主要な穴や平面を加工できるかを考えます。3D CAD上で基準面を設定し、各形状をどの方向から加工するかを想定すると、段取りの多い部分を見つけやすくなります。

工具の接近性も重要です。細く深い穴、狭い溝、奥まった隅部、裏側の形状などは、一般的な工具では加工できない場合があります。加工できたとしても、長い工具、特殊な工具、小径工具が必要になると、加工条件が制限されます。工具が形状にどのように接近するかを仮想的に確認し、干渉や作業空間の不足を見つけます。

さらに、公差や表面性状を形状と一体で検討します。平面度や同軸度を求める面が離れている場合、複数工程での加工や高精度な位置決めが必要になることがあります。高い精度が必要な面を同一方向、同一工程で加工できる配置にすると、原価を抑えやすくなります。

このように、3D CADモデルを見る際は、材料、加工方向、工具、段取り、公差、組立、検査という複数の観点を重ねることが大切です。形状の良し悪しを見た目だけで判断せず、製造工程に置き換えて考えることで、原価低減につながる改善点を発見できます。

形状改善1 材料を使いすぎる厚肉部を減らす

製造原価を下げる基本的な方法の一つが、不要な材料を減らすことです。3D CADでは体積や質量を自動的に計算できるため、変更前後の材料使用量を比較しながら形状を調整できます。

ただし、単純に全体を薄くすると、強度や剛性が不足する可能性があります。重要なのは、荷重が伝わる部分と、ほとんど荷重を負担していない部分を区別することです。厚い板状部品を一様に薄くするのではなく、必要な方向にリブを設けたり、荷重の小さい範囲をくり抜いたりすることで、機能を保ちながら材料を減らせます。

切削部品では、厚肉部を減らすことが必ずしも原価低減につながらない場合があります。大きな素材から深く削り込む形状にすると、除去する材料が増え、加工時間も長くなるためです。完成品の質量だけでなく、素材から完成形状までの除去量を確認しなければなりません。薄肉化によって加工中に変形しやすくなれば、固定方法や加工順序が複雑になることもあります。

鋳造や樹脂成形では、急激な肉厚変化が品質問題につながる可能性があります。厚い部分だけ冷却や凝固が遅れ、ひけ、変形、内部欠陥などが生じやすくなるためです。厚肉部を減らす際は、肉厚をできるだけ均一にし、必要な剛性はリブや曲面で確保する考え方が有効です。

3D CAD上では、断面表示や肉厚確認機能を使い、局所的に厚い部分を探します。外観だけでは見つけにくい内部の重なりや、ボスの根元、交差するリブの周辺なども確認します。複数の形状が重なる場所は、意図せず厚肉になりやすい部分です。

材料を減らす際には、加工や成形だけでなく、運搬、取り扱い、組立への影響も考えます。部品が軽くなれば、作業者の負担や搬送設備への負荷を軽減できる可能性があります。一方で、つかみしろが不足したり、組立時に変形しやすくなったりする場合もあります。質量だけを目標にせず、製造工程全体を通じた原価を評価することが重要です。

形状改善2 深すぎる穴やポケットを浅くする

深い穴やポケットは、切削加工の原価を押し上げやすい代表的な形状です。深さが増えるほど工具の突き出し量が長くなり、たわみや振動が発生しやすくなります。その結果、加工速度を下げたり、複数回に分けて少しずつ加工したりする必要が生じます。

特に、幅に対して深さが大きいポケットでは、工具の選択肢が限られます。小径で長い工具は剛性が低く、加工条件を抑えなければなりません。切りくずの排出も難しくなり、加工面の傷や工具損傷の原因になることがあります。底面や側面に高い仕上がりが求められると、さらに工程が増える可能性があります。

3D CADで深い形状を見直す際は、その深さが本当に機能上必要なのかを確認します。内部部品を収めるための空間であれば、部品配置を変更したり、外側に張り出す形状へ置き換えたりする方法があります。軽量化を目的としたくり抜きなら、底を深くするのではなく、外周側から複数の浅い除去部を設ける方法も検討できます。

穴についても同様です。深い止まり穴は、工具の排出性や先端形状の影響を受けやすく、加工深さの管理が難しくなります。可能であれば貫通穴に変更すると、加工と検査が容易になることがあります。貫通が難しい場合でも、穴の深さを必要最小限にする、反対側から加工できる構造にする、部品を分割するなどの選択肢があります。

ポケット底面の角を完全な直角にしようとすると、追加加工が必要になる場合があります。一般的な回転工具では底面と側面の境界に工具先端の形状が残るためです。機能上問題がなければ、底部に適切な丸みや逃げを設けることで、標準的な工具を使いやすくなります。

3D CAD上では、穴やポケットの深さを色分けしたり、断面を複数方向から確認したりすると、加工負荷の高い部分を把握しやすくなります。深い形状をすべてなくす必要はありませんが、機能上の理由が明確でない深さは、原価低減の有力な改善候補です。

形状改善3 小さすぎる隅部と複雑な輪郭を見直す

部品の内側に小さな隅丸や鋭い角があると、小径工具が必要になります。小径工具は加工速度を上げにくく、折損の危険も高いため、加工時間と工具費の両方に影響します。特に深いポケットの底に小さな隅部がある場合、長く細い工具が必要となり、原価が大きく上昇する可能性があります。

内側の角は、回転工具の半径より小さく加工できません。そのため、設計上の隅半径が小さいほど、細い工具を選ばなければなりません。相手部品の角を避ける目的で小さな隅部を設けている場合は、相手部品側に面取りや逃げを設けることで、加工側の隅半径を大きくできることがあります。

複雑な輪郭も原価を押し上げる要因です。細かな凹凸、短い直線と円弧の連続、不規則な曲面などは、工具経路を長くし、加工データの作成や確認にも時間がかかります。外観や機能に影響しない部分であれば、直線、単純な円弧、一定半径の曲面などに整理することが有効です。

3D CADでは、輪郭を拡大して微小な段差や不要な分割線が残っていないか確認します。異なる作成方法で生成された面が接続される部分には、わずかな傾きや段差が生じることがあります。画面上では滑らかに見えても、製造データに変換すると細かな工具動作が発生する場合があります。

曲面を使用する場合も、形状の連続性を意識します。曲率が急激に変化する曲面は、加工時の速度変化が大きくなりやすく、成形品では外観不良や変形の原因になる可能性があります。一定の半径や滑らかな曲率変化を用いると、加工や成形が安定しやすくなります。

隅部を大きくする改善は、応力集中の緩和にもつながる場合があります。ただし、相手部品との干渉、シール面、位置決め機能などに影響する可能性があるため、単独部品だけで判断してはいけません。3D CAD上で組立状態を確認しながら、必要な逃げと加工しやすい半径を両立させます。

形状改善4 加工方向と段取り回数を減らす

加工方向が増えるほど、部品を固定し直す回数が増え、製造原価が上がりやすくなります。部品の持ち替えには、取り外し、清掃、再固定、位置合わせ、基準確認などの作業が伴います。持ち替えるたびに位置ずれの可能性も増えるため、検査工程が追加されることがあります。

例えば、主要な穴が上面、側面、斜面に分散している部品では、それぞれの方向から加工する必要があります。設備によっては複数方向を連続して加工できますが、設備の使用時間や固定方法が複雑になれば、原価が低くなるとは限りません。できるだけ同一方向から加工できるように穴や溝を配置すると、一般的な設備でも製造しやすくなります。

3D CADで形状を検討する際は、加工基準となる面を仮定し、その面を下に固定した状態で、どの形状へ工具が届くかを確認します。モデルを回転させながら見るだけでなく、実際の固定状態を意識することが重要です。基準面が小さすぎる、傾斜している、突起に囲まれている場合は、安定した固定が難しくなります。

斜め穴は、特に段取りを増やしやすい形状です。機能上必要でなければ、水平または垂直な穴へ変更できないか検討します。流路や配線経路として斜め穴が必要な場合でも、複数の直線穴を組み合わせる、別部品に分ける、鋳抜き形状を利用するなど、別の製造方法を比較する価値があります。

裏側からしか加工できない形状も注意が必要です。外観上は単純でも、工具が入る空間がなければ、特殊な加工や追加部品が必要になります。締結部や爪形状を設計するときは、組立時だけでなく、製造時の工具方向も考慮します。

段取り回数の削減は、加工費だけでなく、仕掛品の移動や待ち時間の短縮にもつながります。同じ形状を量産する場合、1回の段取り短縮が全体の生産性に大きく影響します。3D CAD上で加工方向別に形状を分類し、方向の集約が可能かを検討すると、効果的な原価改善につながります。

形状改善5 穴径と締結形状を標準化する

穴や締結部は、一つひとつは小さな形状でも、部品全体の原価に大きく影響します。穴径、深さ、座面、ねじ形状が多数混在すると、使用する工具の種類が増え、工具交換や加工条件の設定に時間がかかります。検査に使用する測定具も増えるため、管理が複雑になります。

設計上の理由がないまま、わずかに異なる穴径を複数使用している場合は、共通化できないか検討します。同じ工具で複数の穴を加工できれば、工具交換回数を減らしやすくなります。締結部品の種類も減らせるため、調達、保管、組立、保守の負担を抑えられます。

ねじ穴では、必要以上に深い有効長さを設定しないことが重要です。深いねじ加工は工具負荷が高く、切りくず排出や加工深さの管理も難しくなります。締結に必要な長さを確認し、過剰な深さを避けます。止まり穴の場合は、工具先端や切りくずのための余裕も必要です。3D CAD上の単純な円筒形状だけで判断せず、実際の加工方法を踏まえて底部形状を設計します。

穴の近くに壁や突起がある場合、工具や締結作業用の器具が干渉する可能性があります。穴そのものは加工できても、締結作業ができなければ組立工程で問題になります。3D CADでは、工具や作業空間を簡略形状として配置し、周囲との干渉を確認すると効果的です。

座ぐりや皿形状についても、必要性を見直します。締結部品の頭部を完全に沈める必要がない場所まで座ぐりを設けると、加工工程と検査項目が増えます。外観、安全性、相手部品との干渉など、明確な理由がある部分に限定することが大切です。

穴位置の配置も原価に関係します。穴同士が近すぎると工具剛性や材料強度に影響し、端部に近すぎると変形や割れの原因になることがあります。規則的な間隔や共通の基準から配置すると、加工データの作成、検査、組立が行いやすくなります。

標準化は、設計の自由度を奪うものではありません。機能に影響しない部分を共通化し、本当に必要な特徴に設計の複雑さを集中させる考え方です。3D CADの部品情報や設計ルールを活用し、使用する穴径や締結形状を整理すると、部品単体だけでなく製品全体の原価を下げやすくなります。

形状改善6 不要に厳しい公差が必要な形状を減らす

製造原価は形状だけでなく、その形状に求める精度によって大きく変わります。寸法公差、幾何公差、表面性状が厳しくなるほど、高精度な加工、追加の仕上げ、温度管理、詳細な検査が必要になります。

設計者が安全を見込んで公差を厳しくすると、製造現場では必要以上の工程が発生することがあります。特に、機能に直接関係しない外形寸法や、他部品と接触しない面に厳しい精度を設定すると、原価だけが増える可能性があります。公差は、製品機能から逆算して設定する必要があります。

3D CADを使うと、部品同士のすき間、干渉、位置関係を立体的に確認できます。組立状態で寸法のばらつきを考え、どの寸法が機能に影響するかを整理します。すべての寸法を個別に厳しくするのではなく、基準面と重要寸法を明確にし、それ以外には製造しやすい許容範囲を与えます。

高精度な面が複数方向に分散している場合は、それらを同一の加工方向に集める形状改善も有効です。同じ固定状態で加工できれば、相互位置精度を確保しやすくなります。反対に、部品を持ち替えた後で高精度な面を加工すると、再位置決め誤差が加わるため、設備や治具に高い性能が求められます。

はめあい部では、必要な接触範囲を限定することも検討します。長い円筒面全体に高精度な寸法を求めるより、位置決めに必要な範囲だけを精密面にし、その他の範囲に逃げを設けることで、加工と組立を容易にできる場合があります。

平面についても、全面に高い平面度を求める必要があるかを確認します。支持点やシール範囲が限定されているなら、必要な領域だけを加工面として設計し、周辺は低い面にする方法があります。加工面積が減れば、加工時間や工具負荷を抑えられる可能性があります。

公差の緩和は、品質を下げることではありません。機能に必要な精度を確実に守りながら、不要な精度を取り除くことです。3D CAD上で接触、可動範囲、変形、組立順序を確認し、公差を厳しくする理由を一つずつ説明できる状態にすると、原価と品質のバランスを取りやすくなります。

形状改善7 一体形状と分割形状を原価で比較する

部品点数を減らすために複数の機能を一体化すると、組立工程や締結部品を減らせる可能性があります。しかし、一体化によって形状が複雑になり、加工や成形が難しくなると、部品単体の原価が大きく上がることがあります。

一体部品では、複数方向からの加工、深い内部形状、狭い空間、複雑な曲面などが発生しやすくなります。また、一部の形状不良だけで部品全体が不良になるため、損失も大きくなります。大型化によって必要な素材や設備が変わる場合もあります。

一方、部品を分割すると、それぞれの形状を単純化しやすくなります。一般的な素材や設備を使えるようになり、加工方向を減らせる可能性があります。摩耗する部分だけを交換できる構造にすれば、保守費用を抑えられることもあります。

ただし、分割すれば必ず安くなるわけではありません。締結部品、位置決め形状、接合工程、検査工程、在庫管理が増えます。接合部の強度、気密性、防水性、外観品質などを確保する必要もあります。部品点数が増えることで、組み間違いや締結不足のリスクが高まる可能性もあります。

3D CADでは、一体案と分割案を別の構成として作成し、それぞれの材料量、部品点数、加工方向、締結数、接触面、組立空間を比較します。完成形状だけを見るのではなく、製造と組立の流れを想定することが重要です。

分割位置は、機能境界や加工方向の変化する場所に設定すると効果的です。例えば、主要本体は単純な形状にし、複雑な突起や流路を別部品にすることで、本体を標準的な加工方法で製造できる場合があります。反対に、同じ方向から加工できる小部品が多数ある場合は、一体化によって固定や組立を減らせる可能性があります。

設計変更が多い製品では、変更の可能性が高い部分を分割しておくことも有効です。製品全体を作り直さず、特定部品だけを変更できれば、試作や改良にかかる費用を抑えられます。量産数量、変更頻度、保守方法まで含めて、一体化と分割の適切な範囲を判断します。

形状改善8 組立と検査をしやすい形状に整える

製造原価を考えるとき、加工費だけに注目するのは不十分です。加工後の洗浄、組立、調整、検査、梱包まで含めて評価する必要があります。加工しやすい部品でも、組立時に向きを間違えやすい、工具が入らない、位置決めが難しいといった問題があれば、製品全体の原価は上がります。

組立性を高める基本は、部品が自然に正しい位置へ収まる形状にすることです。位置決め用の段差、案内面、面取り、突起などを設けると、作業者が細かな調整をしなくても組み立てやすくなります。ただし、位置決め形状を増やしすぎると、加工箇所や公差管理が増えるため、必要最小限にします。

左右や表裏を間違えやすい部品には、誤った向きでは組み付けられない非対称形状を設ける方法があります。目印だけに頼るより、形状で誤組立を防ぐほうが、作業者の経験に左右されにくくなります。3D CAD上で誤った向きに配置し、干渉によって確実に防止できるかを確認します。

工具の作業空間も重要です。締結位置の周囲に壁や突起があると、工具をまっすぐ入れられず、作業時間が長くなる場合があります。締結部品を配置する際は、頭部周辺だけでなく、工具全体が動く範囲を確認します。締め付け方向をそろえると、製品を何度も持ち替える必要がなくなります。

検査しやすい形状にすることも原価低減につながります。測定面が狭い、奥まっている、基準面が不明確といった部品では、専用の測定具や複雑な測定手順が必要になります。測定器具を当てやすい面を設けたり、基準を明確にしたりすることで、検査時間を短縮しやすくなります。

内部形状や組立後に隠れる部分は、完成後の確認が難しくなります。重要な締結状態や部品位置を外側から確認できる形状にすると、検査や保守が容易になります。必要に応じて確認用の開口部を設ける方法もありますが、強度や防水性への影響を検討しなければなりません。

3D CAD上では、組立順序に沿って部品を移動させ、周辺部品との干渉や作業空間を確認します。完成状態だけで干渉がなくても、組立途中に通過できない場合があります。部品をどの方向から入れるか、工具をどこから入れるか、作業者がどこを保持するかまで想定することが大切です。

組立と検査を考えた形状改善は、作業時間の短縮だけでなく、不良や再作業の削減にもつながります。製造原価を安定して下げるためには、加工設備の中だけではなく、作業者が部品を扱う場面まで3D CAD上で再現する視点が必要です。

形状改善の効果を3D CAD上で比較する方法

形状改善を行う際は、変更前後を感覚だけで比較せず、複数の指標を使って評価します。まず確認しやすいのは、体積、質量、表面積、外形寸法です。材料の種類を設定しておけば、質量の変化を把握できます。ただし、完成品の質量減少だけで原価低減を判断してはいけません。

切削部品では、想定する素材寸法をモデル化し、完成形状との差を確認します。素材から除去する体積が多いほど加工時間が長くなる傾向がありますが、除去する場所や深さによって難易度は異なります。広く浅い除去と、狭く深い除去では、同じ体積でも加工時間が大きく変わる可能性があります。

次に、加工方向の数を比較します。主要な面、穴、溝、ポケットを方向別に整理し、何回の固定で加工できるかを想定します。変更後に方向数が減っていても、固定しにくい形状になっていないかを確認します。安定した基準面と保持部分が確保されていることが重要です。

工具の接近性については、工具と保持具を簡略化した形状で配置し、干渉を確認します。深い部分では、工具先端だけでなく工具軸や保持部まで考慮します。実際には加工中の切りくず排出や冷却も必要になるため、単に接触しなければよいわけではありません。

組立性の比較では、部品を組立順序に沿って移動させます。正しい方向から無理なく挿入できるか、締結工具が入るか、作業途中で部品を保持できるかを確認します。分割案を比較する場合は、部品点数だけでなく、締結数や位置決め箇所も数えます。

公差については、重要な機能寸法を明確にし、形状変更によって寸法の連鎖が複雑になっていないかを確認します。基準から遠い位置に重要面があると、複数寸法のばらつきが重なりやすくなります。重要な面を共通基準に近づける形状は、製造と検査の両方で有利です。

形状変更の記録も重要です。変更理由、期待する効果、影響を受ける機能、製造部門からの意見をモデルや関連資料に残します。後から同じような部品を設計するときに、過去の判断を再利用できるためです。原価改善を一度限りの活動にせず、設計知識として蓄積することで、開発速度と設計品質を高められます。

製造方法ごとに確認したい形状上の注意点

同じ形状でも、製造方法によって原価への影響は異なります。切削加工では有利な形状が、鋳造や樹脂成形では不利になる場合があります。3D CADで原価改善を行う際は、採用する製造方法を明確にしたうえで評価する必要があります。

切削加工では、工具の接近方向、深さ、隅半径、固定方法、素材形状が重要です。直角の内隅、深い細溝、長い小径穴、複数方向の斜め穴などは加工負荷を高めやすくなります。素材の標準寸法に収まりやすい外形にし、同一方向から主要形状を加工できるようにすると、原価を抑えやすくなります。

板金加工では、板厚の統一、曲げ方向、曲げ位置、穴と曲げ部の距離、工具干渉などを確認します。複雑な曲げや狭い戻り形状は、加工工程を増やす可能性があります。溶接を減らすために曲げを増やす設計もありますが、曲げ回数や専用工具が増えれば、必ずしも安くなるとは限りません。

鋳造では、肉厚の均一性、抜き方向、角部の丸み、内部空洞、凝固しやすさなどを考慮します。厚肉部が集中すると品質が安定しにくくなる可能性があります。機械加工が必要な面には適切な加工代を設けますが、過大な加工代は材料と加工時間の増加につながります。

樹脂成形では、肉厚、抜き勾配、リブ、ボス、アンダーカット、流動距離などが重要です。肉厚を増やして強度を確保しようとすると、冷却時間や変形に影響する場合があります。必要な剛性は、厚肉化だけでなく、リブや曲面を使って確保する方法を検討します。

積層造形では、切削加工とは異なり、内部流路や複雑な一体形状を作りやすい場合があります。しかし、造形方向、支持構造、後処理、表面仕上げ、内部の粉末や樹脂の除去などが原価に影響します。複雑な形状を作れるからといって、無制限に複雑化すると、データ処理や後工程の負担が増える可能性があります。

製造方法が未決定の初期設計では、複数の方法に対応しやすい単純な形状から検討を始めます。設計が進むにつれて製造数量、要求精度、材料、設備条件を明確にし、最適な形状へ絞り込みます。3D CAD上の形状を固定した後で製造方法を選ぶのではなく、形状と製造方法を同時に検討することが、原価低減の基本です。

原価低減で避けたい設計上の失敗

原価を下げる目的で形状を変更しても、別の工程で費用が増えれば、製品全体では効果がありません。代表的な失敗は、材料費だけを見て部品を薄くしすぎることです。加工中の変形、組立時のたわみ、使用中の振動などが発生すると、加工条件の低下や補強部品の追加が必要になります。

部品点数の削減を優先しすぎることにも注意が必要です。一体化によって複雑な内部形状が生じると、特殊加工や高価な設備が必要になる場合があります。一部の変更だけでも部品全体の作り直しが必要になり、試作費用や改修費用が増える可能性があります。

標準化を進めすぎる失敗もあります。穴径や板厚を共通化することは有効ですが、機能に合わない規格へ無理に合わせると、部品が大型化したり、不要な材料が増えたりします。標準化は目的ではなく、製造と管理を簡単にするための手段です。

3D CAD上で干渉がないことだけを確認し、実際の製造や組立空間を見落とすケースもあります。工具、保持具、作業者の手、測定器具には大きさがあります。部品同士が接触していなくても、工具が入らなければ作業できません。簡略化した工具形状をモデル内に配置して確認することが有効です。

加工時間を減らすために公差を緩和した結果、組立調整が増える場合もあります。部品単体の加工費は下がっても、完成品の性能を合わせるための選別や調整が必要になれば、全体の原価は上がります。公差は部品単体ではなく、製品全体の機能と組立方法から決めます。

製造部門への確認が遅れることも大きな問題です。設計がほぼ完了してから加工可能性を確認すると、変更の影響範囲が広がります。3D CADモデルが大まかにできた段階で、加工方向、固定方法、工具、材料、検査方法について意見を得ることが重要です。

原価低減では、変更による利点だけでなく、新しく発生するリスクを確認します。材料、加工、組立、検査、保守の各工程で費用がどう変化するかを整理し、部分最適ではなく全体最適で判断する必要があります。

3D CADによる原価改善を継続する仕組み

製造原価を下げる設計は、経験豊富な担当者だけに依存させるべきではありません。過去の改善内容を設計ルールとして蓄積し、次の製品でも再利用できる仕組みを整えることが重要です。

まず、原価が高くなった部品について、原因となった形状を記録します。深いポケット、小さな隅半径、複数方向の穴、固定しにくい外形、厳しい公差など、具体的な形状と製造上の問題を関連付けます。単に「加工が難しい」と記録するのではなく、どの工具や工程に影響したのかを残すことで、再発防止に役立ちます。

次に、設計確認の段階で使用する共通の観点を定めます。材料量、素材寸法、加工方向、工具接近性、固定面、肉厚、隅半径、穴の種類、組立空間、検査基準などを順番に確認すると、担当者による見落としを減らせます。

類似部品の3D CADデータを比較することも有効です。過去に安定して製造できた形状を基準とし、新しい部品に複雑な特徴が追加されていないかを確認します。共通部品や標準形状を再利用すれば、設計時間だけでなく、加工条件の検討や検査方法の準備も短縮できます。

製造後の実績を設計へ戻すことも欠かせません。想定より加工時間が長かった部分、工具摩耗が大きかった部分、組立で手直しが多かった部分を記録し、3D CADモデル上の形状と照合します。設計時の予測と実際の差を確認することで、次回の見積もり精度が高まります。

設計部門と製造部門が同じ3Dモデルを見ながら検討すると、平面図だけでは伝わりにくい奥行き、工具方向、干渉箇所を共有しやすくなります。変更候補をその場でモデルへ反映し、体積や組立状態を比較すれば、判断を早められます。

原価改善を継続するには、単に「安く作る」ことを目標にするのではなく、「機能を維持しながら製造を単純にする」という共通認識が必要です。単純な形状は加工しやすいだけでなく、検査、組立、保守、設計変更にも対応しやすい傾向があります。3D CADを形状作成の道具としてだけでなく、製造工程全体を検討する共通基盤として活用することが重要です。

まとめ

3D CADを活用した製造原価の低減では、完成品の外観や質量だけを見るのではなく、素材から完成までの工程を形状に結び付けて考える必要があります。不要な厚肉部を減らし、深すぎる穴やポケットを浅くし、小さな隅部や複雑な輪郭を整理することで、材料使用量や加工時間を抑えやすくなります。

さらに、加工方向をそろえて段取り回数を減らすこと、穴径や締結形状を標準化すること、機能に不要な高精度形状をなくすことも重要です。一体化と分割は部品点数だけで判断せず、加工、組立、検査、保守まで含めて比較します。組立時の位置決め、工具空間、誤組立防止、測定のしやすさまで形状へ反映すれば、加工後に発生する費用も抑えられます。

原価低減のための形状改善では、材料を減らした結果として変形しやすくなっていないか、部品を一体化した結果として加工が複雑になっていないかなど、変更による副作用を確認することが欠かせません。部品単体の費用だけでなく、製品全体の製造、組立、検査、保守を通じた原価で判断する必要があります。

3D CADモデルに製造部門の知見を反映し、変更前後の材料量、加工方向、工具接近性、部品点数、組立空間を比較することで、根拠を持って形状を選択できます。過去の加工実績や不具合を設計ルールとして蓄積すれば、次の製品開発でも同じ改善を再利用できます。

設計した形状と実際の現場状況を結び付けて確認したい場合は、製造設備、部品配置、設置場所などを三次元情報として記録する方法も有効です。現場で取得した位置情報や三次元データを設計情報と組み合わせることで、机上のモデルだけでは把握しにくい寸法、干渉、作業空間を確認しやすくなります。設計と現場の情報連携を進める手段として、LRTK Phoneの活用も検討できます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
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